フールの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

ルイージの小説 30 前編 第七章 宝石がために鐘はなる

たっぷり再開の喜びをかみ締め、

わたしは惜しみながらもセキリュウから身を引いた。

 

「・・・セキリュウ、わたしに対して敬語は止めて。

・・・今日は仕事じゃないから。」

セキリュウは静かに頷き

「わかった。スピネル。」

と答えた。

 

セキリュウのわたしに対しての敬語は勤務時間内だけだ。

正直わたし自身、堅苦しくてあまり好まない。

そういえばこの掛け合いも直接会ってしたのは随分昔のような気がする。

 

セキリュウはわたしの後ろにいる緑の人気者に声をかけた。

「久方ぶりだな、ルイージ

そして、すまなかった。」

人間の姿を始めてみた彼は、少し戸惑いながら言葉を返した。

「いいよ。

セキリュウには大切なことを教えてもらったから。」

 

テーブルに三人座ったのを見るのはこれが初めてだった。

「ここに着た訳はもう言うまでもあるまい。

外の景色は見たな。」

わたしたちは軽く頷いた。

セキリュウが続ける。

「実は、異変はこれだけではない。」

 

ピチャ。

彼の手に握られたマグカップからコーヒーがこぼれた。

 

「キノコタウンで不気味な鐘の音が観測された。

しかも、その鐘がなるたびに誰か一人がテレサやお化けに変身してしまう。」

 

驚いた。

 

いろんなものを見聞きしたとはいえこれには驚いた。

テレサ

漫画のコマの噴出しに似た体につぶらな瞳と大きな口を付けたような、

どこか憎めないお化け。

わたしはまだ本の中でしか見たことがない。

 

ふと左を見ると彼が今にも倒れそうなくらい顔を青ざめていた。

ルイージ、大丈夫?」

彼はビクッと体を揺らし、

まるでバケモノか何かを見るような目つきわたしを見た。

そして何かを確認して安堵する。

「ダッ大丈夫。」

慌てふためく彼にわたしは小声で言った。

「・・・もしかしてお化け、苦手?」

彼は帽子に手を当て深くかぶりなおすと

「・・・少しだけ。」

と、か細く答えた。

 

ホントは大嫌いなんだろうな。

幻獣の親戚がいるわたしにとって幽霊は別段怖くない。

おかあさんの友達にも幽霊はいる。

だから、わたしは今笑いを必死にこらえていた。

 

そんなわたしに構わず共同不審な彼が声を上げた。

「なっ・・・なるほど。

じゃあキノコタウンは今頃・・・」

「ゴーストタウン状態だろう。

鐘の音は不定期だがかなりの頻度で観測されている。」

わたしは彼が小さくため息をつくのを見逃さなかった。

 

「皆、『猫の手』で待っている。

ルイージ、スピネル、早く向かおう。」

「・・・わかった。」

わたしとルイージの声が重なる。

 

つまりルイージの応答が普段より遅れているということだ。

よっぽど嫌そうだった。

 

タキシードを着たセキリュウは限りなく頼もしかったが、

緑のオーバーオールを着た青年はとても頼りなく見えた。

 

・・・意外と可愛いところもあるのね・・・。