フールの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

盲信国家カルマポリス PFCSss3

7

 「教授!どこにいるの!教授!」
 私は半壊している学校二階を走り回っていた。行きが切れて、顔に汗がにじみ出てくる。まさか、さっき囮になったときに……。
 先生はさっきいた職員室に座り込んで何かを探していた。

 「……あった!やはり、か」
 「教授!死んでなかったら返事してください!」
 「悪いことをしたな。すまん。少しショックを受けてな」

 床には過去の成績表が散らばっている。私がさっき踏みつけたものだった。

 「君が入学してくる三年前の成績簿だ。この生徒……」
 「無愛想な顔の上に、成績が1で埋め尽くされて……」
 「違う、こっち、ここの欄!使用呪詛の特徴」
 「『手に持った物をふることで突風を引き起こす』これって……」
 「そうだ。私も彼の能力を実際に呪詛の授業で見たことがある。……半年前に交通事故でなくなった」

 教授は校庭に一足遅れて到着した、『何か』処理班をチラリと確認してから続けた。

 「私は君が課題に没頭している間、なにもしてなかったわけじゃない。私も創世記をあらかた探ってみたんだ」
 「あの分厚いのを何冊も!?」
 「断片的だが興味深い記述を見つけた。リムドメイン計画。パラレルファクターを量産し最良の土地を侵略し理想郷を作る計画。これが本当なら魔法使いは意図的にパラレルファクターを作り出せる、つまり魂を操る技術を持っていたということになる」

 何か嫌な予感がする。

 「じゃあ、私たちの意見を会わせると……『魔法使いはワースシンボル化しても魂を取り込み操ることが出来る。そして魔法使いは取り込んだ魂でパラレルファクターをこの世に生み出し、侵略することを計画していた』、これって!」
 「そうだ。そして、過去に死んだ人の呪詛を『何か』は使ってきた。奴らの正体はつまり!!」
 「魔法使いが自分の兵器として転生させた、ワースシンボルを信仰していた人の魂!」
 「正確には魂を融合させてパラレルファクター化している。空を飛ぶ能力はこの子にはなかった!」

 と、熱い口調で教授は叫んだ。でも、その後すぐに冷静な口調に戻り、

 「発想が飛躍しすぎだ。私はどうやらさっき死にかけたせいでおかしくなっているらしい。そもそも私が実際に見たパラレルファクターなんて、ほんの数人だ。確証が持てない」
 「ええ、この異常な状況で普段通り持論を熱く語る辺り、ヤバイと思います。普通の教授なら死んだ生徒のことを思い出して涙ぐむ所です」
 「いや、大丈夫。泣き崩れそうなところを無理に隠しているだけだ。それにしても、私が意見を話すときっていつもこんなに興奮していたか?こんなにとんでもないこと言ってたか?」
 「はい。大変言いにくいですが、大体いつも通りです……」
 
 教授は深いため行きをついた。深刻に落ち込んでいるのは間違いないみたいだった。

 その後、私たちは処理班の人に救出され、無駄に長い事情聴取をされたあと、家に帰された。正直なところ、『何か』に襲われたときよりも、事情聴取の方が精神的に辛かった。

8

 学校が休校になった一ヶ月ほどの間、『何か』について二人で資料を集めた。その間に『何か』に4回ほどであってしまったけれど、何とか撃退することが出来た。明らかに私たちは狙われている。
 それでも研究を続けた結果、出現する『何か』の呪詛と知識は出現する一年以内に死亡したワースシンボル信仰者二名を複合し、強化したような能力になる、という統計が出た。
 その事を『何か』処理班に伝えたところ、国王に直接この事が伝わったらしく、国王の従者立ち会いのもと、ワースシンボルとの面会許可が出た。
 あまりにトントン拍子でことが進んだために、私も色々考えたけれど、国王の指示なので、もうどうしようもなかった。

 国王からの通達にはこんな手紙がついていた。
 「余はワースシンボルを盲目的に信仰してきた。だからそなたらがしたような、『歴史を疑ってかかる』ということをしなかった。そのような魔法使いに関しての記述も戯れ言だと、誰もが決めつけてそれ以上追究しなかった━━たとえ歴史家であろうともな。だからこそ、色眼鏡にかかっていない、そなたらこそが『何か』出現の究明にふさわしいと余は思う」


 あまりにもこの国はワースシンボルに依存しすぎていた。だから誰も疑わなかった。
 リンゴが木から下に落ちるのと同じくらい、ワースシンボルが私たちに幸福を与えてくれるのは当然だと、みんなは思い込んでいる。
 この国は生まれてから数百年かけてすっかり洗脳されていたんだ。