フゥルの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

うごメモで作品がウケたときの教訓

 (最古参の読者さんなら知っているかと思いますが)私の処女作である二次創作小説は、DSiの「動くメモ帳」で発表しました。一ヶ月間の更新停止があったものの読者800人以上をマークすることになった、私の小説のなかでも奇異な作品です。読者ランキングは最高で一桁、平均二十位以内をマークした......今思い出しても馬鹿げてますよね。気がついたら有名作者の仲間入りを果たしてた。
 今回はそんな奇怪な経験を冷静に分析してみようと思います。
 ここで思ったのが学校の作文では最低クラスの文章を書く私がなぜ、そこまでウケたのか。当時の私は分析し切れなかったが、今考えると納得できる理由が見つかりました。


 まず第一に動くメモ帳は小学生や中学生がメインで使っていたコンテンツです。なので投稿される作品は......そもそも質とかどうとか以前に作品として認められるレベルの作品の方が少なかったんです。単なる自己満足がほとんどでした。
 起承転結を理解しているだけでも、かなり良質な作品として認められるような状況です。他者に見られることを意識していない作品群のなかで、ちょっぴりでもそれを意識しているだけでも評価が全く違う、それくらい世紀末な状態でした。

 さらに、小説というジャンルそのものがほとんど普及しておらず、競争相手がほとんどいませんでした。動くメモ帳はその名の通り、あくまで絵を描く媒体であり小説を投稿するには不向きだったからです。そもそも文字を入力する機能がない。

 そのなかでもゲーム小説となると数えるほどしか作品が投稿されていませんでした。ちょこっとだけポ○モンの小説を投稿している人とかはいましたが、ドットの画面に手書きの文章でかかれていたため、とにかく読み辛かった。字の上手い下手関係なく、です。

 そこで私はDSiについていたカメラでPCで打った文章を撮影し、それを編集するという手法をとりました。最低でも30分時間のかかる作業でした。ただ、そのお陰で誰でも視覚的に読める文章が出来上がりました。

 さらに偶然にも私はDSiを持っていれば誰でも知っている超メジャージャンルを選びました。この媒体での主な読者は小学生や中学生であり、どんな高等技術を駆使しようが子供にもわかるジャンルでないと読者はつかない。そんな状況で偶然このジャンルを選んだのは奇跡としか思えません。

 一話で終わらそうと思ったのだが、冒頭が適当に書いたわりには偶然のも心理効果を狙ったとしか思えないインパクトあるつかみとなっており、そのお陰で読者を獲得することができました。

 さらに完結する作品の方が少ない動メモ界で、一週間に一本を継続して行った結果、固定読者がつき人気作品となった......というのが今の私の分析。

 さらに毎回数十通届くコメント一つ一つに丁寧に返信したり、百コメント以上の読者アンケートを集計したり、ファンイラストを募集して集計してコメントつきで公開したり、とキチガ......精力的にファンサービスをしていたの影響しているでしょう。


 ここまで分析してわかる通り、文章や構成の基礎が全くできていない状態でも、限定的状況と、運と、ほんのちょっぴりのアイデアと、あり得ないくらいの膨大な時間を湯水がごとく消費することによって、評価を得ることは可能だという結論にたどり着きました。

 なお、当時高校生だった私にとって800人の読者を抱えるプレッシャーは並みのものではなく(しかも処女作で)、作品を書くことが生活のメインになっていました。読者の期待に答えるような作品を作らなければならない。その思想に囚われた私は、もはやネトゲ依存症に近い状態になってしまいました。小説のために実生活を犠牲にする状態でした。狂ってます。
 正直有名になるのは悪くありませんでしたし、なにかを書けば回りが賛美してくれるというのは金では買えない凄まじい快感でした。アンケートの人気投票でオリジナルキャラの投票数が100票を超えてダントツトップになったときなんかもう発狂もの。一種の麻薬といってもいいくらいです。根拠もなく自信を持ち、調子に乗り......
 ただ、その時当人が果たして幸せだったかというと必ずしもそうではありません。実生活は荒みまくってました。作品にかける時間が多大すぎて、学業をはじめとするあらゆるところで歪みが出ていました。


 さて、ここまで解説してわかる通り、実力なくして成り上がった私は、後に見事に叩きのめされることとなりました。挫折してはじめてそれが自分の実力じゃないと悟りました。そして、自分の作品にたいして自信がなくなり、面白い作品とは何なのかを知るために図書館に通うことになります。


 この件の教訓は、

・実力なくして成り上がった者にたいしては必ずツケが回ってくること。
・周囲からの評価に踊らされて動いていると、本当に大切なものを見失ってしまうということ。
・そして何より『井の中の蛙、大海を知らず』ということ。

 もし仮にこれを読んでいる読者さんが、自分の作品(ブログ)が爆発的に評価をされたとしても、冷静に状況を分析できるだけの余裕を持っていただければ、と思います。

新兵 短編小説

 俺は剣にするか銃にするか迷っていた。
 実は俺は金と社会保障欲しさに兵士に志願した。そして、訓練を積み実践経験はゼロであるもののそれなりに戦えるようになった。志願兵はある程度訓練したあと『自分の武器』というものをプレゼントされる。どの武器にするかの希望書を提出するんだが、数ある武器のなかで気に入ったのが二つあった。希望書は二週間後に提出する。これはある意味自分の命にも関わる重大な選択だ。
 剣であれば敵へ勇猛果敢に立ち向かい、切り裂く戦士となるだろう。あと、見映えがいいから女にモテる。だが、そんな勇気が俺にあるかは甚だ疑問だった。
 銃を選べば中距離からの戦闘支援が主な任務になるだろう。アイザワ先輩から勧められた。成績がよければ消音器などのオプションも貰えるようになるらしい。


 「最初は俺も銃はだせぇと思ってたんだケド、使いなれると嫁さんよりも頼りになるゼ?」


 二週間の間悩み続け、ついに決断の日がやってきた。
 俺は......銃を選んだ。
 理由は簡単だ。俺は臆病なんだ。戦争をしない国ではあるのだが、万が一のことを考えたとき、得体の知れないバケモノに真っ先に突っ込む役など真っ平ごめんだ。そんな危ない賭けをする位ならモテなくたっていい。



 俺は間違いなく運が悪い。
 道路には亀裂が入り、信号機のライトの破片が地面で煌めいている。高層建築が立ち並ぶ町の至るところで火災が発生しており、怒号と悲鳴がこだまする。これが自分のそだった都市とは思いたくなかった。
 本当なら今すぐにでもここを逃げ出したかった。しかし、それはできない。なぜなら俺は......。


 「キョアァァァァ!!」


 突如不気味な声がした。声の方向へ目をやるとビルの残骸が横たわっている。その上で、顔のない薄ピンクのトカゲに翼を生やしたような不気味な化け物が吠えている。少なくとも車よりもデカイ。
 俺の銃が細かく震えていた。


 「新入り、あれはグレイワームだ。特徴がわかるか?」

 「どっ、毒を吐くことです。数回浴びれば我々の甲冑が溶けます」

 「そうだ。あとデブの癖に早い。気を引き締めていけ。本作戦の成否は我々銃師の活躍にかかっている」


 ヘルメス隊長はヘルメットの中から俺を睨み付けていた。褐色の肌にはえる白い髭に加えて、鋭すぎる青目が俺の冷静さを少しだけ呼び戻した。でも、冷静になればなるほど逃げ出したい気持ちが強くなっていく。俺はどうすればいい。
 俺が立ち尽くしている間、時間は刻々と過ぎていく。他の兵士たちはすでに討伐に向かっていた。数人が倒壊したビルを囲み、ライフル型の呪詛銃を構えている。


 「どうした、仲間が食われるのをみるのが趣味なのか?」

 「いいえ! 行きます」


 俺は決めた。銃口を化け物に向けて駆け出した。
 ワームを囲む一団に俺と隊長も加わり、銃を発射する。緑色の光がグレイワームの背中に炸裂した。
 ワームがこちらをにらんだ。そして、敵が後ろを向いた、と思ったら脇腹に強い痛みを感じた。体が宙に浮いた感触のあと、地面が眼前に迫った。なんとか立ち上がった俺の前で、グレイワームが口を大きく開けていた。
 しまった......。なにか見える......これが走馬灯なのか?!


 「新入り、なに座り込んでいるんだ。立て!」


 ピンクの化け物が視界の端で吠えていた。ヘルメス隊長の持つ銃の銃口から煙が吹いている。


 「呪詛銃のエネルギーが二秒前にリロードされていたぞ。恐怖にまみれて死ぬのは、最善を尽くしてからにしろ。我々が国民の命を背負っているということを忘れるな」


 肺が空気を求めて呼吸が荒くなった。俺はなんとか立ち上がると再びグレイワームとの対決に挑んだ。毒の霧を間一髪かわすと、ヘルメス隊長が弾をぶち当てた。続いて他の兵士たちの銃弾も次々当たる。やがて、アイザワ先輩の一撃で化け物は動かなくなった。


 「グレイワーム沈黙! 今回はアイザワの手柄だ」

 「イヤフゥ! 誉めてもいいんだゼ!」


 隊長に続きアイザワが無線に叫んだ。勝ったのか......一気に脱力感が俺を襲う。だが、周囲は化け物だらけだ。油断はできない。
 気張っている俺に、長身の兵士が声をかけてきた。ヘルメット越しに金髪が見える。


 「新米、なかなかキモがすわってんじゃねぇか。名前は?」

 「カキザキです。あなたは?」

 「俺はタシロ。よろしくな」


 握手したとき、隊長の怒号が耳をついた。


 「こいつを召喚したテロリストがそばにいるはずだ。儀式用の仮面をつけているからわかるはずだ。探しだして叩け。去年のように他国へ応援は頼めん。俺たちでやるんだ」



 昨日まで人で溢れていた繁華街が今はコンクリートの残骸で埋め尽くされている。信じられない光景だった。荒らされた町のなかをバラバラに捜索していたため、仲間とは離れている。人数の関係とはいえ、初出撃で単独行動をすることになるとは......。


 <こちらタシロ。こっちには誰もいねぇ>

 <アイザワだ。こっちにも誰もいない......なんだ! アイツは!>


 アイザワ先輩の無線が銃声と悲鳴で途絶えてしまった。


 <こちらタシロ、アイザワの居場所を特定した!>

 <新入り、アイザワのいた場所からお前が一番近い。東に三区画進んで右に曲がれ>

 「隊長、俺ですか!? 発信器持ちのタシロさんじゃなくて!?」

 <泣き言を言うな、新入り! タシロは別小隊と共にヴァイオレントワームと交戦中だ。頼りないことこの上ないがお前しかいない>


 俺は泣きたくなるのをこらえて、道路を進む。一区画目、以上なし。服屋が破壊されている。二区画目、酒場だ。なにか物音がした気がしてならない。三区画目、映画館......心臓がドキドキでそれどころではない。いつ殺されるかわからない恐怖が俺を押し潰そうとしてくる。が、それ以上にアイザワ先輩の安否が気になった。
 アイザワ先輩......俺にいつも気さくに接してくれた......銃を勧めてくれたのもあの人だ......クソ、生きていてくれよ。
 角を曲がったとき、なにか柔らかいものを踏んづけた。慌てて何歩か下がると、びちゃという音がした。


 「あ......」


 アイザワ先輩の無念の姿、その奥に仮面の召喚師がいた。


 「アイザワ先輩のカタキィィィィィイイイイイ!!」


 乱射した銃を難なくかわす召喚師。やつさえ消えれば決着がつく! 敵はライフル銃を抱えたまま逃げ出した。


 「隊長、仮面の召喚師がいました。G4区画方面に逃走中。俺が追跡していますが追い付けるかどうかわかりません。敵はライフル銃を所持」

 <よくやった、新入り。そのまま追跡しろ。やつらの魔方陣の性質上、走りながらでは魔物の召喚は不可能だ。銃も役にたたんはずだ。隙を与えるな>

 「仲間が死んだのになんでそんなに冷静なんですか、ヘルメス隊長!」

 <隊長さんはそれが最善だってことを知っているからだ。カキザキ、急げ!>


 息切れをしないよう、呼吸を整える。泣くのはまだ早い。奴を、奴を殺さなければ!
 だが、それには障害がいくつもある。ひとつ目は相手が銃の射程範囲外をキープしていること、ふたつ目は軽装ゆえに足が速いこと、みっつ目は町の構造を相手は知っているということだ。入念に計画して実行したテロに違いない。


 「追い付ける気がしない」


 だが、俺は絶対に諦めない。アイザワのため、そしてアイザワのような犠牲者をこれ以上出さないためだ。まだ避難できていない民間人もいるなか奴を野放しにはできない!
 追い付けなくても打つ手はある。俺は一心不乱に仮面召喚師を追いかけていたが......夢中になっていて注意が足りなかった。


 「カキザキ! しゃがめぇ!」

 「タシロさん! 俺より奴を」


 頭上を紫色の蜥蜴のような生き物が通りすぎた。ヴァイオレントワームだ。


 「しまった、召喚師を見失った。畜生!」


 俺は叫びながら銃をワームに乱射して八つ当たる。タシロさんと一緒に戦っていた別小隊の人が一瞬哀しげな視線を俺に向ける。
 自暴自棄になっている俺をタシロさんが叩いた。


 「落ち着け。カキザキは俺を甘くみすぎだ。奴とのすれ違ったとき発信器はつけておいた。そんで、この先にいるのは......」

 <ヘルメスだ。先回りして仮面召喚師を始末した。タシロ、カキザキ、二人ともよくやった。特に新入り......いや......カキザキ。発信器持ちのタシロの方に敵を誘導したのは見事だった。アイザワも地獄で俺たちに拍手を送っていることだろう>


 ワームがもがき苦しみながら消えていく。この世のものでない化け物は召喚師の手助けがないと存在できないのだ。
 一息ついてタシロが言った。


 「アイザワがまさかな......信じられねぇ......」

 「実は俺を銃師にすすめてくれたのアイザワ先輩なんです」

 「じゃあ、アイザワの分まで頑張らなくちゃな。カキザキが、さ」

 「はい......ウゥゥ......フゥヴヴヴッ!」


 涙がこらえられなかった。あんなに、あんなにあっさりと尊敬していた先輩が死ぬなんて......。なぜなんだ。チクショウ......。
 もう、どうにもならないのだという消失感が、いくらでも涙を沸かしてくる。止まらねぇ。
 首もとをびしょびしょにしながら俺は隊長らと合流したのだった。