フールの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

ルイージの小説 18 後編 第四章 対話の宝石

 

「スピネル、

このペンダントを使って何をしたのか、

あるいは、何をしようとしているのか説明してくれないか?」

 

 

リビングで立ったまま僕たちは話をしていた。

スピネルの右手には竜の牙が握られている。

 

「・・・この牙を中継してセキリュウと話が出来る。

さっきは繋がらなかったけど今は繋がった。」

 

セキリュウ・・・。

「セキリュウはどんな人なの?」

スピネルは不器用に笑いながら答えた。

そう、不器用に。

声が少し潤んでいた。

「・・・おとうさんの親友で居候もしている。」

 

と、言うことは

セキリュウの『わが主』=スピネルのおとうさん

 

「セキリュウはドラゴン、

ということはスピネルのおとうさんもドラゴン・・・

あの巨体で子育て?」

「・・・竜族は普段人間体で生活している・・・。」

 

そうだよね。

あるはずないよね。

うん。

 

スピネルは目を軽くこすりながら、

今まで僕が長いこと待っていた質問をしてきた。

 

「・・・ルイージ、もしかしてセキリュウと会った?」

 

僕は頷いてあのときのことを一つ一つ話した。

僕の心境も含めて。

ただし、クリエイターのことを除いて、だが。

 

 

セキリュウともスピネルとも関係の無い、僕個人の話だからだ。

あの袋、そして封筒は僕の帽子の中に入っている。

まだ、開けてはいない。

 

「・・・話してくれてありがとう。

今まで話さなかった理由は

いわなくてもわかっているから・・・。」

 

話さなかったことを咎められると思っていたが杞憂に終わった。

 

「ごめんね。スピネル。」

隠し事をしていたのだ。

そして今も兄さんのことについて隠している。

謝るのは当然だ。

 

「・・・別に気にしてないよ。全部。」

 

スピネルは微笑んで見せようとした。

でも、思いに耐えるので精一杯らしく、

口元が少し歪んだだけだった。

 

「・・・ごめん、嬉しくて・・・。

すこし、待ってて・・・。」

 

スピネルは自分の手で涙をぬぐった。

僕はあえて後ろを向いてスピネルの瞳を見ないようにした。

 

「・・・フフッ・・・フフフフフッ。」

 

後ろから泣いているのか笑っているのか、

どっちつかずの声が聞こえる。

「・・・もう、大丈夫。

さあ、もう話も一通り済んだことだし、通信しましょ。」

 

僕はスピネルに向き直る。

今度はちゃんと彼女は微笑んでいた。

「・・・右手を軽く握って。」

「うん。」

僕は片膝を地面につけ両手をスピネルの手に重ねた。

「・・・そこまでしなくてもいいのに・・・。

じゃあ、始める・・・よ。」

 

 

 

外の音が急に

聞こえなくなった。

 

 

 

スピネルと自分、そして何者かの呼吸音が響き渡っている。

 

「・・・聞こえる?セキリュウ。」

 

「お嬢様!ご無事ですか!」

 

間違いなくあのときの僕を試したあのドラゴンの声だ。

若い、けれども威厳のあるあの声だ。

ふと、一瞬敬語なのに違和感を覚えた。

だが、すぐに理由はわかった。

セキリュウはスピネルのおとうさんの仕え人。

だからセキリュウよりもスピネルのほうが位が高いことになる。

敬語なのは当然だ。

 

「・・・よかった。

生きていて。

本当に・・・本当に・・・。

あと、敬語止めてくれる?」

 

「あ、はい。

わかりました。」

 

一呼吸間を置きセキリュウが再び話し始めた。

 

「本当に嬉しい。

言葉で言い表せないくらいだ。

・・・二度と話せない可能性もあったからな・・・。」

 

僕の頭にあの日の光景がフラシュバックした。

 

「本当にすまなかった。

仕事が立て込んでいたから、連絡する時間が一切なかったのだ。」

 

スピネルの安否を確認する以上に大切なこと。

なんだ・・・何なんだ。

今のセキリュウの言葉に非常に深い意味があるような気がした。

 

そもそもスピネルは誘拐されていたのだ。

つまり何者かが助け出し、ここにスピネルを送った。

そのことについてセキリュウの方から触れないとなると、

セキリュウがスピネルの解放に関与したことは明白だ。

セキリュウに聞きたいことがどんどん増えていく。

 

「・・・いいよ。

生きていただけで十分。ところで・・・・・・

おとうさんは?

おかあさんは?」

 

『おとうさん』『おかあさん』の名を口にしたスピネルの顔は、

不安と焦りに満ちて海のように青ざめていた。

最悪を考えているのだ。

 

「無事だ。

主も奥様も元気にやるべきことをしている。」

 

「・・・そう、フフフッ、フフフフフフッ・・・。」

 

スピネルの顔が、冬を耐えしのぎ、

春に大輪を咲かす花のように輝いた。

 

笑い声がいつもよりも長く、甲高かった。

嬉しくてたまらない、

そういう思いが彼女の声から伝わってくる。

よく見ればスピネルの体も興奮で震えていた。

 

「・・・いつおとうさんとおかあさんとセキリュウに、会える?」

 

僕が最も質問したかったことだ。

 

「主はまだ仕事が残っているから暫くは会えないが、

私は今週中には仕事が終わる。

来週にはそちらへ向かえるだろう。」

 

「・・・そう。わかった。」

 

セキリュウに会える喜びと、

おとうさんにまだ会えないもどかしさが、

スピネルの表情な表情を形作っていた。

 

・・・。

 

僕はこれ以上スピネルの家族の話を勝手に聞くのは無礼だと思い、

スピネルの手からそっと僕の手を退けた。

彼女は一瞬驚いたが、僕の考えがわかったらしく、

すぐにセキリュウとの会話に戻った。

 

「・・・ありがとう、ルイージ。」

 

 

僕は何も言わないで静かにキノピロの元へ戻った。

 

 

ルイージの小説

To Be Continued