フールの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

ルイージの小説 29 第七章 宝石がために鐘はなる

 

7章 

宝石がために鐘はなる

 

 

「スピネル、話がある。」

 

「なあに?おとうさん。」

 

「セキリュウにとある仕事が舞い込んできた。

莫大な報酬、価値ある経験の保障、優しい仲間たち。

不定期出勤。」

 

「なにをする仕事?」

 

「ある国の傭兵になって欲しいとのことだ。

命の危険が伴う。」

 

「え?」

 

「スピネル、きみの意見が聞きたい。」

 

「勿論、反対よ。」

 

「気が合うな。

親子同士。」

 

 

 

・・・ネル

 

 

スピネル!

 

「・・・おはよう。ルイージ。」

ベッドから身を起こし真横にいる彼に挨拶する。

「・・・どうしたの?そんな慌てて。」

わたしは手で口を抑えながらあくびした。

 

・・・眠い。

 

「時計を見てくれ。そして窓も。」

時計は短針が6を刺していた。

一方外は

「・・・真っ暗ね。」

見たままを率直に言った。

空が暗い。

曇りとかそういう暗さではなく、漆で塗りつぶしたように暗かった。

「問題は今が午前六時だということだ。」

ようやく状況が理解できた。

「・・・こういうことよくあるの?」

わたしの世界で言う天変地異がこの世界では日常的に起きていた。

彼は首を横に振り、

「こういうことがあるのは

決まってキノコ王国が滅亡しそうなときさ。」

軽い口調でとんでもないことを緑の貴公子は口にした。

「・・・笑えない洒落ね。」

「残念ながら洒落じゃない。」

わたしはこの異常事態にいつものように朝食を済ませ、

いつもどおり朝の日課をこなした。

この世界で暮らして一ヶ月あまりが経過した今となっては

もう、ちょっとやそっとのことじゃ動じなくなっていた。

 

彼と部屋の掃除を終えたあとテーブルを挟んで向かい合った。

 

彼は自家製コーヒーをすすり、話を持ち出した。

「とりあえず『猫の手』に行ってみんなでこれからどう対応するか話し合おう。

すべてはここからだ。」

彼の目が一瞬、未知なる物を見つけた子供のように光った。

わたしはクスリと笑う。

「・・・純粋なのね。」

彼は頭を傾げて

「どういうこと?」

と聞き返してきた。

「・・・秘密。フッ・・・フッ・・・。」

 

わたしの答えに彼は微笑を浮かべてコーヒーに口を付けた。

 

「そういえばセキリュウが家に来るのは今日か。」

 

セキリュウ。

会いたい。

すぐにでも。

しかし、セキリュウなら

『私と会うよりも先にこの問題の解決に勤しみなさい』

と言うだろう。

 

「セキリュウは恐らくここよりも先にキノコ城か

『猫の手』に向かうと思う。

自分のことよりもまず、人のことを優先するから。」

 

 

来客を告げるチャイムが鳴った。

 

 

「もうお迎えが来たか。」

わたしたちはドアの前に立ち、彼がノブをひねった。

 

目の前に立っていたのは

「セキリュウ!」

 

忘れようのないわたしの家族。

全身黒いタキシードに包まれ、

短く切った赤髪をたなびかせ、

竜族特有のすらりとした顔立ちで柔和な笑みを浮かべ、

涙ぐんだ黒い瞳でわたしを見ていた。

 

予想が外れたとかもう、どうでも良くなった。

思うよりも先に体が動いていた。

セキリュウの懐に思いっ切り飛び込んだ。

 

そして、久方ぶりの再開に涙をながした。

 

「お嬢様。お元気そうで何よりです。」

 

 

 

ルイージの小説

To Be Continued