ルイージの小説 45 ルート2 第八章 選択の宝石
何も感じない。
痛くもかゆくも熱くも寒くもない。
何も聞こえない。
何も見えない。
わたしは死んだの?
「スピネル、聞こえる!」
ああ、こんなときに
キノピロの声がする。
幻聴かなぁ?
「幻聴でも幻想でも妄想でもないよ!
今、僕がスピネルに話しかけているんだ!」
どういうこと?
「『セキリュウの牙』。
セキリュウが受信して、僕が『牙』を使って声を発信しているんだ。」
つまり二つの牙で送受信をしているってこと?
「そのとおり。
さすがに心の中からの通信はノイズが多くて、
セキリュウに手伝ってもらわないと通信できなかったんだ。
ところでスピネル、今、どうなってるの?
たった今、繋がったから状況がわからないんだけど・・・。」
ディメーンにやられて死かけてる。
「にゃっにゃにゃ~!
大変にゃ!
すぐに治療を!」
ルーニャの声。
「どうやってするんだ。
スピネルは今、ルイージの精神世界の中だぞ!」
セキリュウの声。
結構、みんな集まっているみたいね。
「娘の危機に助けに来ない母親がどこにいるの?」
おかあさんまで。
もう、訳がわからない。
「ウシャシャ、僕とセキリュウがみんなを集めたのさ。
僕についての説明は省くよ。
ところで、ルイージは一緒じゃないのかい?」
離れ離れ。
「すぐ隣にいるのに?」
エッ?
わたしは目を開けた。
「スピネル、おはよう。」
そこには今一番会いたかった人がいた。
緑のオーバーオールがここまでかっこいいと思ったのは初めてね。
屈んでわたしの顔を見つめる彼。
わたしの親友。
「スピネル、キミの瞳、綺麗だね。」
「ひゃ!」
魔力切れで黒いリスの姿から変身が解け、
さらに髪の毛にかけた魔法が打ち消されていた。
見られた!
はっ恥ずかしい!
前、自分から見せようと思ったこともあったけど、
それとこれとは訳が違う。
涙が出てきた。
「あっ、ごっごめん!」
「次はないって言ったよね!」
髪を下ろしてからルイージを力の限り殴った。
その衝撃で哀れな緑は後ろに倒れる。
わたしはあふれる思いをしりもちをついたルイージにぶつけた。
「どこほっつき歩いてたのよ!!
わたし、さびしくて死にそうだった!
希望がわたしの前から消えた!
この気持ち、わかる!!」
顔を抑えながらルイージが言った。
「とりあえず、ディメーンを倒してからだ!
・・・。
あ、そうだった。
「ムッフッフッフ!
今のやり取りでさらに『コントン』の力が強まったよ。
感謝するよ♪」
忘れ去られた道化師は
何も気にしていないどころかさらに上機嫌になっていた。
緑の人気者はその姿を見て鬼の目を向けた。
「お前を見ていると無性に腹が立つ!
今すぐ、その口を黙らせてやる!
みんなの手を借りなくてもお前くらい倒してやる!」
ルイージ・・・。
「ルイージ、我を忘れないで。
憎しみで心を閉ざしたらみんなの声が届かなくなるから。」
彼は、はっとわたしを見た。
「みんなの・・・声?
・・・本当だ、聞こえる!」
合流できなかった理由がなんとなくわかった。
届かなかったんだ。
わたしの想いが。
「『闇』にとらわれたら奴の思う壺。
今まで合流できなかったのはあなたがわたしを求めていなかったから。
一人で戦おうとしたから。」
ルイージはうつむいた。
そしていきなりわたしを抱き抱えて跳んだ。
その場所に三つの星型弾が炸裂する。
「ッチ。外したか。余計なことを。」
わたしたちは着地しそれぞれ身構える。
ディメーン、とことん間が悪い。
気絶して休めたお陰で魔力はかなり回復した。
わたしは黒いリスに再び変身し≪フラーマ≫を放ち、
彼は≪ファイアーボール≫で三人のディメーンをけん制する。
が、わたしたちの攻撃はコントンの守護によりはじかれた。
道化師は分身二人と同化、一人に戻った。
「何したってムダムダ!
さあ、サイコーのショーを始めよう!」
ルイージの小説
To Be Continued