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フールの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

或るドラゴンの冒険 2

 なるほど、これは骨が折れそうだ。うっそうと木々が生い茂る森の手前で私は見上げた。
 長老曰く、この半径数十キロにわたる広大な山のどこか一箇所に祠があり、そこが悪魔の住処へと続いているそうだ。宿で休んだとはいえ、砂漠の中から一粒の砂金を見つけ出す様な作業は厳しい。上空を飛んで探そうとはしてみたが、見渡す限りの緑で手がかりなどありはしなかった。
 「っで、うちに頼んだわけ?」
 「町の人数人に聞いて、この山に一番詳しそうだったのが君だった」
 「まあ、確かに子供のころからこの山にはしょっちゅう登ってたし、みんなが通りそうにないところもたくさん冒険してたし」
 「活発な少女時代だな」
 「うちはまだ少女よっ!イケメンのおっさん!」
 「私はまだ18歳だ!」
 「えっ?じゃあうちのほうが年上じゃん。これからあたしの事お姉さんってよんでよ。セキリュウ
 宿舎の名簿を盗み見たな?しかも、呼び捨てとは。不満はあったが、口には出さなかった。

 


 しばらく林道を行く。しゃがれた鳥の声、今にもとまりそうな川のせせらぎ、どこかで聞いたことのあるような獣の鳴き声。
 「あんたさ、話し上手だよね。昨日仕事仲間が言ってたよ。セキリュウと話すと楽しいって」
 「そうか?私は普通に話をしているだけだが」
 今でも脳裏に浮かんでくる。今夜一晩とめてくださいと寒い中友達の家を訪ね歩いた日々。このコミュニケーションの技術は決して望んで手にしたものではなかった。これができないと生きていけなかった。
 「ところでさ、同僚から聞いたんだけど、セキリュウって魔法使えるんだよね?うちさ、生まれてから一度も魔法を見たことないんだよねぇ」
 ザックザックと地面を踏み鳴らしながらお姉さんは聞いてきた。
 私はおもむろにポケットの中から適当に小銭を取り出しわざと地面に落した。しかし、硬貨は地面に達する前、ヨーヨーのように私の手の中に戻った。
 「わぁ、すごい!今何したの?」
 「物体をその所有者に返す魔法だ」

 目を輝かせながら彼女は言った。こういう反応をしてくれると、こちらとしても話を進めるのがらくだ。それに楽しい。
 「授業中よく机からシャーペンを床に落すけどこの魔法使えたら取るの楽そう!」
 「実際に私も机の上から鉛筆を落したときやってみた。そのときは運悪く手の平が机の上に置かれていたせいで、鉛筆が机の底に直撃して芯がバキバキに折れた」
 お姉さんはえーホントー、と大げさに合図地を打った後、
 「回り込んだりとかはしてくれないんだ。案外不便だね」
 と少し残念そうに言った。
 「力の調節とかは魔法に込める力である程度コントロールできるんだが、今の私ではこれが限界だな」
 魔法は特定の連続した波長(声)と精神エネルギーに魔力(大気や身体に存在するエネルギー、あるいは粒子)が呼応して発動すると説明しようか迷ったが、引かれると思ったので黙っていた。