フゥルの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

ルイージの物語 上 (短編小説)

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1

 ある朝、ルイージはいつものようにゆったりとイスに腰掛け、コーヒーを飲んでいました。家の窓からはすがすがしい朝日が差し込み、テーブルを挟んで向かい側に置かれた、まだ湯気の出ているコーヒーカップを照らしています。

 「はぁ……、またやってしまった。注いでも誰も飲むはずがないのに……」

 静かに呟いたとき、いきなり玄関のドアから激しいノックが響き渡りました。

 「ルイージさん!ルイージさん!!」

 扉を開けてあげると、決死の形相のキノピオがいました。

 「よかったっ!ルイージさん。お願いがあるんです。僕はキノピオで僕の名前はキノンであなたのファンで、ききききんちょうしてて」
 「とりあえず落ち着いて!ほら、コーヒーを注いであるから飲んで!」
 
 ガチガチに緊張したキノピオの青年━━キノンはミルクをたっぷりいれたコーヒーをイッキ飲みしました。彼はとある理由から、はるばるルイージの家を訪れたのです。
 そしてキノンはルイージに『あること』を相談しました。

 「━━無意味だってことはわかっているんです。彼女の両親に相談しても、こんなことのためにルイージさんを呼ぶのはおこがましいって。でも、ボクは……」
 「……わかった。引き受けるよ」

 キノンはルイージのこの言葉を聞いて、安堵の表情を浮かべました。緊張がほぐれ、一瞬泣きそうな顔をしましたが、なんとかこらえたみたいでした。そして、キノンはついでに、といった風に言いました。

 「そういえば、ここら辺でよく雷みたいな光がでることがあるって聞いたんですけど、何か知っていますか?」
 「えっ……、ああ、あれかい?大丈夫だよ。ただ光っているだけで問題ない。それにしても、そんな風に噂されてたのか」
 「そうなんてすか?」


2


 「わぁー!ルイージだ!本物だぁ!本当にキノンがつれてきてくれたの!?」

 部屋にはいるなり、いきなり部屋の主である白いワンピースを着た少女がおおはしゃぎしました。

 「ボクが無理言って来てもらったんです!ほら、アネモナ、自己紹介して」

 「あっ、そっかぁ!嬉しく過ぎて忘れてた。わたしね、アネモナっていうの。まさか生きている間に会えると思わなかった!」

 ルイージは少し驚きつつも

 「改めて、僕の名前はルイージ。よろしくね」

 と、ごくごく普通の自己紹介をしました。
 銀色の髪を揺らしながらベッドに腰かけた女の子は、それだけでもたいそう喜びしました。

 「この子が例の?」

 ルイージはベッドに腰かけたアネモナと握手をしてから、隣にいるキノンに聞きました。

 「ええ、彼女がアネモナです。ルイージさん、後はよろしくお願いします」

 「わかった」

 キノンは静かに部屋から出ていきました。
 ルイージは改めてアネモナの部屋を見渡しました。こじんまりとした部屋の真ん中にベッドがあるために、他の家具はほとんど置かれていませんでした。袋詰めにされたスーパーキノコがいくつかあるだけです。
 唯一、ベッドの横に置かれているタンスの上には、本が沢山つまれていました。その一番上に置かれていて、一番読み古されている本のタイトルが「ルイージストーリー」でした。
 
 「わたしね、あなたの大ファンなの。沢山あなたの冒険について聞きたいことがあるんだぁ。お外が今どうなっているのかとか、色々!」

 ルイージははベッドの上の抜け毛にしては多すぎる銀色の髪をちらりと見て言いました。

 「じゃあ、どんな話から聞きたい?」


3

 アネモナの家をあとにした二人はとあるモノを手に入れるために移動していました。

 「ルイージさん、彼女は生まれつき心臓が弱いんです。心臓って血液を送るポンプですよね。じゃあ、血液が何を運ぶかというと酸素とエネルギーなんです」
 「酸素がないからまともにエネルギーを作れず、しかも作ったとしても運ぶことが出来ない、か」

 しかも、生まれつきの体質だからスーパーキノコ1UPキノコ、薬用のハーブとかを使っても治らないんです、とキノンは言いました。

 「最近までなんとかなっていたんです。でも、成長期に入ってから心臓の負担も増えて、車イスでしか移動できなくなりまして。しまいには、とうとうベッドから離れられなくなったんです。アネモナさんは外にに出られなくなり、心を病みそうになりました」

 一呼吸置いて、キノンは真剣な眼差しでルイージの顔を見ました。

 「そんな彼女の心の支えてくれたのが、ルイージさん、あなたの書いた本なんです。彼女はあなたの本を読んでは外の世界に思いを馳せているんです。そして……あなたにも」

 ルイージは何でキノンがここまでアネモナについて知っているのか気になりましたが、今は質問しないことにしました。


4


 ルイージとキノンはフラワーワールドという場所の最南端にある花畑訪れました。
 ここに年に一週間だけ花開くカゲロウフラワーにはどんな病気でも治す力がある、とキノンが教えてくれたのです。
 キノンは真っ白な花の絵をルイージに見せました。

 「それを摘んでアネモナに渡せば、彼女の病気は治るのかい?」

 キノンはルイージの問いかけは答えず、

 「ここら辺は土がとても栄養満点で、パックンフラワーにとって絶好のすみかです。一応これを」

 といってメタル帽子をルイージに手渡しました。

 「体が鋼鉄になってしばらく攻撃を防げるはず……って、ルイージさんならご存じですよね」

 花畑をしばらくあるくと、一ヶ所だけ白い花が沢山咲いているところがありました。
 そこへ向かおうとした瞬間、目の前の小さな花が花がめきめきと大きくなり、あっというまに緑色のパックンフラワーになってしまいました。

 「ルイージさん!」
 「大丈夫だっ!」

 ルイージは食べられてしまう直前に、パックンの喉奥に『地獄づき』を放ちました。手刀は容赦なく敵をつらぬき、パックンは動かなくなりました。
 
 「すごいです。ファイアーフラワーもなしにあっさりと!」
 「君が叫んでくれたお陰だよ。パックンが君に気をとられてスキを見せてくれたんだ」
 
 ほっとしたのもつかの間、ルイージたちの周りでいくつものパックンフラワーが開花しました。

 「これは少し……マズイですかね?」
 「いいや、準備運動だっ!」

 ルイージは何か嫌な感じがして、バック転で素早くジャンプしました。すると、ほんの数秒前にルイージがいた場所に、パックンが食らいついていました。さっきルイージが倒したはずのパックンフラワーです。

 「パックンフラワーが群生するような地面でしか育たない……、これが貴重な割にカゲロウフラワーがとられていない理由か。君も戦えるかい?」
 「援護くらいは出来ます」
 「じゃあ、お願いするよ」

 こうして、ルイージとキノンのキビシイ戦いが幕を開けました。




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あとがき

 しばらく小説を書いていなかったのて、ストレス発散もかねてに短編二次創作。次回完結⬇
thefool199485.hatenadiary.com