フールの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

記憶の欠片 超短編

 少女と少年は仲良しだった。少女は巫女の血を引く貴族という身分のためあまり外には出られなかった。少年はそんな彼女を秘密裏に連れ出して子供らしい遊びを教えてあげていた。
 少女が親の目を盗んで森に入り迷子になったとき、真っ先に助けに行ったのも少年だった。少年は「ぼくがあの子を誘ったんだ」と嘘をつき、罪を被ってくれた。君がいなくなってしまったらとても悲しいから二度とこんなことしないで、と言った少年の優しさに少女は涙した。
 すくすくと二人は育った。だがある日少女が誘拐されてしまった。邪神の復活の儀式に利用されることがわかった。少年は儀式の場所に単独で侵入、儀式を中断して少女を助け出すことに成功したが、彼女の記憶が100の欠片となって世界に散らばってしまった。
 少年は彼の親の反対を押しきって旅に出た。記憶の欠片は膨大な力を持っていて、人を魔物に変える力があった。記憶を失ってしまった彼女と少年は世界を回り、魔物となってしまった人々を知恵と力を持って助けつつ、記憶の欠片を集めた。旅が終盤に差し掛かる頃には、少年は青年になっていた。
 青年はとうとう最後の欠片がとある神殿にあることを賢者から聞き出した。青年は最後の欠片を手にした。だが、最後の欠片を彼女に渡した瞬間、彼女を依代に邪神が復活してしまった。欠片に含まれていたのは彼女の記憶だけでなく、100に分けられた邪神の力そのものだったのだ。そう、彼女は自らの記憶と引き換えに邪神を封印していたのだ。よりにもよって、最後の欠片にその記憶が含まれていたのである。
 青年は絶望した。自らの手で邪神を復活させてしまった。邪神に弄ばれぼろ布のように宙を舞う青年。だが、青年が止めを刺される直前、彼女が最後の力を振り絞り邪神の動きを止めた。彼女ごと剣で邪神を貫き、全てを終わらせた。