フゥルの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

ルイージの小説 2 序章

圧倒されている僕にドラゴンが語りかけてきた。

若い男性の声だったが、威厳に満ちていた。

 

「お前がルイージか、人間。」

 

僕は素直に答えることにした。

周りのキノピオたちの逃げる時間を稼ぐためにも。

「ああ、僕がルイージだ。」

ドラゴンは嘘かどうか見定めるように僕を見た。

すべてを見透かすような、澄み渡った瞳だった。

「嘘ではないようだな。

私には時間が無い。

説明する時間も惜しい。

よって、単刀直入に言う。

人間よ、私はお前の実力を試しに来た。

つまり、私と戦え、ということだ。」

「試す」ということは、格下の相手を自分が見極め判断するという意味だ。

要するに今の僕とドラゴンでは、

天と地ほどの実力差があると言っているようなものだ。

しかも自らの名前を名乗らないばかりか、

僕のことを『人間』という種族名で呼んでいる。

一から十まで見下しているのだ。

よほど自信があるのだろう。

 

まあ、実際に向かい合っている僕からすると、

勝ち目があるようにはとても思えないのも事実だが。

 

「話し合う余地などありはしない。

敵は待ってはくれぬ。

さあ、来い、人間!」

僕は決意を固め、その言葉に素直に従った。

つまり、真正面からドラゴンの腹部めがけて思いっきり踏み込んだのである。

ドラゴンは動じない。

受け止めようというのである。

 

 

左手にFP(フラワーパワー)を集中、

高密度のファイアーボールを作り出し、

それをドラゴンの腹部めがけて思いっきりたたきつけた。

 

≪ファイア掌底≫

 

しかし、火炎は龍の鱗にはじかれた。

ドラゴンはまったく怯まない。

だが、僕の真の狙いはドラゴンとの間合いを「零」にすることだ。

腰を低くし次の体勢に移る。

 

右手を拳で固め、瞬間的に全エネルギーを集中させる。

そして左手を引くのと、

同時に一気に右手を振り上げ思いっきりジャンプした。

≪ファイアージャンプパンチ≫

ドラゴンは一瞬顔をしかめたものの、傷ついたのは僕の拳だった。

加工してあるはずの手袋が破れ、その拳から血がにじみ出る。

 

だが、ドラゴンが怯んだ。

この隙を見逃すわけにはいかない。

 

僕の特徴は兄さんおも超える驚異的なジャンプ力と滞空力である。

今、僕はドラゴンの頭上を陣取っていた。

滞空時間を利用し、さらに次の技へつなげる。

自らの血で血塗られた右拳に意識を集中する。

 

兄さんが会得できなかった技。

僕にしかできない秘儀。

 

空が瞬時に雲に覆われ周囲が暗くなる。

右拳を開いた瞬間、右手に落雷した。

 

雷をまとった右手を

 

落下に合わせて

 

ドラゴンに掲げた。

 

≪サンダーハンド≫

 

ドラゴンの皮膚下で巨大な放電が起こり肉体を雷が貫いた。

「・・・!!」

声にならない叫びを上げ、ドラゴンはたじろいだ。

一方僕は連続で大技を繰り出した反動で、

身動きできずに地面にたたきつけられた。

「がっ!」

呼吸が止まり、息が詰まる。

新鮮な空気を求め悶絶する。

 

 

やっとのことで呼吸を取り戻した。

素早く体勢を立て直し構える。

 

「ほう、なかなかの力を持っているようだな、人間。

だが、死ぬ気で戦うことと死ぬつもりで戦うことには大きな差がある。

覚えておくといい。」

 

 

僕はこの戦いで一度も身を守る動作をしていない。

 

僕なんかいなくてもこの世界は何も変わりはしない。

 

別に僕が死んだって誰も悲しみはしない。

 

 

「さて、そろそろこちらからも仕掛けさせてもらおう。」

 

ドラゴンは口を大きく開いた。

強大なエネルギーが口に集中する。

それが白い光の玉となって僕の目に映っていた。

今の僕があんなものを受けたら、

耐えられないことは明白だった。

避けられるとも到底思えない。

 

僕は真正面から迎え撃つことにした。

 

両手の手のひらを前に突き出し時計回り大きくに回転させる。

手が火炎をまとい炎が軌跡を描く。

それぞれの腕が180度回転したところで

両腰に拳を引き、

ドラゴンに向かって一気に突き出した。

灼熱の火炎がドラゴンに向かって放たれた。

 

ルイージファイナル≫

 

同時にドラゴンも口から強大なエネルギーを放出した。

 

しかし、≪サンダーハンド≫でマヒしたのか

軌道がずれた。

僕は目を疑った。

 

エネルギーの束が向かう先に、

 

物陰に隠れて戦いを見ている

 

 

 

キノピオの子供がいたのだ。

 

 

 

To Be Continued