インフルと予防接種について (短編小説?)
スピネル「明けましておめでとうございます!」
生物君「今年もよろしくお願いします!ってもう半月くらい経ってるけどね」
スピネル「それにしても寒くて乾燥してるよね。ハンドクリームがないとわたし、生きていけないっ!」
生物君「寒くて湿度が低い、そんなときに流行るのが」
スピネル「インフルエンザ」
生物君「そう、インフルエンザ。本名はヘモフィルス・インフルエンゼ。皆さんご存じの通り、一度かかると間接痛に加え38.0以上の高熱、などなど嫌な症状をたくさん引き起こす菌」
スピネル「ワクチンを打っていない人ははやく打たないと!」
生物君「効き始めるのは一~二週間後からだけどね」
スピネル「へっ?すぐに効かないの?」
生物君「そもそもワクチンは無毒化したインフルエンザウィルスを体にいれて、体にインフルに対する武器を作らせるっていうのが原理なんだ。ただ、体がインフルに対する武器を作るのに時間がかかる」
スピネル「武器?」
生物君「そう。体は病気の元(抗原)が体に入ってくると『抗体』っていう武器を作るんだ。最初に、威力は低いけど多くの抗原に効く抗体(IgM)を作って病気の進行を抑えて、その間にその菌に対して絶大な威力を持つ、いわゆる特殊兵器みたいなもの(IgG)を作るんだ」
スピネル「わざわざ専用の武器を作るの?一回一回?」
生物君「初めて侵入してきた病気の元(抗原)にはね。例の汎用の抗体(IgM)を組み換えることで数千万通りのIgGを作ることが出来る。(まあAIDSウィルスとか武器そのものが役にたたないウィルスもいるけど)」
スピネル「数千万通りの組合せの中からいちいち武器を作ってるから一週間もかかるのね……。それでも未知の的に対して発見から分析・対策まで一週間……あれ、逆にすごくない?」
生物君「うん。ぶっちゃけすごい。しかも一度作った抗体は記憶細胞っていう細胞に見本としてまるごと一セットとっておくんだ(インフルの場合は5ヶ月くらい保管してる)。だから二度目以降は見本の抗体を複製するだけでいいから、めちゃくちゃ作るのがはやくなる」
スピネル「どれくらい早くなるの?」
生物君「最初に抗原と出会ったときはIgMを作るまでに約一~二週間かかるっていったよね(ワクチンが効くまでのタイムラグの理由はこれ)。でも二度目以降は一日で量産出来る」
スピネル「はやっ!」
生物君「すごいだろ、人の体って」
スピネル「じゃあ、ワクチン打ったのにインフルにかかることがあるのはなぜ?」
生物君「インフルエンザにはたくさん種類があって、その上、体の表面が毎年微妙に変わるんだ。抗体はあくまでウィルスの表面の形を認識して反応するから、少しでも表面の形が変わると効果がない。だからワクチンは今年流行しそうなインフルの型を予想して打ち込むんだけど、予想が外れたらそもそも意味がない。感染するインフルエンザと違う種類のインフルワクチンを打ったって効果はないだ」
スピネル「うわぁ、ウィルスもワクチン対策をきっちりしてるんだ……」
生物君「あと、ワクチンを打ってもそもそも体がウィルスを見落として、抗体を作りそびれるっていう笑えない冗談が実際あるから……」
スピネル「えぇぇ……。なにその『テスト用紙の裏面があるのを見逃して問題解けませんでした』的な残念な現象……」
生物君「嫌なこと思い出させないでくれ……」
ーーー
スピネル「こんな感じでいいかな」
生物君「新年早々保健の授業で発表があるとは……」