フゥルの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

ルイージのお話 試し書き

 五年が経った。

 

 

キノコタウンの一角いある建物へ僕は向かった。キノコの形をした建物がひしめく中で、その建物だけは縦に長い長方形だった。キノコ王国の外観を壊さないよう、キノコの柄の部分と同じ、白色のペンキで塗られている。最上階である四階だけは特別に赤の下地に白色のまだら模様だ。そして二階の窓には何かを消したような跡が残っている。

「あなた、ルイージ?」

建物に夢中になっていて気付かなかった。慌てて右に顔を向けた。そこには少女の黒く美しい髪がなびいていた。一瞬誰かと見間違う。*1

「噂以上にひょろひょろしてるのね」

「初対面の人を『ひょろひょろ』呼ばわり、か」

「本当のことでしょ?」

容赦ない言葉にしばし立ち尽くす。そして僕は鼻を鳴らした。

「確かにひょろひょろだ。」

少女は使えない召使を見下すような眼で僕をにらんだ。彼女の左目が青かったから余計に冷たく感じられた。まあ、身長的にいえば実際に下を向いているのは僕の方だが。

「君の名前は?」

「シルク」*2

無表情でしかもぶっきらぼうだ。まあ、この国ではそんな人いくらでもいるから慣れてはいるけど。

「何で話しかけたの?」

「『猫の手』に入社しに来た」

そう言って少女は建物の二階の窓を指差した。

この建物は『猫の手』と呼ばれる派遣会社の本部。依頼者がこの会社に依頼し、社員が依頼を遂行する。土管を直してくださいという日常的な依頼から、ピーチ姫救出をはじめとする無理難題を平然とこなすのがこの会社の魅力だった。要するに兄さんの代わりだ。

僕は少女に呟いた。

「じゃあ、こっちに来て。」

社内に入るとまず受け付け用のカウンターがあり、その奥に社員用の二階への階段がある。太陽光が部屋の中に差し込み、宙に舞う埃を映し出す。歩くたびに床から白い煙が舞った。中には僕たちを除いて誰もいない。しんと静まり返っている。外の町の騒ぎは一切聞こえてこない。

僕はカウンターの中へ入り、引き出しの中から社員の登録用紙を取り出し、埃を払い少女に渡した。一通り項目を書いてもらい僕が確認する。

「戦闘技能試験希望でいいかな?」

シルクは静かにうなずくだけだった。

 

町はずれにあるだだっ広い空き地、ここが訓練場だ。普段は公園として使っているため、砂はよく整備されていた。準備を整えた僕たちは数メートル離れて向かい合っていた。

少女の髪に太陽の光が反射して輝いている。

「行くよ?」

シルクはやはり無言でうなずいた。

僕は左手を天に掲げた。FP(フラワーパワー)を集中させ、小規模の雷を発生させる。そして走り幅跳びの要領で一気に間合いを詰めた。

 

≪サンダーハンド≫

 

掲げた左手は何かによって跳ね返された。何をどうしたのか、少女の華奢な右腕が剣に変化していたのだ。僕はとっさに後ろにジャンプする。その直後に僕のいた場所に鋭い斬光が走った。

攻撃が外れたとわかるや否や、少女は宙を舞いながら腕をハンマーに変化させた。上から思いっきりハンマーをぶつけてくると予想した僕はさらに後退する。しかし、彼女は僕を飛び越える形で後ろに着地、無防備な僕の背中に思いっきり右手をたたきつけた。

その時、長髪のはざまにシルクの右目が見えた。その瞳は左目とは対照的に赤く輝いていた。

 

「合格だ。」

僕はシルクに社員証を渡しながら言った。少女は驚きのまなざしをこちらに向けていた。おそらく彼女は試験に合格したから驚いているのではない。さっき僕は試験中に三十分間くらいずっと彼女のハンマーをもらっていたのにもかかわらず、平然と息も切らさず会話しているからだ。日ごろの訓練のたまものだ。ただし、耐えられるからといって痛くないわけではない。

「デクノ坊のうえに鈍感ね」

「君はもっと人を気遣うべきだ」

シルヴィは舌打ちをしてから無表情に戻った。無口で最低限しかしゃべらない。口を開くときは大半が僕への毒舌。もしシルクとクッパを会わせたらどうなるのだろう。

「このボロ屋、いつから掃除してないの?」

「二年前」

初めて会話らしい会話をしたような気がする。

「社長さんはよほどキタナイ部屋がお好きなようね」

「行方不明だ」

「え?」

「社長は消息不明。どこにいったのか、はたまた生きているのか死んでいるのか、全部わからない」

「じゃあ、『猫の手』は誰が仕切っているの?まさか貴方?」

「いいや。誰も仕切っていない」

シルクは明らかに動揺していた。まあ、そりゃそうか、入社したいと思っていた会社がすでになきものになっていたら誰だって驚きはするだろう。

「社員は僕一人。他は全員退社した。」

「はぁ!ばっかじゃないの?たった一人で会社気どり?私はごっこ遊びをしに来たわけじゃないのよ!」*3

僕はため息をついた。

「その通りだ。僕は君が言うような遊びのためにこの場所にいるんじゃない。社長が帰って来た時のために一人でここを守っているんだ。誰かが帰りを待っていなきゃ、あいつが、ルーニャが帰ってこれないだろう!」

「じゃあ、二年も行方不明になっている人が帰ってくるって保証はどこにあるの?」

僕はポケットの中からネームプレートを取り出した。深い緑色。表には『名前:ルーニャ』、裏には『飼い主:ミスターL』と書かれている。これは社長と僕との絆であり、お互いが生きているというあかしだった。近づけば近づくほど光り輝き、遠くにいるときほど色あせる。これをシルクに見せつけた。

それに対して少女はなんていうか、その、悪い顔をした。

「なるほどね。そう言うこと」

「何か勘違いしてないか?」

「気にしないで、奥手さん」

これから何度ため息をつくことになるのだろうか。

 

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あくまで試し書きなので続きを書く予定はまだないです。添削求む(特にid:yukina-rinren

 

*1:初めから黒髪

*2:ストーリー上、名前を隠す必要がなかった

*3:本家の毒舌を真似できなかった