佐藤ミヨリの友人 2
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そのうち、私の周りにもスゥーちゃんのことを知っている人が割と沢山いたということが彼女とのメールでわかりました。私がスゥーちゃんのことを実際に友達に話すと、
「知ってる知ってる!隣町の中学校出身だって言ってたよ。ミヨッちも知り合いだったんだ」
「ねぇ、スゥーちゃんと今度カラオケ行かない? かなり歌上手って噂だよ。しかも歌う曲こっちの趣味に合わせてくれるみたいだし」
ごく自然にスゥーちゃんが友達に受け入れられているのがすごく奇妙に思えました。
「うん、いいよ。スゥーちゃんの歌声聴いてみたいし。」
「ミヨッちさすが! ノリいいね!じゃあ今から待ち合わせ場所と時間言うから」
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「スゥーちゃん、この曲も知っているの! マジやばい!」
彼女はビブラートを響かせ、体を揺らしながら流行のアニメ曲を歌っていました。見た目からは想像もできない透き通った歌声です。
「ほら、貴方もいっしょに。この曲知ってるわよね?」
いきなり目の前に差し出されたマイクを見てぎょっとしました。曲は一番から二番への間奏に入っています。私はとっさにマイクを受け取り慌てて口に近付けました。
「ミヨっちとスゥーちゃんのデュエットだ!」
私達が歌うのに合わせて、一緒に来ていた友達三人も曲を口ずさみました。心地よい一体感がカラオケボックスを包みこみます。スゥーちゃんは歌っている間、ずっと私と友達に対して笑顔を振りまいていました。
スゥーちゃんが気を使ってみんなを盛り上げていることに気付いたのは、帰途に着いた後のことでした。
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カフェでお話をしましょう、とスゥーちゃんが言い出したのが発端でした。
「こうして二人で話すのは初めてかしら」
「そうですね」
店員にスゥーちゃんはローズマリーを私はただのアイスティーを頼みました。正直、どんな種類の紅茶があるのか私はよく知りません。しばらく世間話を交わした後、注文したものが届きました。
「ありがとう」
スゥーちゃんは店員にそう言った後、ティーカップの耳に人差し指を通し、中指と親指でそれを支えます。香りを十分に味わってから静かに口を付け、物音ひとつ立てずにテーブルの上にカップを置きました。
なんて優雅な紅茶の飲み方なのでしょう。私はストローで無作法にアイスティーを吸っているのが恥ずかしくなってしまいました。
「どこでそんなマナーを習ったんですか?」
「自分が他人からどう見られるか気にしていれば自然とこうなるものよ」