フールの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

サンタクロース

 子供たち一人につき一人、私たちはついている。私達はサンタクロースを信じる子供の心の化身。夢の世界と現実を結ぶサンタの家を通って、地球のどこかにいる自分の担当の人に夢とプレゼントを託す。それが私達の役目。あなたが信じている限り私達、サンタクロースは確かに『いる』。
 私達はあなたの心の鏡だから、あなたの想像した通りの姿をする。それは赤い服に丸まる太ったお腹を持つ、愛らしい顔をした、少し天然のおじいさんかもしれない。
 でも、あなたの周りには私達を信じない人がいる。そういう人たちの大半はあなたに向かってこう言うはず。「サンタクロースなんてまだ信じているのか」と。
 実は、今私たちのいる場所から、夢の世界にあるサンタの家は離れた場所にある。行くには大きな海を飛んで渡らなければいけない。
 海の上にはサタン(悪魔)が待ち構えている。信じない人たちの心。サタンは私を消そうとしてくる。もし、あなたが『信じぬ者』の言葉に幻滅し、私を信じなくなったら、私はサタンに負けてしまう。
 私の力はあなたの心。あなたが信じる限り私は負けない。必ずプレゼントを届けに行く。たとえ服が血の赤で上塗りされようとも。

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 目の前は地平線まで広がる漆黒の海。一面をオーロラに包まれた空。ガラスのように透き通った氷の地面。そして、集まった十数億のサンタとトナカイたち。この幻想的で不可思議な空間で私はサンタクロースの長老の演説を聞く。
 直接頭に言葉が響いてくる。
「とうとうこの日が来た。クリスマス!我々の使命は子供たちにプレゼントを配ること。すなわち!夢を配ること他ならない!
 しかし、それには困難が伴う。サタンの存在だ。やつらは我々の骨をえぐり肉を絶つだろう。
 体の痛み、消え行く仲間、途方もない敵の数。いまここで心が折れそうにもなっている者もいるだろう。
 だが恐れることはない!何故なら!我々には子供たちの信じる心がついているからだ!」
 「おぉー!!」
 サンタクロース達の野太く熱い歓声が上がった。私も思わず叫んでしまった。
 「さあ行こう。我らを生み出してくれた子供たちの元へ!」


 離陸に失敗すれば私は海に消えることになる。私は祈る気持ちで手綱を唸らせた。トナカイが宙に浮き、走り出す。大勢の仲間も同時に飛び立った。
 だが離陸に失敗した数万のサンタクロースが後ろの方で海に沈んで言った。

 空へ舞った後も試練は続く。
 力不足で海に墜落していった仲間がいた。突風に消えた仲間がいた。寒さにやられ、ソリのうえで息絶えた仲間がいた。
 手は霜焼けで晴れ上がり、手綱からは血がしたたっている。
 それでも私はほかのサンタクロースと共に前を向き、トナカイと共に逆境に立ち向かった。

 そして、サンタの家まてあと少しというところで、視界いっぱいに黒い煙が立ち込めた。
 よくみるとそれは霧などではなかった。幾億もの悪魔が空をふさいでいるのだ。遥か遠くにいるのにあまりの数の多さで霧と錯覚してしまった。あの霧のほんの小さな点一つ一つが私たちよりも巨大なサタン。そう思うと絶望にも近い気持ちが心をおおう。
 年を取るにつれて子供はサンタを信じなくなる。だから私の力は去年よりも確実に弱まっている。私はあのサタンの猛攻から今年も生き残れるのだろうか。




 私に出来ることは信じること。あなたをひたすら信じること。
 だからお願い。あなたも私を信じて欲しい。サンタクロースはいるのだ、と。この世には夢も希望も確かに存在するのだということを。そして何より、サンタクロースを信じるあなた自身をのことを。



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こんばんは、信じてくれてありがとう。