フールの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

あるドラゴンの冒険 1

 

 私は考え事をしていた。寝床である洞穴でたった一人で。あの時食べた肉はおいしかったとか、計画通りアレが進み達成できたときの何ともいえぬ快感とかを。
 突然、何者かの腕が私の胸部にめり込んだ。目の前を見ると悪魔としか形容しがたい何かが胸から腕を引き抜いたところだった。どす黒い物体を悪魔は懐にしまい、霧散してしまった。

 鍾乳洞に声が響き渡っている。天井にはいくつ物ろうそくが宙に浮いている。無論、魔法の力だ。そのほのかな明かりが私の赤いうろこをさらに赤く照らし出す。
 「しかし、その後特に私の体に変化はありませんでした。精神状態はむしろ安定しています。長老、この術に心当たりは?」
 私の横には年老いたドラゴンが肩を並べ歩いていた。そういう私もドラゴンであるのだが。
 「なるほど。その魔法についてはワシも詳しくないが、彼なら知っている。ワシの知り合いだよ」
 意外な答えだった。
 「だがセキリュウ、彼はおろかな考えで動くような者ではない。きっと考えがあるはず。今、会いに行ってみなさい。君としては不本意他ならないだろうがね」
 「長老、今日は私には七、八人の友人と個別に用事があるのですが」
 「ワシから伝えておくよ。セキリュウは身内の事で急な用事ができたと。人気者はつらいよな、セキリュウ。はっはっは」
 私はバツの悪い顔を浮かべながら長老の話の続きを聞き始めた。そもそも身内なんて私にいないぞ?


 私はパスポートを手に持ち目の前の生真面目そうなスーツ姿の人間の男と話していた。もちろん私の体もそれにあわせ、ヒューマンの姿に変えていた。
 「セキリュウさん、国境を越える際は人間の姿になってもらいます。所定の場所以外での竜化は原則禁止です。よろしいですね」
 「はい」
 「では、こちらのゲートをくぐってください」

 「・・・・・・少々熱があるようですね。このカードをお持ちください」
 「これは?」
 「見せるだけで人が寄り付かなくなるカードです」

 


 「ここは宿屋であっていますか?」
 私はカウンターで顔にひじをつけている女性に話しかけた。学生にしか見えないが、なかなか化粧がしっかりとされている。なるほど、伊達にサービス業をしているわけではなさそうだ。
 「あ、いらっしゃーい。こんな前方180度が山、後方180度が断崖絶壁のへんぴな村の宿を利用するなんて珍しいねぇ。そもそも、どうやってきたの?車?電車?」
 「海から飛んできました」
 「あ、飛行機?」
 「自分の翼です」
 女性は大げさに口を覆いながら叫んだ。
 「じゃあ、あんたドラゴン!はじめてみた。道理でイケメンのくせに変な格好していると思った!」
 「『変な格好』は余計です」
 「いーのいーの敬語なんか使わなくて。安くするからちょっと話に付き合ってよ。バイトでここに入ってるんだけどぜんぜん客来ないからひまでサァ」
 「だけどいいんですっ・・・・・・のか?仕事中じゃないのか」
 「うん、だべって引き止めて無理やりでも泊まらせるのがうちの仕事だから」
 私は苦笑しながらお金を差し出した。そして入国のときにもらったカードをさりげなくちらりと見せた。
 彼女は一瞬ピクリとしたものの、さっきと同じように話し始めた。