フゥルの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

高二ストレンジ ワンナイト人狼

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⬆人物紹介

1



 生物君「暇だな」
 スピネル「暇ね」

 放課後、漢字の再テストがあるんだけど、残念なことに数学の再テストも同じ先生が担当していた。そのせいで漢字の再テストが後ろに30分ずれた、というのが今の状況だ。

 サンダー「いやぁ、中途半端に時間が空いたな」
 白部ミキヨ「お、そういえばいい暇潰しあるよ」

 白部さんはおもむろにカードを取り出すと、机の上に並べる。

 スピネル「なにそれ?」
 サンダー「人間の村にいる人に化けた狼を話し合いで見つけ出して、処刑するアレか」
 生物くん「ちょっとサンダー何をいっているかわからないんだけど」
 白部ミキヨ「ほい。今回は人数が少ないから、本来の人狼のワンナイト(一夜)バージョンを殺るよ」


〈プレイヤーはそれぞれが村人と村人に化けた人狼となり、自分自身の正体がばれないようにしながら他のプレイヤーと交渉して相手の正体を探る。話し合いの後、全プレイヤーの投票により決まった人狼容疑者1名(同数の場合は二名)の処刑が行われる。一人でも人狼を処刑することができれば村人チームの勝ち、一人も処刑されなければ人狼チームの勝ち〉


 なんだ、その殺伐とした白部さんが好きそうなゲームは。

 白部ミキヨ「んじゃ、知らない人がいるから説明するよ。ここに六枚のカードがあるわ。『村人』二枚、『人狼』二枚、『占い師』が一枚、そして最後に『怪盗』が一枚。とりあえず、裏返しのままカードをとって、他の人に見られないようにこっそりと見て。それが自分の役職ね」

 白部さんはそう言うと余ったカードを見ずに机の真ん中に置いた。

 白部ミキヨ「みんな目を閉じて。まず最初に占い師のターン。占い師の人は目を開けて。占い師の人は誰かのカード一枚、もしくは余った二枚のカードを見ることができるの。見たらもとに戻して目を閉じてねっ」
 生物くん「余ったカードも見ていいのか?」
 白部ミキヨ「お前が『占い師』だったらね。ルール破ったらその時点で処刑だからヨロシク!」
 サンダー「次は人狼のターンか。人狼のカードを持っているひとは目を開けて仲間がいるか確認するんだ。ただし、声を出すとばれるぞ」
 白部ミキヨ「最後に怪盗のターン。自分のカードと他の人のカードを取り替える権利があるよ。因みに交換後の役職が人狼だったら勝利条件も入れ替わるから注意してね♪」
 サンダー「んじゃ、目を開けて。制限時間以内に話し合って人狼を見つけるんだ。時間が過ぎたら誰を処刑するか投票になる。ここで一人でも人狼を処刑できれば村人の勝ち。逆にそれ以外の役職を殺した場合、人狼の勝ちだぞ」
 白部ミキヨ「これが『ワンナイト人狼』っていうゲームだよっ」
 スピネル「あれ、これゲームとして成り立ってなくない?占い師の人が占いをしたとしても村人か人狼かわかるのは占い師含めて二人だけだよね?そこからはカン?」


2


 白部ミキヨ「じゃあ、とりあえず占い師に聞いてみなきゃはじまらないよねっ。因みにわたしが占い師なんだけど」

 じゃあ聞く意味ないじゃないか。

 白部ミキヨ「スゥちゃん、あんた人狼でしょ?」
 スピネルはひぇっ、と声をあげた。おいおい、そんなすがる目をしたって僕には何もできないぞ。っていうか、これで怪盗がいない限りは僕含め他の人の役職はわからない。これって詰みじゃあ━━
 サンダー「いいや、俺こそが本物の占い師だ。俺は白部さんのカードを見たんだけど、人狼だった」


 あれ!占い師のカードは一枚だけのはず。っていうことは……。

 生物くん「まさかこのゲーム!嘘もハッタリも!」
 白部ミキヨ「そう、オールオーケー!ハハハッ!」
 スピネル「……!?」
 サンダー「そういうわけ。マジ白部さん向きのゲームだよなぁ。まあ、ここにいる人間はみんな隠し事上手たから……な!」

 じょっ、状況を整理しないと!
 まず、白部さんスピネルのことを人狼と言った。そしてそれに対してサンダーは白部さんこそ人狼だと言った。
 ここから考えられる結末は二つ。
 ひとつはスピネルが人狼だったとき。白部さんは本当に占い師で、反対に白部さんに濡れ衣を着せたサンダーも人狼で確定。人狼のカードは二枚だから、この二人のうちどちらかを処刑すればいい。
 もうひとつはサンダーが正しいとき。白部さんの言葉は嘘になるから、スピネルは村人で確定。ただ、この場合人狼は一人しかわからないので、僕の潔白は証明されない。もっとも、一人人狼を処刑すれば村人の勝ちだ。
 この状況で僕が発言すべき言葉は……。


 生物くん「サンダーは正しい。白部さんが嘘をついている。僕は怪盗だった。サンダーとカードを交換したけれど、そのカードは占い師だった」
 サンダー「おお!さすが!ナイス生物くん」
 スピネル「じゃあ、これでわたしの潔白が照明されたよね?」

 よく考えたら、サンダーが職種を言う前に言っていたほうがより信じてもらえる。しゃべるタイミングも重要なのか。

 白部ミキヨ「でも、もし、生物くんが嘘をついているとしたら?仮にアタシが人狼だったとして、わたしと役職を交換して生物くんが人狼になっているかもしれないよ?」
 スピネル「もしそうだとしたら、元人狼を処刑するとどうなるの?」
 サンダー「元人狼は怪盗扱いだから、処刑すれば村人が負ける」
さて、どう出る?

3


 白部ミキヨ「こんなときは合い釣り!」
 生物くん「どういうこと?」
 白部ミキヨ「投票で二表ずつ二名に別れたとき、二人とも処刑するの。二人のうちどちらかが人狼なら村人の勝ち」
 生物くん「と、いうと?」
 白部ミキヨ「まず、サンダーとスゥちゃんがアタシに票を入れる。んで、生物くんとアタシがサンダーに投票すればオッケー」

 なるほど。
 サンダーとスピネルは人狼であった場合もペアの可能性が高い。二人を分けると票を操作されて敗北が確定する。
 つまり、票の操作をされずに二人を処刑するためにはこのペアであることが最低条件だ。もし二人が人狼でに票を分散されたとしても、サンダーは確実にしとめられる。
 そして、僕かサンダーのどちらかが人狼であれば村人の勝ちだ。

 白部ミキヨ「さっ、五分たったから投票に移るよ。みんな公平を期すために、同時に投票したい人を指差すよ」


 せぇの!!


 どん!


サンダー 二票 (白部ミキヨ、スピネル)
僕 一票(サンダー)
白部ミキヨ 一票(生物くん)

……!!

 生物くん「なっ、何が起きているんだ!?ちょっ、スピネル」
 白部さん「うくく、アタシらは最初からこのつもりだよ?因みに生物くんは何でアタシにいれたかな?」
 僕「このまま素直にサンダーにいれたらヤバそうだったからな……」
 スピネル「そう。わたしたちは人狼……。最初にミキヨから人狼を告げられた時点で作戦を理解したの。わたしを白部さんが疑えば、必然的にどちらかが人狼ってことになるよね。それで合い釣り投票の区分けでわたしと白部さんをバラバラにすれば……」
 白部ミキヨ「あとは流れに沿って、本物の占い師に投票するだけでおしまい」
 サンダー「あれ、これでもしもスピネルが人狼だって俺が言ってたら?」
 生物くん「占い師のフリをして、人狼をあぶり出そうとしていた、とでも言えばその場は乗りきれるはずだ。決戦投票になったとしても、さっきと同じように僕と白部さん、スピネルとサンダーで分ければ……」
 サンダー「同じ結果になると。……ってこれ!ペアが逆だろうが成り立つ!どうやっても俺ら負けんじゃねぇか!!」
 生物くん「素直に従うサンダーもどうかと……ってスピネル、初めてなんだろ?このゲームするの」
 スピネル「ゲームが始まったら、『嘘ついてもいい』んだよね。ミキヨ?」
 白部ミキヨ「もちろん!」
サンダー「何てやつらだ」


……危なかった。サンダーが処刑されると聞いたときはどうしようかと思った。まさかスピネルがサンターを指差すとは。僕の読みは大外れだった。さすがはスピネル。
 まあ、何はともあれ人狼の勝ちだ。
 僕はちらりと自分のカードを見た。自然と頬がつり上がるのを感じる。

 「スピネル、僕の勝ちだ!!」



結果
 白部ミキヨ:人狼
 スピネル:怪盗
 サンダー:占い師
 僕(生物くん):人狼


 勝者:人狼の生物くんと白部さん

 
 スピネルと僕はカードを交換ていたため、本来はスピネルが人狼