ルイージの番外編 封印と宝石 7
僕の目の前に水晶の塊が浮いている。
その下には限りない闇の奔流が、その上には誰もが恐怖する闇の魔人の姿があった。
暗黒色の肉体。
赤と黄色が混ざりあったような混沌とした色の翼と角。
瞳だけが白く光を放ち、
全身にあふれるばかりの『力』が稲妻のごとく瞬いていた。
空気がびりびりしている。
今にもはちきれそうな緊張感。
鳥肌が立ち、足が震える。
額には汗がにじみ、喉が渇く。
なんだ!こいつは!
隣の仲間の様子を見る。
猫耳娘は普段の愛らしい顔を捨て、
ランペルはそれでも微笑を崩さず、
赤い竜はぎらぎらとした目を輝かせていた。
『我は至高の力を源とした者なり。
我を超える者、この世におらず。
この世の創造から終末まで時を超え、
最強の二の字を受け継ぐ者なり。
我が力、汝らに知らしめよう!
いでよ!
森羅万象を司る力よ!』
風、水、火、土。
四つの事象を体現したクリスタルが魔人の前に現れた。
美しく流動的な光を放つ水晶は、
まるで大自然の力を体現したかのような圧倒的存在感を放つ。
折れそうな心を必死に鼓舞し、僕は叫んだ。
「行くぞ!!」
セキリュウが魔法を詠唱。
火炎の息
≪フラーマ アラデンティス≫
しかし、その炎は全て火のクリスタルによって吸収されてしまった。
四つの力の前にはほとんどの力が無力化されてしまう。
僕は拳を握りしめ、土のクリスタルへと跳んだ。
距離ゼロ!
≪ファイアージャンプパンチ≫
しかし、技が決まったと同時に自分の拳に強い衝撃を受けた。
固い!
大地の化身である地のクリスタルには物理攻撃は無力。
大地は全てを受け止める。
ランペルは水のクリスタルに物理攻撃を仕掛ける。
≪サンダーハンド≫
僕の技を模した白お化けの攻撃は見事に水のクリスタルにヒットした。
「どうやら各クリスタルに得意不得意があるらしいね。」
ルーニャのアイテム『キラキラ落とし』によって敵全体に星が降り注ぐ。
打撃耐性が異常な土のクリスタル以外はぐらぐらとその身を揺らした。
効いている!
勝機がないわけじゃない!
ただ、相手はまだ一回も行動をしていない。
それが気がかりだ。
魔人は動かず、クリスタルもやられるがままだ。
『その程度か・・・
旅人よ。』
セキリュウがわずかな空気の乱れを感じ取った。
「一度引け!」
指示を待つことなく全員飛び退く。
クリスタルが一瞬輝いた。
僕の見た光景はすさまじいものだった。
≪ライトサーベル≫
最初に右隣りにいたセキリュウの腹に大きな切り傷ができた。
≪エレキテル≫
次にルーニャが雷を受けて膝を折り、
≪ダイアモンドカッタ≫
ランペルが右腰を抱えている。
切られたのだ。
≪落石≫
みんなを見届けて僕は岩の下敷きになった。
「さすがに強いな。」
「このメンバーでこれねぇ。」
治癒
≪サナ≫
ルーニャの『ウルトラキノコドロップ』もそれに加わる。
しかし、回復し終わった瞬間にクリスタルたちの攻撃の第二波が襲ってきた。
≪岩石ガラガラ≫
≪コロナ≫
≪カッチンコッチン≫
≪放電現象≫
生きていられさえすればこちらには回復にまわれる人が三人もいる。
しかし、相手はそんな生ぬるい攻撃はしてこない。
僕たちはクリスタルの攻撃を防ぎ、回復するので手いっぱいになってしまった。
クリスタラー本体はひたすら打ち消しの魔法、
≪ディスペル≫を放ちこちらの補助効果をことごとく無効化していた。
攻撃に回れない。
唯一クリスタルを殴っているのは僕だ。
逆にこれぐらいしかやることがない。
敵の近くにいるってことは敵の攻撃をよく受けるということで、
僕の体はすさまじい速度で傷つけられ、回復され、
また傷つけられていった。
これ、なんて拷問?