フールの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

ルイージの小説 4 第一章 汚された宝石

僕はこの話を

したくなかった。

今もしたくない。

嫌だ。

僕にとって、

とてもとてもつらい

出来事だったから。

思い出すだけで

心が悲鳴を上げる。

君が楽しめるとは、

とても思えない。

でも、

話さなきゃいけない。

この物語の

始まりであり、

結末を変えた

出来事だから。

何より、

知って欲しいから。

こういう目に

あっている人が

君たちの世界にも

少なからず

存在していることを。

 

強制はしない。

聞きたくないという人は

聞かなくていい。

次回からまた聞きに来て。

 

君、

覚悟はいい?

 

 

 

第一章 汚された宝石

 

 

 

大粒の雨が降る。

雷鳴がとどろく。

雨によって

視界は悪く、

分厚い雲によって

夜のような薄暗さだ。

街灯が唯一の光源である。

そんな中、

僕は傘も持たずに

歩いていた。

雨音で何も聞こえない。

僕以外誰もいない。

両手を

ポケットに突っ込み、

下を向いて

ただただ、歩いていた。

一歩、また一歩と

踏みしめるように。

大雨。

あの時もそうだった。

一瞬目の前が

真っ白になった。

轟音が耳を襲う。

僕の思い出を

引き裂いた。

近くに落ちたな。

何の目的も無く

音のした方へ

歩いていく。

道をはずれ、

森の中へと

入っていく。

視界はさらに

悪くなった。

しばらく歩くと、

開けた場所に出た。

そこには

幹が引き裂かれた

大木があった。

一本の老木。

だが、僕の目は

捉えていた。

その下に

打ち捨てられているものに。

雨に打たれ、風に揉まれ

一人の少女が

打ち捨てられていた。

 

体を丸め、

身には何も

まとっておらず、

まるで、犬のように。

頭の中で

今起こっている事実を

ひたすら否定していた。

だが、

夢でも幻想でもない。

捨てられている。

人が。

放っておけ

放っておけ

叫ぶ心の声を

良心が押しつぶした。

近づいてみた。

長い髪だ。

目が隠れてしまっている。

だが、その美しい顔を

隠しきれてはいない。

なんて白い肌だろう。

僕は再び凍りついた。

全身に切り傷、打撲。

それも、死なない程度に。

おとぎ話じゃなかった。

虐待という言葉の意味を

初めて理解した。

 

 

 

『久しぶりに人間らしい

人間に出会った。』

「あ・・・ああっ。」

僕は泣き崩れた。

 

地にひざを着き

少女の顔を見据えた。

同時に僕の体に

衝撃が走った。

嘘だろ!

泣き崩れたお陰で分かった。

彼女は呼吸をしている。

つまり、

生きている。

 

 

 

僕は、背負った。

 

僕は、帰った。

 

雨は、止まない。

 

 

 

少女。

姿からして

15、16歳。

黒く長い髪を持ち

髪によって目が

隠れている。

肌は白く

美しい顔立ちだ。

恐らく、

それが災いしたのだろうが。

体には切り傷、アザ

打撲のあと。

痩せこけて、

体にアバラ骨が

浮かび上がっていた。

とりあえず

彼女に服を着せた。

ピーチ姫に送るはずだった

白いドレスだ。

ベッドに寝かせた。

丁寧にケガの手当もした。

そして、彼女が目覚めた。

目覚めると同時に

僕を認識し、

ベッドから起き、

おぼつかない足取りで

部屋の隅へ行き

体を丸め、

震えだした。

心からの震え。

「いやっ・・・いっいや。

うっ・・・もう・・・いや・・・。

こ・・・ないで。

みんな・・・い・・・や・・・。

わたし・・・し・・・ぬ・・・。」

僕の心が、

握りつぶされた。

 

 

 

 

彼女と同じ目線で

僕は向かい合っていた。

「・・・食べないの?」

「・・・いや・・・いっ・・・や・・・。

どれい・・・いやっ・・・。

・・・じっけん・・・

・・・い・・・や・・・。」

彼女は何も

食べようとしない。

目の前には

器に注がれた

重湯があるというのに。

何時間葛藤したのだろうか。

このままでは、

本当に

飢え死にしてしまう。

いや、

本当に死ぬ気なのだ。

彼女は。

だが、

舌を噛み切るだけの

勇気は無いらしい。

それが唯一の救いだった。

それなら

何時間だって

付き合ってやる。

僕が死ぬのは

構わないが、

僕の目の前で

人が死ぬのは

もう、見たくない。

見たくない!!

見たくないぃぃぃぃ!!!

 

 

 

大雨。

あの時もそうだった。

 

兄さん・・・、

なぜ・・・

 

死ぬのは僕でも

良かったのに。

 

兄さん、

僕も死んでいい?

 

 

 

「僕が守ってやる!」

振り絞るように

声を出した。

「!」

優しく、でも、強く!

「君を傷つけるものから

僕が守る。

たとえ、君自身であっても。」

「・・・。」

「僕は君に酷いことはしない。

触れもしない。でも・・・、

君を守る!」

彼女を

救えるだけの力を・・・!

「僕が君の・・・

居場所になってやる!」

僕の人生なんか

どうでもいい。

僕の命なんか

どうでもいい。

 

僕の心なんか

どうでもいい。

それで命を

救えるのなら!

「・・・・・・・・・。」

彼女は

おもむろに手を伸ばし、

目の前の器を抱え上げ

重湯を

口にした。

「おいしい・・・。」

 

窓から日差しが

入ってきた。

朝か・・・。

止んだな、雨。

「おひさま、久しぶり・・・。」

彼女は眩しそうに

窓の方を見ていた。

 

 

僕の名前はルイージ

 

・・・君の・・・名前は?

 

・・・・・・スピネル。

 

 

僕はまだ知らない。

この選択が

全てを変えたのだと。