白頭巾(ショートショート)
あるところに小さなかわいい女の子がいました。お父さんにこしらえてもらった白頭巾をかぶってらされていたので、『白頭巾』と呼ばれていました。
「白頭巾、今日は森に住むおばあちゃんをお迎えしてきて。寄り道なんかしちゃだめよ」
白頭巾が森に入ると狼が出てきました。
「お嬢ちゃん、今日はどこへ何しに行くのかな?」
「おばあちゃんの家にお迎えにいくの!」
「家はどこなのかい?」
「ずっと下のところ!」
「へ?」
狼は少し戸惑いました。その間に白頭巾は話を続けます。
「あ、そういえばお花持ってくるの忘れちゃった。お花畑の場所知らない?」
狼は丁寧に森のお花畑の場所と、おばあちゃんの家への近道を教えてくれました。
白頭巾はお花畑にいくためにどんどん森の奥へと進んでいきました。
この間に狼は急いで先回りして、おばあちゃんの家に行き、おばあちゃんをパクリと呑み込んでしまいました。
白頭巾はいつも持ち歩いている小鎌で花を刈りました。そして、花が持ちきれないほどになってから、おばあちゃんの家にいきました。
おばあちゃんはベッドに横になり、頭巾をすっぽりと被っていて、顔が見えなくなっていました。
「おばあちゃん、何て大きな手をしているの?」
「お前を大事に抱えあげるためさ」
「おばあちゃん、何て大きな耳をしているの?」
「お前のかわいい声をよく聞くためさ」
「おばあちゃん、何て大きな目をしているの?」
「愛しいお前をよく見るためさ」
「おばあちゃん、何て大きな口をしているの?」
「それはお前を……食べるためさ!!」
狼は突然ベッドから飛び出し、白頭巾に飛びかかりました。
しかし、狼は白頭巾の体をすり抜け、後ろの壁に思いっきり頭をぶつけました。わけもわからぬまま、狼は泡を吹いて死んでしまいました。
「あれれ?まあいっか。おばあちゃんの魂のろうそくの灯は消えていたんだけどな~……まあいっか!生きていても死んでいても関係ないよね!」
白頭巾は狼の頭の横に、どっさりと菊の花をおいて、自分の頭巾を狼の顔に被せてから、こう叫びました。
「おばあちゃんお迎えで~す!!」
白頭巾
頭巾を被った死神。死期が近い人にしか見えない。白頭巾に『お迎えで~す』の一言を聞いてしまった者は、大抵冥界に連れていかれる。
寿命の長さで人を判断しているため、間違った人をお迎えすることがあるが、白頭巾の声が聞こえるのは余命わずかの人だけなので、あんまり問題ない。