ルイージの番外編 封印と宝石 3
水晶でできた透き通ったタイル。
漆黒の空間。
そして目の前の不気味な敵。
僕は尻もちをつきながら言った。
「こいつの攻撃、結構痛いよ。」
高さ三メートル以上はある巨大な顔。
顔だけ。
鋼鉄でできているであろうその顔からは
むき出しのコードが何本も飛び出していた。
ギョロっとした目は見る者を恐怖させる。
「なるほど、魔法攻撃完全反射か。
そして、反射した魔法には反射耐性が付き、二度と反射されない。
その性質を利用して相手の魔法を防ぎつつ、
自分にわざと魔法を反射させて相手に確実に当てる。」
「ウシャシャ!こいつは酷い!」
もっともだ。
セキリュウのややこしい説明はともかく、この顔、強い。
その場から動かない固定砲台みたいなものだ。
目標を一度発見したら絶え間なく魔法を詠唱し続ける。
キラー大砲よりずっと利口だ。
≪フレア≫
セキリュウの腹に膨大な熱が集中し、爆発を起こした。
思わず声をあげてうろたえる。
「・・・く。
こいつの魔法一発一発が≪フラーマ アラデンティス≫級か!」
「命中精度もトップクラスにゃ!」
・・・機械が魔法を唱えるのは異様だ。
シュールともいう。
顔の口から意味不明な機械音が絶えず流れている様子は、
あんまり好ましいものではない。
そう、三メートルもある顔から。
っていうかそもそも顔だけってどういうことだ?
いや、顔があるんだったら胴体も?
顔だけで三メートルあるんだったら、
もしこいつが八等身だったら・・・
二十四メートル?
頭だけで動けるから、もしかして胴体だけとかでも動けるのか?
ふと横を注視してみると、
遠くの方で巨大な腕だけが浮いて動いていた。
僕は身長二十四メートルの巨人が物理攻撃しながら、
それぞれのパーツから魔法が放たれる様子を想像した。
顔だけでよかった。
「ルイージ、立つにゃ!」
『スーパーキノコ』
「サンキュー、ルーニャ!」
僕も行かなければ。
どっかのロボットアニメみたいに合体したらかなわない。
≪地獄突き≫
鉄の体に少しずつだけど傷が付いていく。
そして僕は突き指する。
痛い。
「うしゃしゃ!
楽しいねぇ。
仲間と一緒に戦うのは・・・
≪ホーリー≫
一抱えもある光の柱がシロスケに直撃した。
「話ぐらい最後までさせ・・・ぐはぁ。」
セキリュウがその姿を見て
「大丈夫だな、ランペル。」
と声を投げる。
大丈夫・・・だな?
大丈夫なこと前提?
とりあえず、次の魔法までに少しでも打撃を与える。
≪サンダーハンド≫
稲妻と化した手の平を敵の目にかざす。
確かな手ごたえがある。
『ウルトラキノコドロップ』
ルーニャのアイテムによって僕らの傷は全快した。
セキリュウが咆哮する。
「一気にたたみかけるぞ!」
三人の攻撃を一斉に受けた顔は、
今までよりもさらに不気味な人相になって機能を停止した。
放送できないぞ、この顔。
目とか飛び出してるし、オイルダダ漏れだし。
いろんなところへこんでるし。
「にゃ~。疲れた~。」
「キノコ王国の一般民家はすごいんだな。」
「いや、セキリュウ、それは違う。」
シロスケが残骸を見ながら唸り声をあげていた。
「どうしたんだい?」
白お化けはみんなの方を見て言った。
「こいつ、この世界のものでもセキリュウのいた世界のものでもない。
全く別の未知の場所からの訪問者だ。
いや、僕らが訪問者かな?」
はてなマークを浮かべる僕たちに
シロスケは珍しくまじめな口調で話した。
「異次元に飛ばされた。
あの扉は異世界への入り口だったんだ。」
「なんだって~。」
なんとなくそんな予感はしていた。
あいつは見たこともない魔法を使ってきた。
何が起きてもおかしくはない。
「じゃあ、とりあえず今日の探索はこれぐらいにして、
帰るかにゃ。」
ルーニャが言ったとき白い化け物はわざとらしく言った。
「あ、そうそう、言い忘れた。
ぼくたち、カ・エ・レ・ナ・イ・ヨ。
ウシャシャシャシャ。」
今度の一言には皆、何も言わなかった。