風上、再び 転 合作小説
うおおぉぉーー!!!
なんという暴風。
庇った腕の隙間から、鳩が前を向いたまま後ろに飛ばされているのが見える。
意地を張っている余裕もなくなってきた。
ずるずると足が後ろに後退していく。
うう、降参。
膝をつくかどうかまよっていると、風が徐々に弱まっていった。
よかった。
私は肩で息をしながら少女をどうにか視界にとらえる。
風の少女の顔がぶれて見える。
頭が・・・くらくらする。
「くすっ♪
ほんと、来てくれてありがとう♪」
「・・・もちろんだ。約束したではないか。」
「そうね♪
約束、したもんね♪」
嬉しそうに喜ぶ少女。安堵しているようにも見える。
私の中に約束という言葉がやけに印象に残った。
「私、前から聞きたいことがあるの。
・・・あなたの名前。」
「私の名前かい?
セキリュウだ。」
「セキリュウ・・・。」
少女はその名前を聞いたとき、少しの間黙った。
なぜだろう。
私の疑問は直後に晴れることとなった。
「竜の姿、そのまんまの名前ね♪」
「・・・見ていた・・・のか??」
変身を直接見られたとしたら・・・。
あの時か。
まあ、いい。
別にばれても悪いことはなかろう。
「・・・お嬢さんの名前は?」
わたしの問いに対し、彼女は問いで返してきた。
「その事ことなんだけれど・・・
私の名前・・・決めてくるれる?」
なるほど。
道理で名乗らないわけだ。
ここで納得してしまうのもおかしいのだが。
普通ならなぜと聞き返すであろうその言葉を、私は追究しなかった。
傷口を相手に開けさせたところで私には治療も何もできない。
私にできることは、彼女の過剰すぎる期待にこたえるべく、小さな脳を全力で回転させることだけだった。