フゥルの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

高二ストレンジ after

半年前に書いた小説。たまにははっちゃけようとした結果、本当に普段書かないような内容に……。





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⬆前回




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 「隣、いい?」
 「どうぞ。もっとも、今は君以外に席は譲らないけどな」

 スピネルはいつも通りの学生服ではなく、白のワンピースを着ていた。袖の部分に彼岸花の刺繍が入っている。胸には赤く光る宝石のネックレス。
 白を基調にすることで、もともと童顔のスピネルがさらに幼く見える。気合いをいれて服を選んだ結果が、純潔の意味を持つ白の服とは。
 黒い長髪を最大限に活かすように計算されていることは、文字通り目に見えていた。

 「普段だったら昼休み。結局昼食を食べることになゆりるのね」
 「まあ、いいんじゃないか?食べるものは全く違う訳だし」
 僕はフォークを使って抹茶ケーキに巻き付いているフィルムを巻き取る。普段は途中でフィルムがフォークの先端から外れて哀しい気分になるけど、今回はうまくいった。
 「へぇ、取り方知ってるんだ?そういえば抹茶もの好きなの?」
 そう言いながらスピネルはシュークリームにナイフを差し込む。ど真ん中を貫かれたあわれなシューは、白いクリームを流して崩壊した。
 胸にまで伸びる黒髪に、クリームがつかないか少し心配になる。
 「まあね。抹茶オレとかよく頼む」
 「草食系だから?」
 「草食系の意味が違うとおもうんだけど。」
 「あれ?」
 スピネルは下を見ずにそう言いながらフォークでシューの皮を探った。シューの内蔵がぐちゃぐちゃに引き裂かれていく。会話に夢中で気づいていないのか?
 「なら、生物君のことだから葉緑体の色にでも惹かれた?」
 「ムグムグ……ゴク。何でも生物に絡めればいいってもんじゃあないぞ?まあ、正解だけど」
 「正解なの!?」
 驚きのあまりスピネルの手からこぼれ落ちたフォークが、原形のなくなったシューに添えられた。これを作った人に申し訳なくなってきた。

 ようやく、スピネルはシュークリームの惨劇に気づいたらしい。なんともない、といった顔だったけど、新たに手にしたスプーンは派手に震えていた。
 「まあ、普通に言えば緑色が好きで、それがきっかけで抹茶モノを食べておいしかった、ってだけだけど」
 「なんだ。ビックリしちゃった」
 顔を赤くするスピネルから思わず目を逸らした。照れ隠しにケーキを口に含む。スピネルの表情と口のなかに広がる抹茶の味であまーい天国につれていかれそうになる。

 危ういところで、シュークリームの悲劇が僕をこの世に引き留めた。べとべとになったフォークは今だクリームの中に置き去りにされていた。
 お手拭きで手を清めつつ僕は口を開いた。
 「シュークリーム、大丈夫か?それ」
 「スプーンですくえないの……」
 スプーンとシューの皮がおいかけっこをしていた。クリームがシューの皮の摩擦を弱めてしまい、縦横無尽に動き回っている。
 揺れに揺れる漆色の髪と、清楚な白い服が合わさり、とてもシュールな光景だった。
 「……仕方ないな」
 僕はクリーム色になったシューの皮を指でつまみ上げた。
 そして、そのまま白くなった指先ごと強引にスピネルの口に突っ込んだ。
 「ムグゥ!?」
 少女の表情がみるみるとろけていく。

 指先に柔らかくて熱いものの感触を感じた。絡み付いて、包み込んでくる。指の全神経を愛撫されているような錯覚に陥った。あまりの悦びに指が痙攣して動かない。

 回りのお客さんの視線を感じ、ぬるりとスピネルの唇の狭間から自分の指先を引き抜いた。名残惜しく、スピネルの唾液が僕の指先に残っていた。

 長い時間が経ったように思っけど、スピネルの口に指をいれてから引き抜くまで、数秒しか経っていなかった。