風上、夜 起 合作小説
起
風雨が激しく窓を打ち付けガッタガッタうるさかった。
それでもわたしはCDレンタルの期限ということで外に一歩踏み出した。
天気ごときで延滞料200円は惜しい。
傘が外に出て数十秒でお釈迦になった。
風速10メーターを優に超えている。
普段なら家からほんの十数分でたどりつけるレンタルショップが酷く遠くに感じた。
身を前か屈みにして、手を眼前で交差して少しでも風邪から目を守る。
こうでもしないと進むことすらままならない。
全身びしょぬれだ。
黒い長髪が肌にくっついてうざったい。
後ろにまとめてくればよかった。
どうしてわたしがこんな目に・・・。
何もかもが嫌になってきたころだった。
腕の間から見える非常にごくわずかな視界に人影が映った。
この吹き飛ばされんばかりの強風の中、傘を持ち、悠々と歩いている。
シルエットからして少女。
それも中学生かはたまた小学生か迷うくらいの身長。
あり得ない。
この雨風の中、ちらほら見かける人の手にはみんな折れた傘を握りながら、どっかの囚人みたいに重い足取りで歩いていた。
なのにこの子の傘は折れず、背筋も平生通り。
まるでそこだけ雨が降っていないようだった。
ここまで来ると傘がアクセサリーかなんかに見えてくる。
わたしはどうにか彼女の傍まで寄った。
「ねぇ、何であなたはこの嵐の中、普通にしてられるの?」
Next Magさん