ルイージの番外編 封印と宝石 8 終
異常だ。
なんて強さだ。
バックアップが三人もいてなお回復が追い付く気配がない。
それに、まだ黒い魔人は攻撃らしい攻撃をしていない。
打ち消しの魔法ばっかりだ。
四つのクリスタル、なんて力だ。
「さて、ぼくもそろそろ攻撃に転じたいんだけど・・・
無理そうだね。」
「攻撃するより補助に専念しろ。」
≪サンダーハンド≫
水のクリスタルに向かって雷を宿った手を振りかざす。
青い水晶はその身をガタガタとふるわせた。
僕はそれを見届けろと同時に右に横飛び。
火のクリスタルの≪火球≫を避ける。
避けたところで岩石のなだれが僕を襲った。
きりがないうえに攻撃が激しすぎる。
このままでは・・・。
『汝らの力は分かった。
その素晴らしい力に敬意を表し、我が力を開放する。』
ぴたりとクリスタルの攻撃が止んだ。
僕たちは一通りのやるべきことを済ませた後、
お互いの顔を見回した。
「にゃにがはじまるのかにゃ?」
「何かすごいことだ。」
ルーニャと僕のやり取りの後、すごいことは起こった。
今まで不規則に流れていた闇の動きが規則的になっていく。
クリスタラーから僕たちへ、水が上流から下流に流れるように暗黒の雲が動く。
あちこちに絶え間なく落雷し、この世の終わりを暗示させる。
クリスタルたちが共鳴し、透き通った音を放った。
セキリュウは険しい表情で言う。
「宇宙の法則が乱れる!」
ランペルはその赤い竜を一瞥し、
「ぼくの勘だとね、これ、喰らったら終わりだよ。」
と、一言。
「だったら止めるまでだ!」
闇の放流に逆らい、僕はクリスタラーに立ち向かう。
強大な魔人は僕を静かに見つめていた。
『勇敢な旅人よ。
さらばだ。』
果てしなく続いていた闇の空間が一気に一点に集約。
そして、すさまじいエネルギーとともに拡散された。
『受けよ。
・・・至高の力を!』
≪ビッグバーン≫
『なぜ、倒れない?』
≪すきとおり≫
「ぼくのわざだ。
相手の攻撃を全てかわせる。
魔法であれ物理であれ。」
「それを僕に使ってくれたのさ。
お前が攻撃の直前『ディスペル』を放っていれば、
僕たちの負けだった。」
だが、現実はそう甘くはなかった。
再び世界が圧縮されていく!
「これはこっけいだねぇ!
耐えたと思ったら第二撃!
うしゃしゃしゃしゃ!」
「ここまでなのか!」
「にゃにゃにゃ~!」
「万事・・・休すか・・・。」
攻撃の直前≪ディスペル≫が放たれた。
終わった・・・。
だが、次の瞬間、僕たちを祈りの光が包んだ。
これは!スピネルか!
僕たちの傷がいやされていく!
「元気がみなぎってくるにゃ!」
「英気が戻ってくる!」
「これだったらみんな!」
みんな・・・!
みんな?
みんな!?
「シロスケ!」
「ごめん、ぼくは無理みたいだ・・・。
これまでの行いが悪いからかな?」
「そんなことないにゃ!
あの事件の時にゃたは!」
「ランペル!
あきらめては駄目だ!」
でもなんで・・・ランペルだけが祈りの外なんだ。
みんなの声が聞こえてくる。
『ルイージ、セキリュウ大変!キノコデパートで半額バーゲンやってるの!
なるべく早く仕事を終わらせて!』
『ルーニャさん!仕事の依頼が五件ほどあるッス。
この家のポストに入れとくんで、後で見るッス。
僕はバーゲン言ってくるんで!じゃあ!』
『セキリュウさん、お手紙です。』
『パレッタ!後のことはお願い!
わたしたち、バーゲン行ってくるから!』
『わかりました。
しっかりと伝えておきますよ。』
『じゃあ!行ってくるッス。』
『いってらっしゃい。』
沈黙。
僕はつぶやいた。
「≪ビッグバーン≫、耐えられたね・・・。」
「にゃ・・・。」
「うむ。まあ、一人除いて、だが。」
『これが絆の力というものか!
そうか理解したぞ!
三次元の力の真理を!』
「・・・早いとこ、終わらせよう。
それで、みんなでキノコデパートのバーゲンに行くんだ。
最強の二の字を受け継ぐ者の攻撃を難なく防いだバーゲンに!!!」
5 minutes later
「あ~あ。負けちゃったね。」
「まっ、元の世界に帰れたんだからいいんじゃにゃいの?」
「・・・バーゲン、終わっていたがな。」
「仲間はずれ仲間はずれ仲間はずれ・・・
ウシャ・・・シャシャシャ・・・シャ・・・・・・シャ・・・。」
結果、闇を統べる者に僕たちは完敗した。
キノコデパートの商品戦略は、やはり闇には勝てなかったのだ。
ただ値下げするだけでは強大な暗黒には打ち勝てない。
もっと広告やメールを使って認知度をあげなければ、
人々は値段を下げたことに気づかないのだ。
それがクリスタラーに敗北した最大の要因だ。
もともと邪悪と戦うために作られたものじゃないけど。
要するに、白お化けに大ダメージを与えるには十分だったってことだ。
「ぼく、スーパーに宣戦布告しようかな・・・。」
「やめておけ。敗者のむなしいたわごとにしか聞こえん。
負け犬の遠吠え、だ。
覚えておくといい。
・・・手紙の中味は・・・おお!デパートのクーポン券だ!」
「依頼が五件。ルイージ、お願いにゃ。」
「え、この後さらに?」
「社員を過労死寸前まで酷使するのも社長の役目にゃ。」
「それ、ちょっと違わない?」
これだけ体を動かしたのにもかかわらず、時計は正午を差していた。
一日が・・・長い・・・。