ヒゲと猫と二つの王国 3-2
僕はその言葉の意味を決めかねていた。
「緑のPの中には一人の女悪魔が憑いてるのさ」
僕のように精神に巣くっているのだろうか。はたまた肉体そのものに巣くっているのか。
今しがたマステラにお姫様だっこされていったルイージに、かつての僕を重ねてしまうのも無理はないことだった。
「あ~あ。もうちょっと遊びたかったのにゃ。
まだ、『ポンプ』とか『オバキューム』とか試してにゃいの沢山あったのに。」
「ルーニャ、事の重大さをわかっているのか?」
「とりついているって言ったって、マステラが取り押さえればそれで済む程度にゃ。
それに、いざとなればいくらでも手はあるにゃ。表立ってあの人たちが動かないってことは、まだ許容範囲ないってことにゃ。」
「わかった、ルーニャ。スピネル、行くよ。」
瞳を隠した少女は地面を見つめたまま黙っていた。
「・・・。」
「どうしたの?スピネル?」
「なんでもない。」
なんでもないときは地面を見つめたりしない。
「ルイージは平気さ。一人じゃない。」
「そうね・・・。」
「大丈夫にゃ!?緑のP!」
ルーニャはさっきまでのやり取りがまるでなかったかのようにルイージを心配していた。
「戦闘中、なんかおかしいと思ったら、にゃに?取りつかれてる?
女悪魔?カゲの女王?って、気を失っているから意味にゃいか。」
一人で勝手に困惑しているルーニャに僕は言った。
「ルーニャ、僕は仕事に移るよ。まだ、片付いていないモノがゴロゴロあるからね。」
スピネルが意外そうな顔をしたが無視した。
「そっか、仕事か・・・。」
マステラが残念そうな顔を見ながら、自分の依頼の資料をカウンターから取り出し、僕は猫の手を後にする。
「ルイージ、待って!」
「スピネル、君は自由にしていいよ。一人でこなせる依頼ばかりだから。きみは新しい友達を作ることに専念するんだ。」
そう言って僕は勢いよく、キノコタウンを飛び出した。
向こうのルイージに取り付けるのであれば、僕に乗り移られる可能性も高い。
僕もルイージだから。
ここは距離をとった方がいいだろう。
まあ、取りつかれたら取りつかれたで、別に僕もろとも消し去ってしまえば何の問題もないのだけど。僕がいなくてもルーニャとセキリュウがいればいいのだ。