フールの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

スピネルの夢想2~お菓子の家に入ってみた~

 前回

 

「わぁ~!全部お菓子だぁ!!」
 飴でできた窓を叩き割って家に入った甲斐があった。前後左右どこを向いても目に入るのはお菓子ばかり。ソファーはパンケーキかな?テーブルは白い板チョコ。黄色いシフォンケーキは暖炉に使われていた。シャンデリアもよく見ると飴細工だ。ドーナッツの装飾、柱はバームクーヘンだし、もう全部お菓子。ああもうとにかくおいしそう!
 わたしはケーキでできたソファーに腰を下ろした。そこでふと、何かを見つけた。白いテーブルの上に黒くゴマ粒くらいの大きさの点があった。アリさんだ。たった一匹顎をがりがり動かしながらホワイトチョコをほおばっていた。
 あのアリさんをどこかで見たことがあるような気がする。すごく昔で細かいことはよく思い出せない。ただ、道端でこの蟻さんを見下ろしている光景だけがわたしの記憶の中に残っていた。
 不快感はなかった。この部屋で何も口にするな、というのはあまりにもかわいそうだ。現にいまわたしもこの家を食べたくて仕方がない。
 わたしはソファを強引に引きちぎった。ホットケーキを素手でつかんだときのような感触だった。そして勢いよくソファーのかけらを口の中に放り込む。
 「んんんっ!・・・・・・おいしい!」
 わたしは理性を捨てて手当たり次第に部屋にあるものを食い散らかした。タンスはメロン味。壁のシミはイチゴ味。フライパンはバナナ味。味覚が喜びの悲鳴をあげた。わたしの頭の中は今食べているものの見た目と匂いと味、そして次に食べるもので頭がいっぱい。水は(蛇口を食べてしまったので水がだだ漏れの)水道でいくらでも飲めるし、飲むたびに味が変わる。壊れたラジオテープのように笑い続けながらあらゆるものをむさぼった。
 さっきまでチョコを食べていたアリさんが動かなくなっていたのにも気づかずに。