フゥルの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

鎧竜兵

 私の目の前には広大な晴天が広がり、眼下には雲、背後には天にも届きそうな巨大な白色の城がどんと構えていた。離着陸場には同じ部隊の者が4人待機している。そのほかに整備兵が数人、鎧をはじめとする魔具の調整をしていた。
 久々の出撃だった。いつもながらすべてを甲冑で覆われるというのはあまり心地よいものではない。我々には人間とは違い鎧なんぞ纏わなくとも鋼鉄のごとく磨かれた鱗がある。しかし、人間の作り出す兵器にはそれをたやすく打ち抜くだけの力が備わっていた。魔法も使っていないのに、なぜ人間はあんな強大なエネルギーを制御できるのか、いまだ解明されていない。逆に人間も我々の魔法という概念をちっとも理解していない。もうかれこれ数百年戦争と休戦が繰り返されているというのに。
 準備が整い整備兵から合図がなされる。我々第七小隊は私を中心とした十の字の陣を張ると、翼を広げ大空に飛び出した。

 空に飛びたった直後、いきなり陣形前方からテレパシーが聞こえてきた。
 「そういえば、こういうときに『帰ったら結婚するんだ』とかいうと死ぬらしいって本に出てきましたよ」
 「じゃあ、今言ったお前は派手な花火となるわけだ。咲かせるのであれば盛大に咲かせろ」
 「ハハンッ。隊長であるオレに向かってひどいっすよ。副隊長」
 何でこいつが隊長なのかいまだにわからない。雲の上の空はどこまでも快晴で、まるで脳天気なこいつの頭の中のようだった。こいつの思考回路のように任務も簡単に進めばいいのだが。
 今回の目的は後続部隊の敵本土上陸のために、ハレー海岸沿いに駐留する人間の軍隊を叩き潰すことだ。これまでのような祖国防衛の時とは違い、敵地に直接攻撃を仕掛けることになる。敵の厳しい反撃が待っているのは目に見えていた。あと少ししたら、我々第七小隊はその危険な敵地にろくな前情報もなく突っ込むことになる。
 「目的地に接近しました。直ちに降下してください」
 凛々しい女性の声が陣形後方から聞こえてきた。一応まともなのはこいつだけか。
 隊長が復唱し、その次におのおのが了解の声を上げる。我々はついに戦地へと突入した。
 
 防衛ではなく攻撃のために出撃するのはいささか不本意ではあるが、先に仕掛けてきたのが人間である以上、竜族側が報復に移るのも当然の流れだ。我々は正しい。竜族の繁栄にこの戦いは必須なのだ。避けることはできない。
 そう、自分に言い聞かせた。

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挿絵:副隊長

製作時間:三時間

苦労したところ:陰影