ルイージの番外編 封印と宝石 5
「見えた!あれが最下層だ!」
セキリュウの声が聞こえる。
ただ、こちらには目的地を確認するほど余裕はない。
≪ブリザガ≫
ブルードラゴンの魔法がついにセキリュウの右翼に当たった。
翼が一瞬のうちに凍りついた。
≪ファイアージャンプパンチ≫すら無力化する強靭な肉体を凍らせるなんて・・・。
「セキリュウ!大丈夫にゃ?!」
とりあえず応急処置として≪ファイアーボール≫を連続で放ち、氷を溶かす。
「これぐらいなら大丈夫だ。
飛行に支障はな・・・。」
≪ホーリー≫
翼が凍りついた一瞬のすきを突き、魔法がセキリュウの真上、
つまり僕たちに降り注いだ。
「ウシャシャシャシャ!
ぼくを甘く見ないでくれよ。」
≪すきとおり≫
見る見るうちに僕らの体が透けていく。
テレサの技だ。
スケスケになることで敵の攻撃を防ぐ。
ただし、最大の弱点は継続時間の短さ。
慌てながらセキリュウが言った
「このまま逃げ切る!
みんな衝撃に備えろ!」
身をかがめて赤い鱗を手でつかむ。
シロスケとルーニャもそれに習う。
目的の最下層が僕たちの隣に見える。
セキリュウは全身の筋肉と魔力を酷使し、ほぼ直角にカーブして最下層に突入した。
上下にクリスタルタイルが広がっている。
白い柱がところどころに立っていた。
それらがものすごい勢いで前から後ろへと流れていく。
正面奥の小さな光を指差して僕は言った。
「あれがクリスタルか!」
僕は後ろの追手を気にした。
・・・!
「セキリュウ!左に回避!」
赤いドラゴンは反射的に僕の言葉に従った。
僕たちの右側をすさまじい本数のレーザーが飛んで行った。
≪透過レーザー≫
「上!右!下!左!」
レーザーが飛んでくるたびに僕はセキリュウに指示する。
どこぞのシューティングゲームをやっている気分だ。
もうすでに≪すきとおり≫は効果を成していない。
ちなみにそのレーザーの発信源は・・・。
機械生首野郎!
光線によってセキリュウの体が確実に傷つけられていく。
落とされるのも時間の問題だ。
それ以上に後ろから大量に迫ってくる顔の大群が怖すぎる。
しかも目からビームって・・・。
ホラーだよ。
これ一種のホラーだよ。
映画化したら売れるレベルだ。
B級映画だな。
いや、売れるB級っていうのもなんか変だな。
「あと100メートル、90、70・・・」
「なんかどんどん数が増えてきてるね。
記念撮影に写真に撮っておこう。」
「ランペル!そんなことしてる場合にゃ!」
「ルーニャ、この布お化けははもうあきらめた方がいいよ。」
「コラコラ!
それはどういう意味だい!」
くだらないやり取りをしている間に目の前にぴかぴか光る石があった。
思った以上に大きい。
僕の身長ほどはある。
セキリュウは前足を使いキャッチするつもりだ。
「よし!これでキノコタウンに!」
セキリュウがそういった瞬間
赤い竜の足がぴかぴか石に触れた瞬間
ランペルが写真を撮り終えた瞬間
一瞬にして地の底までブッ飛ばされた。
「というわけで、
すさまじい速度で紐なしバンジージャンプをしているセキリュウです。」
「ぼくが教えてあげよう。
バンジージャンプっていうのはね・・・」
「ランペル、そんなことしている場合か?」
「やった!初めてルイージに本名呼ばれた!」
「・・・。」
あの石が浮かんでいた場所はちょうど床が抜けてて・・・。
おそらくあの石の力だろう、僕らは下方向に強烈な力を受けて、
落ちるよりも早く下に落ちて言っているわけだ。
幸いなことに痛みとか、違和感とかは全くない。
「いやあ。
ここまで来て落とし穴とは。
まいったなぁ☆」
「シロスケ、どうしてそこまで陽気なの?」
「何事も楽しむのがぼくのポリシーでね。
って言っても君たちにはわからないだろうけど。」
「ランペル、貴様は我々を侮辱しているのか?」
「おお、怖い怖い。
ウシャシャシャシャシャシャ!」
とりあえず、機械の顔の大群よりはマシだ。