フゥルの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

とあるフードコートにて

とあるフードコート。

 

 

 

セキリュウ「よう、ムイ。」

 

ムイ「セキリュウ、久しぶりだな。今日はどっちから話す?」

 

セキリュウ「オレからだ。」

 

ムイ「おう、何か面白い話題でも?」

 

セキリュウ「実はオレ、ワイバーンに生まれたかった。三メートルくらいの。」

 

ムイ「なんでだ?お前、五メートルの巨竜だろ?何も悪いことは・・・。」

 

セキリュウ「大ありだ。」

 

ムイ「何?」

 

セキリュウ「第一に背が高すぎる。この間、友達のすみかに行ったら体がでかすぎて入れなかった。仕方なく人間体で入ったよ。」

 

ムイ「なるほど・・・。でも、女受けはいいだろう。背が高い方が。」

 

セキリュウ「五メートルはさすがに人に引かれる。合コンとかでもよく身長を聴かれるんだが、『4メーター90センチです』って答えてる。一度、ドン引きされたことがあってな・・・。ムイ、お前にはわかるまい。あの凍りついた雰囲気を。魔法を使ってもあそこまで冷え切ることはないぞ。」

 

ムイ「そうか・・・。」

 

セキリュウ「あと、燃費が悪い。竜用の食いものでも毎日五食食べなきゃやってられん。それだけになかなか竜に変身できんのだ・・・食費的な意味で。人間で過ごさなきゃいけない分、移動が過酷でな・・・。魔力を常に消費して空飛んで移動しなきゃならん。急ぐ時しか変身しない。本当は竜の姿で過ごしたいんだがな。」

 

ムイ「セキリュウ・・・。」

 

セキリュウ「それから、体が大きいから道が狭いと不便だ。後ろから怒鳴られたことがある。『じゃまだ!どけ!』ってな。」

 

ムイ「セキリュウ、それは相手のやつあたり。・・・でも、いいこともあるだろ。魔力も高いだろ、体がでかい方が。」

 

セキリュウ「そんなに魔法使う機会ないぞ、ムイ。そもそも、移動に全部魔力持っていかれてるから活かせることはない。」

 

ムイ「働くときは?」

 

セキリュウ「でかい分、融通が利かないっておとされたこともある。」

 

ムイ「酷い話だな。」

 

セキリュウ「でも、まあ、本当のことだから反論できなかった。」

 

ムイ「じゃあ、逆にワイバーンの利点は?」

 

セキリュウ「燃費がいい。それに空飛ぶ速度が速い。女モテがいい。・・・オレは体デカイから速度が出るまで時間がかかる。まあ、最高速はオレの方が上だが。」

 

ムイ「十分じゃないか。体がでかくて最高速も早いならそれを活かせることも・・・。」

 

セキリュウ「運送業か。」

 

ムイ「そういうこと。」

 

セキリュウ「結構きついよなあ。」

 

ムイ「仕方がないだろう。オレを見てみろ。単なるひきこもり・・・」

 

セキリュウ「特技を生かして世界進出してる。」

 

ムイ「そんな大層なことじゃ・・・ってお前の話をしてるんだよ。」

 

セキリュウ「そうだった。まあ、とりあえず考えておくか。運送業。」

 

 

 

※ワームとは

 

しばしば脚を持たない、細長い蛇の様なドラゴンの一種を指すが、元々は大蛇を表す言葉である。基本的にはドラゴンのような顔を持ち、地べたを這う蛇のようなものが多いが、例外的にヘビに鳥の羽が着いたような姿をしていることもある。牙が長く、およそ全長の三分の二ぐらいある。狂暴で人間に有害であり、口から猛毒や炎を吐き、長い体で巻き付いて締め付ける。

 

 

 

ムイ「そういえば、おい、これ見てみろ。携帯の待ち受け。」

 

セキリュウ「おお!これは!」

 

ムイ「いやぁ、偶然『シロ嬢』にあったんだよ。人だかりを掻きわけてがんばって手に入れたファン垂涎の逸品だ!」

 

セキリュウ「すごいな。うわぁ~やっぱり鱗きれいだ。よく手入れされてる。」

 

ムイ「足もいいよな。しなやかだし。ワーム型の特徴を最大限に生かしてる。それにしても、触りたい。」

 

セキリュウ「この変態め。まあ、人のことは言えないが。顔、拡大できるか?」

 

ムイ「モチ。ほら見ろ。魔法で解像度アップしたオレの改造カメラの本領発揮だ!」

 

セキリュウ「おおお!!きれいに生えそろった歯までくっきり!やっぱ美人だ!このすらっとした鼻先、いい味出してる!」

 

ムイ「尻尾とかもとっておいたぞ!」

 

セキリュウ「おぉぉぉ!!!尻尾マジやべぇ!光の反射で光ってやがる!神々しいったらありゃしない!」

 

ムイ「とうとうセキリュウ、口調が崩壊したな。」

 

セキリュウ「いや、誰だってこの写真を見れば興奮するだろ!この腹から尻尾にかけての美曲線とか、このかわいいかぎづめとか!」

 

ムイ「くくくっ。ほしいか?この画像。」

 

セキリュウ「ムイ、いくらだ?」

 

ムイ「今月号の『THE WORM』一冊貸してくれるなら差し上げよう。」

 

セキリュウ「乗った。これ、担保な。」

 

ムイ「っておい、これ、『シロ嬢』の限定ストラップ・・・。ほしい!くれ!」

 

セキリュウ「ダメだ。何か対価となるもの持ってこい。」

 

ムイ「くっ・・・。だがこちらにはこの『シロ嬢』カード、三枚セットがある。ほしいか?あげない。」

 

セキリュウ「な・・・に・・・!だがこちらは『シロ嬢』主演の映画『枕元にワーム』の前売り券特典のぬいぐるみが・・・。」

 

ムイ「馬鹿なぁー!いったいどこで手に入れた!もう絶版のはず・・・。」

 

 

 

お店の人「お客様、もう少しお声を小さくお願いします。」

 

 

 

ハッとした時には全てがいろんな意味で終わった直後だった。