フールの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

少女拐いの怪鳥 ショートショート

少女拐いの怪鳥

 その森には怪鳥がすんでいた。ある日怪鳥の縄張りに美しい人間の少女が迷いこんだ。怪鳥は少女をエサとして拐い巣に持ち帰った。さて、怪鳥が臓物を喰らってやろうと思った矢先、少女は「迷子のわたしを助けてくれてありがとう」と言った。長い間山に住む生き物に恐れられてきた怪鳥は他の動物と話すことなど、ましてや感謝などされたことは一度もなかった。
 怪鳥は少女を森の外に送り届けた。少女は言った。「こんなに大切にされたのはじめてでした。このご恩は必ず返します」と。怪鳥は胸のざわめきが気が気でなく、すぐに巣へと帰っていった。
 それから時が経ったある日、怪鳥は兵士たちに囲まれ槍を突きつけられていた。翼は折れ、傷からは血が溢れ地面を濡らしていた。怪鳥は自らの最後を悟り、そっと目を閉じた。
 だが、甲高い女の声で怪鳥は目を開いた。「あのご恩を今お返しします」。怪鳥は再び立ち上がる。
 昔怪鳥に助けられた少女は立派な女貴族になっていた。怪鳥は約束を守った貴族に仕えた。彼女は怪鳥のお陰で巨額の富を得た。だが、女貴族はひとつ気にかかることがあった。急に成り上がったために怪鳥以外に心許せる友人がいないのだった。女貴族は怪鳥に毎晩客を招くようお願いした。
 怪鳥は女貴族以外の心優しき人間を知らなかった。だから彼女と同じように清らかな心を持つ少女を館へと導いた。女貴族は怪鳥に導かれた者たちと一晩話しては各々の家に返す。それを生きる楽しみとした。
 怪鳥は今日も少女を求めて空を飛ぶ。土中に眠りし主人のために。その恩を返し続けるために。