オレンズネロ レビュー
とりあえず、ここに微妙な女性のイラストがある。
美人かと言われればそうでもなく、不細工と言えば言い過ぎの女の人。特筆すべき点も特になく、写真を模写にしたにしても、もう少しやりようがありそうな顔である。
でも、もう一度よく見てほしい。
全長なんと10㎝!!
顔の部分だけに限るなら約6㎝!!
めっちゃくちゃ細かいのだ。0.5㎜のシャープペンではこうもいかない。0.3㎜のシャープでも難しいかもしれない。そう、これは0.2㎜のシャープペンを使っている。
そして何よりこの絵……
ワンノックで描いたのである。芯を最初のノックで出しただけで全部描けた。もちろん、途中でシャー芯が折れることもなかった。
授業中シャーペンをカチカチやる音が教員の声に混じって聞こえていた。時々バキリ、と乾いた音が教室にこだまする。
しかし、このシャーペンにはそれがない。
芯の細さ0.2㎜。それでいて折れず、ワンノックでシャー芯一本を使いきれる。
それがオレンズネロ。ノックのいらないただ一つの0.2㎜シャープペンである。
自作じゃない自創作グッズ
先日、坂津さんに秘密裏に頼んでおいたグッズが届きました。それがこちら!!
PFCS特性マウスパッド&缶バッジッ! 創作グッズ。まさかこんな日が来るとは……。缶バッジは主人公格であるルビネルと解剖鬼。めっちゃくちゃ嬉しいです!
坂津さんに頼んだものなのですが、いやぁ……実際に手に取ると驚きです。自分の絵がそのままグッズになるってこういう感覚なのか……。
元々、自創作をグッズ化するという発想自体なかったので、こういう機会に恵まれて本当によかったと思います。貴重な経験と最高クラスのプレゼントです。
いやぁ! 使うのもったいないなぁ……うふふ♪
セレア=エアリスはコメディしたい 短編小説
タニカワ教授はテストを採点し終わり勢いよく延びをした。あまりにのけぞり過ぎて、椅子がグラリと傾き床に頭が!
「痛っ!」
地面から立ち上がろうと頭を持ち上げた時、研究室の扉の上にある窓から銀色の液体が染み出てきた。液体は床に滴ると水溜まりを作った。さらに水溜まりが重力に逆らい不自然に盛り上がり、やがて人らしき姿になる。白いワンピースが生成され、鼻や口などの細部が出来上がると、肌色に着色された。
奇妙すぎる教室の入り方をした少女は腹を抱えてケラケラと私の姿を笑っていた。銀色のショートカットをわさわさと振るう姿は乙女の恥じらいとかそういうのが全く見えない。
「アッハハ! すっすまん! タニカワ教授 わっ、笑いが止まらんのじゃ」
「セレア、笑うのはいいけど、窓から研究室に滴り落ちてくるのは止めてくれないか。心臓に悪い」
先程まで銀色の液体だった少女は、ふぅと笑い終えるとタニカワ教授に手を差しのべた。タニカワ教授の手が、暖かくやわこいセレアの手に包まれる。先程まで液体だったとは思えないほどの温もりである。
「よっと! すまんのぉ。あまりにも面白すぎてな。……て、あれじゃ、今日は相談があってきたのじゃ」
「どうぞ。君がここに来るのは決まってそういうときだからな。まさかテスト採点中に堂々と入ってこられるとは思わなかったが」
タニカワ教授は的確な動作でテストの答案をセレアの目につかない場所に置くと、部屋の中央にある長机の椅子に腰かける。タニカワ教授にとって生徒の悩みを聞くのは日常茶飯事のことだ。特にセレアは他愛もない質問を定期的にしてくる生徒のうちの一人だ。
そんなセレアもタニカワ教授の横の椅子にストンと座った。
「わらわはのぉ。個性が欲しくてのぉ」
「個性?」
「ああ。ルビネルであれば『スケベ』。ショコラなら『度の抜けたおっちょこちょい』。誰もが自らネタを生成し、物語を盛り上げ、魅力的に振る舞うことが出来るだけのキャラパワーを持っておる。じゃが、わらわは『液体金属』『のじゃロリ』といった表面的な属性しか持っておらん」
タニカワ教授は『液体金属で作られた肉体にのじゃのじゃロリロリしている彼女は寧ろ個性の塊なんじゃないのか』と突っ込みかけたが、なんとか言葉を飲み込んだ。あと、キャラパワーという意味もよくわからなかったけれども、ここで突っ込むのも野暮のような気がした。
「人気のあるキャラクターは一貫した個性を持っておる。特にコメディ漫画だとそれが顕著じゃ。……所でお主、家でなに押しておる?」
「学校で話題に困らないために話題の本や雑誌を速読していたりするな。あとは論文のための研究とか……」
うむうむ、とセレアは頭を振った。三回目に振った時に思いっきり机に頭をぶつけた。タニカワ教授は「大丈夫?」 と声をかけたがセレアは痛くないフリをして話続けた。
「そうじゃろう。タニカワ教授は仙人教師キャラで定着しておる。会話の種には事欠かないし、生徒がらみであれば自ら事件に首を突っ込み解決するだけの行動力もある」
それは一理あるかもしれない。
「これは凄く重要なことなのじゃぞ?自ら事件に首を突っ込む、あるいは作ることが出来る者は連載において心強いキャラになる。また、一貫したキャラは読者に覚えられやすいしインパクトもでかい」
「連載?」
「あ……いや、こっちの話じゃ。気にするな」
コホンと咳払いするとセレアは続けた。
「わらわはどちらかというと絶○先生とか、○○れコックリさんとか、鬼灯○冷徹とか、ニ○チェ先生とかそういうコメディやギャグ漫画のような展開が好きなのじゃ。なのにわらわに振られる話題やお願い事はいつもターミネー○ーばりの深刻な依頼で……」
「そういうネタは腐るのが早いから避けた方が…」
「銀○に謝れ。あれはネタを常にアップデートすることでな……っ! バイト先からの電話が」
セレアは黙って数回頷いた後、渋い顔をした。
「ちっ! 三分で終わらせるのじゃ! タニカワ教授ちょっと待っててな!」
そう言うとセレアは椅子から降りて、窓の縁に足をかけた。背中からランドセルが浮き出てきた上、そこからバーナーが吹いた。タニカワ教授が状況を理解する前にセレアは勢いよく夕空に消えていった。腕がナイフ状に変形していたのは多分気のせいではないだろう。
「もう少しスカートは長くしたほうがいいと思うぞ?」
タニカワ教授の言葉は夕焼けに溶けていった。
これが無個性だったら世の中どうなるんだ……と、途方にくれる教授の背中に暖かい陽の光が降り注ぐ。嵐のような日常のヒトコマである。
十分後。
「ただいまなのじゃー♪」
「とりあえずそのワンピースについたケチャップを洗って来なさい」