読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

フールの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

スピネルの夢想 ~お菓子の家~

短編小説 独り言 黒髪ロング

 真っ暗だ。まるで黒い霧が目の前を覆いつくしているみたいだった。その奥からよくわけのわからない音が聞こえてくる。やがて黒いもやが少しずつ形を成し、色づいてゆく。

 わたしははそこに立っていた。どこから来たのか、どういう目的でここにいるのかわからない。どこかの森林の奥地なのかな?首を左右に動かしても見えるのは木々ばかり。耳を澄まして聞こえるのは森のざわめき。聞いたこともないような鳥や動物の鳴き声。
 ためしに後ろを向いてみた。一軒の家があった。樹林のど真ん中に、家。その家を中心にして円を描くように空き地になっていた。わたしはその空き地の一角に立っていたみたい。
 家といっても普通の家じゃなかった。壁はビスケットでできているし、屋根は色とりどりの飴細工で作られていた。家の角を飾るのはチョコレート。よく見ると私の立っている地面もパンケーキ。ああ、見ているだけでよだれが出てきた。おいしそう!フッ・・・フッ・・・フッ・・・!
 わたしはきっと夢を見ているんだ。昨日お菓子をたくさん衝動買いしたからかな。
 でもそれならきっとオチがあるはず。賞味期限切れで見た目に反してまずかった、とか。実は家そのものが巨人のおやつで、中に入ると食べられちゃう、っていうのもありかも。ヘンゼルとグレーテルみたいに、家に魔女がいるというのも面白いかな。
 童話みたいにいきなり家にがっつくのははしたない気がする。かといって何もしないで森の中に飛び込むのもいやだ。暗いし怖いし。
 とりあえず入ってみよう。
 わたしは少し緊張しながら板チョコでできた扉をノックした。反応なし。じゃあ入っちゃえ。何が起ころうとも、どうせ夢なんだし。
 ガチッ。あ・・・・・・、鍵がかかってる。