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フールの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

アウレイスと私 第二部 短編小説

thefool199485.hatenadiary.com
⬆こちらの話の続きになります。

 また今回も同じく坂津さんからキャラを借りています。

━━

 アウレイスにという少女に会った。ルビネルの友達でこの学校に短期留学するらしい。人種差別の激しい国の出身だと言うから、色々と心配になった。たが、今はエウス村長の治める村で平和に暮らしているらしい。
 エウス村長は差別撤廃運動の指導者であり、生粋の人格者としてもよく知られている。彼のもとで暮らしているのなら大丈夫だろう。

 ルビネルと負けず劣らずの白い肌に、銀色の長髪。あどけない顔と、ルビネルが気に入るのも無理はない外見だった。性格の方も過度の人見知りではあるものの温厚で優しく、思わず守りたくなるような愛らしさを持っている。


 ただ一つ気になったのは首筋に細くうっすらと直線のアザが浮かび上がっていたことだ。


 そういえば、最近ルビネルの様子が変わった。元々魅力的だったのにさらに綺麗になったような気がするのは気のせいだろうか。何かあったのか、と聞いても詳しいことは答えてくれない。
 今思えばアウレイスの紹介の仕方も彼女らしくなかった。いつもなら私にたいして女の子のかわいい点やら推しポイントを語るのだが、特に説明もなくあっさりとしていた。


 つい先日もアウレイスをルビネルがつれていたが、そのときアウレイスのほっぺたが帯状に赤くなっていた気がする。気のせいだろうか


 ルビネルにアウレイスのプライベートで不審な点がないかと聞いた。ルビネルは自分はそんなことを聞いたことがないし、エウス村長の下でそんなことがあるはずがない、と答えた。……そのときなぜか顔を赤らめてそむけた。何か妄想でもしたのだろうか。まあ、節操もなく女性を弄ぶルビネルのことだ。何を考えていても不思議ではない。


 ルビネルがダメなら直接アウレイスに……いや、その前に外堀を埋めるか。


 私はエウス・オーファン村長に手紙を書いた。あなたの知り得ないところでアウレイスが何か不幸な目にあっている可能性はないですか?と。あの怪我は偶然つくにはあまりにもおかしい位置だ。

 エウス村長からの返答は想像していたものと違った。アウレイスは今、彼の村には住んでいない。最近他国に行かせている、とのことだった。そして、今アウレイスが滞在中の国が……この国だった。エウス村長もアウレイスのことが気になっているらしく、何かあればすぐに連絡をよこしてほしいということ、また、協力して欲しいことがあればできる限りのことはする、という言葉が添えられていた。
 心強いことこの上ない。保護者が子供の敵に回るほど厄介なものはないからだ


 私はとうとう三者面談を切り出した、とはいってもレストランに私が招待しただけだが。とりあえず軽く談笑をする。そこでわかったのは友達、という枠組みを越えてルビネルとアウレイスの仲がよかった。親友といっても差し支えないかもしれない。帰り際に例の話題にそれとなく触れたが、偶然か否か、ルビネルに話題をずらされた。ぐぬぬ


 その後何回か食事に行ったが、その全てにおいて話題を逸らされてしまった。しかも、彼女らと会うたびに、異様なところに小さなアザや傷跡がアウレイスに浮かび上がっては消えている。


 とうとう私は考えたくもない結論にたどり着こうとしていた。一縷の望みをかけ、私はとうとうアウレイスと個人面談をすることにした。


 アウレイスは昔自殺してしまった生徒に似ていた。常に笑顔を他人に振り撒き、そのうらで何か恐ろしいものをひた隠しにしている。そうして、誰にも悟られないまま、いつのまにかこの世を去る。真に自殺を決行する子は何のサインも出さない。ただただ淡々とこの世を去るのである。

 そして、その原因は彼女の友達だった。

 アウレイスとは研究室で二人きりで話した。他愛のない雑談から切り出し、意図的に『怪我』や『人間関係の悩み』等の話題をふり、アウレイスを誘導しようと試みる。しかし、彼女の口から出てくるのは無難な返答と……ルビネルと私の思い出についての問いかけだった。


 なぜか彼女は私とルビネルの過去について強く知りたがっていた。私は確かにルビネルに思い入れはあるが、あくまで一生徒として接してきた。私は会話の中でそれを強調しつつアウレイスの質問に答えた……つもりだ。
 ただ、アウレイスの方は何か不満足なようで、陰りのある笑顔を時々私に向けてきた。私の真の意図が察せられたか?とりあえずアウレイスと二人で話せたのでよしとしよう。じわじわと彼女の本音を聞き出せばいい。時間はまだあるはずだ。


 アウレイスと何度か面談をしたが、彼女は肝心なところでおし黙ったり、はぐらかしたりして、いっこうに傷について話してくれない。そうこうしているうちに変化が起きた。

 
 アウレイスではなく、ルビネルに、である。


 最近、ルビネルの目がとても鋭くなることがある。私とアウレイスが話している時だ。本人は意識していないのかも知れないが、私とアウレイスが話していると、ルビネルは他人にわからない程度に顔を陰らせる。

 何を不快に思っているのだろう。私にはさっぱりわからなかった。



 気がつくと私は、毎週のようにアウレイスに会いに行くようになっていた。エウス村長への報告義務を理由にして。

 だんだんとこころを開いてくれるアウレイス。彼女はとても魅力的な子だ。

 人を思いやる優しい心と、大胆な行動力もある。あとは彼女を認めて、自信をつけてくれるようなパートナーが見つかれば……。

 親しい人に対しては、喜怒哀楽がはっきりとしていて、とても可愛らしい。

 ……そんな彼女の傷について問題がないか確かめること、それが今回の目的だ。彼女からその由来を聞き出すにはそれ相応に仲良くなる必要がある。

 これは仕方のないことなんだ。面談をしてアウレイスとの距離を縮めないといけない。彼女が酷い目にあっていないか、確かめるには彼女の信頼を勝ち取る以外に方法はない。




 そうだ、これは仕方のないことだ……。




 あれからアウレイスの何度も会っている。最近生徒たちから『タニカワ教授がアウレイスという少女と付き合っている』という噂がたっていた。まあ、このくらいは覚悟していたから問題ないとしても、それに続く文言『ルビネルが嫉妬のあまり落ち込んでいる』というのはどういうことだろうか。

 よくよくルビネルを見てみると少し痩せてきているような気がした。気遣う言葉をかけても生返事しかしてこない。

 なぜだろうか?私は疑問が頭に浮かんだが、アウレイスに話しかけられ、後回しにしてしまった。こっちから察して悩みを聞く機会を持ちかける乗るべきだったのに。

 その翌日だった。アウレイスが頬に大きなアザをつくって来たのは……。







━━《幕間》━━

アウレイスとルビネル



 タニカワ教授と『アウリィ』が二人でよく会っているらしい。私はその様子を見たことがない。けれど、日に日にアウリィのタニカワ教授への態度が軟化しているのは確かだった。単なる知り合いではすまされない、もっと親密な関係。それに近づいていた。

 タニカワ教授もアウリィを気に入っているらしく、最近私よりも気にかけている気がする……いや、気にかけている。アウリィを見る目も生徒に向けるものではなく、一個人に好意を抱いている、そんな印章だった。

 奥さんが死んでからというもの、全く恋愛沙汰には興味のなかったタニカワ教授のこころ。私でも動かすことのできなかったタニカワ教授こころをアウリィが動かした。そして、アウリィのこころもまた、タニカワ教授に開いている。

 なぜ二人にできて私には出来ない。私はアウリィの気を引いたタニカワ教授に嫉妬し、タニカワ教授の気を引いたアウリィに嫉妬した……

 ……ちがう、ちがう、嫉妬なんかしてない。二人とも私の大切な人なんだから。

 いやでも、アウリィの心は確実にタニカワ教授に……。くっ……タニカワ教授はアウリィ何を気にしていたのかしら?いや、単純に個人的に好いていただけなのかもしれない。立場を利用して会いにいって……

 それもちがう、タニカワ教授そんな人じゃない。

 アウリィは私を愛してくれているはず。そうにきまっている。でも何でタニカワ教授と二人で会いにいっているの?教育指導室の中でいったい何が話し合われているの?

 わからない、わからない、わからない……

 気がつくと私は目に涙を浮かべたアウリィの顔をはたいていた。愛情から来るものではなく、嫉妬と苛つきと黒々とした心の何かによって引き起こされた、純粋な暴力だった。

 「どうしたの?ルビネル……。私が何か悪いことをしたならあやまるから……悩みがあったら聞くから……ぶつのはもうやめて……痛いよ……」

 私は振り上げた腕をおろした。私は何てことをしてしまったのだろう。

 「アウリィ……ご、ごめん。ごめんない。謝るのは私の方、ごめんなさい。うぅ……ごめんなさい……」

 私はその晩、アウレイスを滅茶苦茶にしてしまったのだ。私としたことが、純粋な暴力をふるってしまった。アウレイスに刻まれた頬の傷は生々しく、翌日のタニカワ教授の目に止まるだろう……。


 アウリィがあれ以来急によそよそしくなった。当然だ。キスビットでさんざん受けてきた無意味な暴力を、もっとも信頼していたであろう、私から受けたのだから。

 後悔しても遅かった。一度してしまったことは取り消すことは出来ない。たとえ彼女の記憶から昨晩の出来事を消し去ったとしても、私への不信感はもはや拭いようもない。

 自分が憎い。感情に振り回され、勝手に二人に嫉妬して苛ついて、捌け口にアウリィを使って、私は最悪な人間だ。

 昨日、寝ているアウリィの肌に人差し指でそっと触れてみた。でも、何も感じなかった。温もりも、愛情も、何も感じなかった。ただ、触れている、と認識しただけで気持ちよくもなんともなかった。でも、アウリィの肌にはなんの変化もない。
 私はどうやら不感症になってしまったらしかった。

 息抜きに映画を一人で見ようが、公園でボーッとしようが、何も感じない。地の底に落ちた感情は何事も受け付けなくなっていた。

 鏡を見た。そこに以前の自分はない。頬はやせこけ、肌に艶はなく、髪の毛もバサバサ、目の回りはくぼんで隈を作っている。

 あばらが浮き出て骨と皮になった肉体。魅力も何もないただひたすら醜いだけの女がそこにいた。



━━



 昨夜、寝ている私にルビネルが近づいてきた。奴隷時代にはよくあったこと……。ロクに寝かせてもらえず昼に夜に代わる代わる繰り返される彼らたちの「遊び」。
 当時は熟睡なんてしたこともなかったけれど、最近ではようやくぐっすり眠ることができるようになった。
 でも、長年刷り込まれた習慣がそう簡単に変わることはない。例え寝ていても少しの物音で目が覚めてしまう。
 ルビネルはゆっくり、物音を立てないように私に近づいてきた。それが分かった瞬間、手を振り上げたルビネルの姿がフラッシュバックする。私は激しい恐怖感に身を強張らせる。
 動けない。声が出せない。怖い。また、叩くの?息を止めて加虐の瞬間を待つ。すると、ルビネルがそっと私に触れた。それはほんの一瞬だった。それ以上、何も、無かった。


 ルビネルが、あの人たちのように面白半分で私を叩いたりするはずが無いのは、頭では分かってる。でも心と体が、ルビネルを怖がってしまう…愛しているのに…腕を振り上げられただけで全身がすくんで動けない…ルビネルはきっと苦しんでる。でも、助けてあげなきゃいけないのに…ルビネルが、恐い…