ルイージの小説 プロトタイプ
ある朝、僕はいつものように家から一歩踏み出すと、目の前に一匹の黒いリスのような動物が横たわっていた。
だが、リスではない。体が10歳前後の子供くらいあったからだ。尾も含めるとその倍近くはある。そして額には、紅く輝くルビーのような宝石が埋め込まれていた。
あどけないその寝顔と愛くるしさに気おされて、震える手でその動物を抱え上げ、家に引き返した。
ウサギのようにふかふかな毛だった。
その動物を自分のベッドの上にそっと乗せてあげた。
数時間たってその動物が目を覚ました。すぐに体を起こし辺りを見回す。それもすごい勢いで。明らかに怯えている。
そして、僕の姿を認識するなり震えだした。
どうしようもなくなったときに見せる心からの震え。
そして今にも消えそうな声で僕にこういったのだ。
「ここはどこ?」
声からして少女だった。年端もいかない、か弱い少女。あくまで予測だが。
僕は出来る限りやさしく答えた。
「ここは僕の家だよ。君が外で倒れていたから家につれて帰ったんだ。」
彼女は
「そう・・・」
と、つぶやくように答えた。その様子から彼女が疲れきっていることは明白だった。
そこで僕は
「無理をしないで。ゆっくり体を休めるんだ。はい、スープだよ。」
と、語りかけながら、ベッドの隣の机にスープの入ったカップを置いた。
彼女はカップを注意深く見回し、小声で何かをつぶやいたり、額にある宝石を光らせたりした。
しばらくしてそのスープが安全であることを確認しきったのか、恐る恐るスープの液面を舐めた。
その直後、彼女は目を見開いた。そしてスープを一気飲みしたのだった。
そして彼女は言った。
目に涙を浮かべながら。
「ありがとう」と。
僕には彼女がどんな境遇なのかは分からない。想像すら出来ない。
ただ、ひとついえるのは、彼女は他人を信用できず、ご飯すらまともに食べられない、悲惨な状況におかれていたのだ。
僕は決死の覚悟で彼女に切り出した。
「そういえば、自己紹介をしていなかったね。僕の名前はルイージ。君の名前は?」
「!!あなたが・・・ルイージなの!本当に・・・!」
彼女は顔を輝かせた。相変わらず声は小さい。これは元からのようだ。
「ああ、本当だよ。」
再び額の宝石が輝く。
「本当に、本当にルイージなんだ・・・。セキリュウには会った・・・?」
ドラゴン!
「ああ、会ったよ。とても強かった。」
彼女が答える。
「セキリュウは私のお友達・・・。」
体格差、約4メートルの友達?まあ、クッパがいるから驚きはしなかった。僕は尋ねた。
「ところで、名前を教えてくれないかな。」
彼女は答えた。
「私、スピネル。カーバンクルとドラゴンのハーフ。」
「女の子?それとも男の子?」
スピネルは答えた。
「私、女の子。」
そして僕に思いがけない疑問を問いかけてきた。
「・・・ルイージは・・・人間なのに私にひどい事、しないの?」
何かが、心に刺さった。
「・・・安心して。僕は君に手を出さないよ。」
スピネルは再び辺りを見回す。
何かを確認するように。
そして言ったのだった。
「本当に異世界なんだ・・・。」
よほど怖かったのだろう。
よほど緊張していたのだろう。
スピネルは倒れるように寝てしまった。
これが僕とスピネルの最初の出会いだった。
ルイージの小説
To Be Continued