フゥルの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

風上、再び 起 合作小説

翼をください』という歌がある。

富や名誉よりも翼を広げて空に飛び立ちたい、という切実な思いを歌った曲だ。

私はその翼というものを背に宿していた。

 

人の姿。翼をもつ姿。二つの姿を行ったり来たり。

 

しかし、歌に歌われているような自由は私にはなかった。

少しでも規則に逆らって空を飛べば、交通規制だの何だのと呼び止められる。

 

だから私は遠く遠くに飛んだ。

自由な空を求めて。

そしてたどり着いたのだ。

 

この町に。

魔法のない、この町に。

 

 

 

この町で以前出会った少女。

 

公園にたった一人立っていた。

 

彼女は風と友達だった。

風のことを「風さん」と呼んでいた。

 

楽しそうに風さんと話していた。

 

私はその少女に話しかけた。

 

 

 

彼女は親の話を全くしなかった。

 

友達の話をするときも、

彼女の満面の笑みの中に一滴の墨汁のごとき影が見え隠れしていた。

 

 

 

気になった。

 

 

 

だからこそ、こうしてあの少女のいる公園を空高くから見つめているのだ。

 

熱中症になってもいいこの暑さの中、

少女に気付かれないように空を飛びまわるのは少しつらい。

 

・・・町の中でやっていたらストーカーだな。

 

 

 

長い時間待った。

 

 

 

しかし、今もなお、女の子はたった一人で公園の中にいる。

 

私はとうとう我慢できなくなり、少女のもとへ向かうことにした。

 

 

 

彼女が私に気づいた。

 

この距離からでもわかるくらい驚愕している。

 

 

 

 

 

 

・・・逃げないでいてくれよ。