フゥルの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

シナリオ練習

シナリオを書く練習のために書いたものです。神話をテーマにあえめ中二チックにしてあります。長いので暇があるときにどうぞ。


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 トキエルは一般家庭に住む青年だった。彼は学舎と剣術道場を往復する日々に少し退屈していた。
 ある日トキエルの家に、鳥人の天使ウィンドに世界の調和を守る天使になってほしいと言われる。だが、トキエルは自分には無理だ、そんな才能はないと断る。何度かウィンドが勧誘してきたもののかたくなに断った。ウィンドはとうとう諦めて竜帝の剣と呼ばれる聖剣をトキエルに託して天界へと帰っていった。


 そんなある日、町に紳士服に身を包んだ天魔デスタン率いる悪魔軍が進行する。なすすべもなく蹂躙されていく町。避難を急ぐトキエルと家族のもとに悪魔が迫った。家族は悪魔になすすべもなく殺されてしまう。これまでか、と思ったときトキエルの手に竜帝の刃が握られていた。トキエルが剣を振るうと悪魔は胴が切断され絶命した。
 家族の仇に燃えるトキエルは悪魔の軍団を単身で撃破していく。そしてついに天悪デスタンと対峙する。しかし、天魔デスタンの魔法によりトキエルは追い詰められてしまう。止めを刺されるまさにそのとき、助けに入ったのは鳥人ウィンドであった。ウィンドと二人でデスタンを追い詰めついに撃退に成功する。だが、死んだフリをしていたデスタンは悪あがきでトキエルを道連れにしようとする。が、それを読んでいたウィンドによって阻止される。天魔デスタンは「お前達は騙されている」と意味深な言葉を残し地獄へと転送された。
 トキエルはウィンドからこのような無法者が世界にはまだ沢山おり、このような悲劇を二度と産まぬように協力してほしいとウィンドから説得される。もはや家族も住む町もないトキエルは、天使になることを決意する。


 天界へとわたったトキエルは多大な歓迎を受けた。もともとトキエルは天界でも英雄になるのではないかと言われるほど魔力が高く、素養があった。それを信じない天使もいたが、ウィンドと共に悪魔デスタンを倒したことにより認めさせたらしい。
 天界は創造者の命のもと世界をあるべき姿に導く組織であった。世界を制御するために様々な役職の天使がいるが、鳥人ウィンドはそのなかでも戦闘天使のうちの一人だ。そしてトキエルもウィンドのもとで高い魔力を生かした戦闘天使として活動することになった。
 世界には「時空の歪み」とよばれる現象が多発していた。発生理由は不明だが様々な時と場所に発生し、その中から無尽蔵に異形の怪物が姿をあらわし、世界の秩序を乱す。トキエルに与えられた主な役目はこの「時空の歪み」を消していくことだった。
 トキエルは様々な場所に降臨し、時空の歪みを閉じて、そこから出た魔物を討伐していった。数えきれないほどの人々を魔物の手から救い、白いスライムであるホワイト、後に妻となる半魚人の麗しき女性ルナなど力強い仲間を得た。天界でもその強さが広まり、底知れぬ闇と名付けられた特大の「時空の歪み」を竜帝の剣を用いて閉じたことで、その名声は頂点に達した。彼は天界で英雄と呼ばれるようになった。


 だが、いつまでたっても「時空の歪み」の発生源を特定しようとしない神に対しトキエルは苛立ちを覚えるようになる。そしてこのまま神を盲信することが本当に正しいことなのか疑問を持つようになる。トキエルはウィンドに頼み、創造者以外の神、古代竜エルダーと会うことになった。
 エルダーはトキエルを信用しておらず、住みかである無天の城にて、三びきの従者の竜たちを配備した。従者の竜は「心を写し出す鏡」「心の光を感じとる宝玉」「心の闇を投影する杖」を手にそれぞれトキエルに試練を与えた。だがトキエルはこれをホワイトや妻となったルナの知恵を借りて突破する。
 ついにエルダーと会ったトキエルは驚愕の事実を知らされる。創造者の思うこの世界の正しき姿とは、次に世界を創造する際に最高の世界を作り出すために、好きなように実験のできる世界であった。この世界に住む人々や大半の天使達とはほど遠い。さらに、創造者の理想のために無理矢理歴史を修正しているために生じた歪みこそが「時空の歪み」だった。さらに、トキエルが英雄となるのは創造者によって仕組まれた必然であることも、自分が産み出されるために数万の天使が実験に使われたことも知ってしまう。
 古代竜エルダーはその証拠にと天界の歴史記録装置にアクセスするための鍵をトキエルに与えた。


 トキエルは単身で天界の記録庫に潜り込み、天界の記録を漁った。エルダーのいっていることが間違いであると願いながら記録を探った。しかし、指定された領域を調べるとトキエルに関する実験記録が山のように出てきた。
 夢中で調べていたトキエルは他の天使に不意をつかれ創造者の前に連行されてしまう。創造者はトキエルの言い分を聞かず、不要な情報を閲覧した罪、創造者を疑った罪など100以上の項目で有罪と判断、直接地獄へと転送されてしまう。


 地獄に落とされたトキエルはその創造者の行いに絶望した。幸いにも天界に残っている仲間と連絡をとりあい、脱出の方法を探る。そして、脱出には地獄の主に承諾を得なければならないと知る。ルシファーと取り合うには地獄で実力を認められなければならない。
 地獄は悪魔と魔物が支配する暴力による無法地帯であった。トキエルは天界での経験を生かし、悪魔を竜刃の剣と力で下し、のしあがっていく。もはや信奉する神を棄てたトキエルに情けや容赦はない。やがてトキエルは天魔の称号を地獄で得た。
 とうとう、トキエルは地獄の主と相対する。それはかつて倒したはずの天魔、デスタンであった。彼は先代の主を倒し玉座を勝ち得たのであった。デスタンは天魔とは天使から堕ちた悪魔の尊称であること、最初に出会ったときの非礼を詫びることをトキエルに伝えた。実はトキエルのすんでいた町は英雄を産み出す実験に使われていた町であり、創造者を挫くために滅ぼさざるを得なかったのだ。
 トキエルはデスタンに創造者に対する憎しみの言葉をぶつけた。デスタンは最初にであった頃トキエル、噂で聞いた英雄トキエル、そして今神に対する憎しみにとらわれた天魔トキエル、そのどれもが全く異質であったことに興味を抱く。デスタンはトキエルを終始観察することを条件に地上へ出ることを許可する。トキエルは過程は違えど創造者に恨みがあるのは同じはずだ、力を貸してくれとデスタンに頼んだ。デスタンは地獄の秩序を守るためにそれはできないが、そのかわりに戦わずして悪魔や魔物と対話する秘術をトキエルに授けた。


 デスタンと妻であるルナをはじめとする仲間の力により地獄と地上への道が開かれた。トキエルは万を辞して地上に降臨する。さらにトキエルは地獄で得た悪魔と対話する秘術を用いて、「次元の歪み」にいる魔物を手下として天界に進行した。仲間による内部からの手引きもあり、侵入に成功。止めに入るかつての同僚である天使達を打ち倒し、トキエルはついに仲間と共に創造者と対決する。
 しかし、創造者の力は絶対的であり完膚なきまでに叩きのめされてしまう。創造者の攻撃によりウィンドやホワイト、そして愛する妻でもあるルナまでもが絶命してしまう。さらに、トキエルの武器である竜帝の剣も折られ、引き連れた魔物も天使達との戦いにより手が離せない状態だ。トキエルが諦めかけた時、助けに入ったのはなんと古代竜エルダーと悪魔を引き連れた天魔デスタンであった。
 二人の援護により再び力を取り戻したトキエル。彼は仲間を、何より妻を殺された悲しみにより潜在能力のすべてを開放した。エルダーから新たな剣を授かり、デスタン、エルダーと共に創造者の撃退に成功する。しかし、エルダーは創造者の攻撃による傷によって、デスタンは創造者の不意打ちからルキエルを守るために重症を負ってしまう。
 デスタンは、悪魔でありしかも親殺しである自分を信頼する力を讃えた。エルダーはどんなに強大な相手であろうと真実を見極め、立ち向かう勇気を誉めた。そして二人は共に息をひきとってしまう。


 天界は天使と悪魔と魔物の遺骸を飲み込んで崩壊した。トキエルは世界をあるべき姿に戻す代償として、故郷も、居場所も、同僚も、仲間も、友も、妻も、なにもかも失った。
 後の世にトキエルの行いは生き残った少数の天使により全世界に伝えられた。そして意思を継いだ者達が今もあるべき世界を守っている。
 だが、英雄トキエルのその後の行方については誰も知らない。