フールの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

ルイージの小説 15 第三章 幸福の宝石

僕たちは今円卓のテーブルに、眠っているスピネルを挟み座っている。

スピネルは「猫の手」の休憩所につくなり、

イスに座ったまま寝てしまった。

 

魔法は精神状態に大きく左右される。

スピネルが前にそう言っていたのを思い出した。

もしかしたら魔法を放つとき、

魔力だけでなくほかに何か必要なのかもしれない。

正確なことは僕には分からない。

 

ひとつ言えるとしたら、

魔法はそれなりのコストを要するということぐらいだ。

まあ、考えてもしょうがないか。

 

「可愛い寝顔にゃ~。

そういえばこのコ、どこに住んでるにゃ?」

ルーニャがスピネルの寝顔を覗き込みながら小声で言った。

正直、この質問に僕はあまり答えたくなかった。

 

だって、

「・・・僕の家。」

だから。

 

「にゃにゃー!

ルイージと同居!!

もしかして恋人?養子?生き別れの妹?

どこまで話は進んでいるにゃ?

もしかして結婚話とかもうすんでいるのにゃ!」

ルーニャの目が

ギンギンに輝いていた。

「全部違う。ただの友達さ。」

「異性の友達と普通、同居するにゃ~?」

はぁ。

「いろいろ事情があるんだ。

複雑な事情がね。」

この言葉を聴いて

ルーニャはスピネル越しに

僕に詰め寄った。

「どんな事情?

どんな事情にゃ?

もしかしてルイージ二度目の

恋物語が・・・」

 

僕は多少の憤りを感じながら答えた。

 

 

「断じて・・・違う!」

 

 

腹のそこから唸るような僕の声にルーニャはたじろいだ。

多少ムキになることは考えていても、

本気で反論されるとは思っていなかったらしい。

「ごめん、いきなり怒ったりして。」

冷静さを取り戻した僕はルーニャに謝った。

彼女は軽い冗談のつもりで言ったはずなのに。

 

「ごめんにゃさい。

冗談のつもりだったんにゃけど。

何か、とても大変なことがあったのにゃ?」

僕は一瞬、三日前のあの光景を思い出した。

 

 

 

雨に打たれ、

 

風に揉まれ、

 

打ち捨てられていた

 

一人の・・・

 

 

 

「あっ・・・ああ・・・」

あの光景を思い出すだけで

変な汗が体からふきだし、

眩暈がしてくる。

血の気が顔から引き、

前に倒れそうになった。

 

「大丈夫にゃ?

医務室にいくにゃ?」

僕の様子にルーニャが慌てている。

僕は深呼吸をして心と体を落ち着かせる。

「大丈夫、もう治った。」

「それにゃらいいんだけど。」

これくらいのことでルーニャに心配をかけさせたくない。

「少し、嫌なことがあってね。」

僕は呟くように言った。

「そうか、にゃん。」

ルーニャは申し訳なさそうに僕を見る。

 

スピネルは相変わらず気持ちよさそうに眠っていた。

「・・・家庭の事情はスピネルのプライベートに関わるから、

聞かないようにして。」

 

スピネルの過去には触れてはならない。

一瞬の悲劇。

長い苦しみ。

 

僕はスピネルに目を向ける。

無垢な少女はスヤスヤ眠っていた。

彼女は眠っているときが一番子供らしいことに気がついた。

彼女は普段、

緊張からかどうしても多少大人っぽく見えてしまう。

 

 

・・・僕に甘えているときを除いて。

 

 

「ルーニャ。」

僕はスピネルのほっぺを指でつんつんしている社長に声をかけた。

猫耳がヒクッと反応する。

「今日は本当にありがとう。

すごく助かった。

僕もスピネルも。」

ルーニャは

誇らしげに返事をした。

 

 

「社員を思いやることは社長として当然だし、

困っている人を助けるのは人として当然にゃ。」

 

 

ルーニャと今後の方針を話し合った後、

スピネルを背負い帰宅することとなった。

 

ルーニャはスピネルを背負った僕に最後にこういった。

ルイージ

スピネルのこと、どう思っているにゃ?」

「さっき答えた通りだよ。

ただの友達さ。」

「安心したにゃ。」

僕はその答えに少し疑問を持ちながらも、「猫の手」を後にした。

 

 

 

ベッドにスピネルを寝かせ横にあるイスに座り、

スピネルの寝顔を拝見する。

 

こうしてみると普通の少女そのものだが、

実際はドラゴンと幻獣カーバンクルのハーフだ。

 

それが何を意味しているかはわからない。

 

そんなこと、この世界では何の意味も持たない。

 

人種差別なんて無い平和な世界だから。

 

つくづくこの世界に生まれたことに感謝する。

 

兄さんもこの世界に生まれてきて幸せだったのだろうか。

 

 

「・・・う~ん。」

スピネルが目を覚ました。

「・・・おはよう、ルイージ・・・。」

スピネルは伸びをしながら言った。

「おはよう。

今は夕方の5時だ。」

 

黒髪の少女は目をこすって周りを見渡す。

「・・・あれ、わたし・・・試験を終えて『猫の手』に帰って・・・。」

「そのまま寝ちゃったんだよ。」

僕は眠気の取れないスピネルに、

彼女が眠ってしまった後の出来事を簡単に説明した。

 

 

「・・・そんなことがあったんだ。」

さて、僕には伝えなければならないことがある。

 

「スピネル、戦闘試験は・・・合格だ。」

 

少女は始めキョトンとしていたが、

その後、柄にも無く大喜びした。

「・・・やったー!

合格したんだ!

全部ルイージに魔法を見切られてもうだめかなって思っていた。

フッ・・・フッ・・・フッ・・・。」

 

彼女の満面の笑みに僕はとても安堵した。

よかった。

 

「バンザーイ!バンザーイ!」

二人で万歳をし、喜びを分かち合う。

これでもうスピネルは「猫の手」の仲間として完全に認められた。

嬉しくないはずがない。

 

笑いあった後、二人で今日の出来事を振り返った。

嬉しくて仕方が無いらしく、スピネルはこれまでに無いほど饒舌だった。

 

スピネルは実に幸福そうだった。

そんなスピネルを見ながら僕は明るい未来を夢想した。

二人で笑いながら語り合った後、

パーティー気分で夕食をとった。

楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

 

 

 

 

ルイージの小説

To Be Continued