異世界転船 ショートショート
異世界船の乗組員たちは疲弊していた。窓の奥に広がる漆黒の空間を眺めながら、船員がぼやく。
「遠い昔、トラックに轢かれて、中世ヨーロッパ風のファンタジー世界に転生する小説が流行ったそうで」
「当時は笑い話だったのだろうな……」
船長が言った瞬間、窓から光が差し込んだ。船内に緊張が走り、報告の嵐が始まる。
「西京高速道路上空1500メートルにワープしました」
「レーダーに反応あり。ナンバー読み上げます。け29-71、あ29-43……」
「よし今回は、き81-89にしよう。総員轢殺に備えよ!」
船は徐々に高度を落とし、高速道路を走るトラックの内一台に接近。タイミングを見計らい、トラックに突進する。異世界船が無残に轢かれたのに対し、トラックは何事もなかったかのように走り去った。
「痛ッ……職務とは言え毎回トラックに轢かれるのはつらいな」
転生を果たした船長たちは、異界の森でため息をついた。