風上 起 合作小説
起
私の住んでいた町とよく似ていた。
灰色の建物の続く集合住宅。
ちょっとした「旅行」をしにこの町へ来た。
町を大した目的もなく右往左往していると公園があった。
特に特別でもない普通の公園。
少し、休むとしよう。
蝉の鳴く声を聞きながら、私は頭ににじんだ汗をハンカチで拭き取った。
そして、私は公園に踏み込んだ。
まあ、割とすぐに気付いた。
公園に入って正面の広場にいたからだ。
女の子が一人いた。
ただ立っているだけの少女が。
中学・・・いや、小学生か?
まあ、いい。
私は適当なベンチに座り、腰を休めた。
・・・どうも様子がおかしい。
少女は時々一人で笑ったり、悲しそうな顔をしたりした。
まるで目の前に誰かがいて、その誰かと話しているかのようだった。
女の子はそうやって一時間以上何もしないで突っ立っていた。
私はとうとう好奇心を抑えることができなくなった。
女に目がない、と友人にあきれられたことを思い出しながら
私は少女に声をかけた。
「お嬢さん、一人で何をしているんだい?
よかったら教えてくれると嬉しいんだけど・・・。」
少女は嬉々とした表情で私に答えた。
「一人じゃないよ?友達と話していたの♪」
軽やかな風が私の頬をなでた。
心地よい風だ。
ざわざわと揺れる木の音を聞きながら、私はこの少女の眼を見た。
実に純粋な瞳だ。
Next Magさん