風上 結 Another side
「人って言われてもな・・・
私もよくわからないの♪」
「・・・そうか」
わからない、か。本当、世の中は分からないことだらけだ。まあ、それも結構楽しいのだが。
「ちょっとガッカリさせちゃった?」
「・・・いや。」
本当のことを言えば私の知的好奇心は悲鳴を上げていた。
気になる、気になる、と。
呼吸を意識して精神を鎮める。
わからなくてもいいじゃないか。
そう、自分に言い聞かせた。
この後は他愛のない話をした。
まあ、私にとっては、だが。
決して一般的な「他愛のない」という意味ではないことを言っておく。
内容は想像してみてほしい。
「ねぇ、もう帰っちゃうの?」
「あぁ、まあね。」
「・・・んー、しょうがない!!
また会おうね!!絶対ね!!」
「うむ。また来るとしよう。
お嬢さんにも会いたいからね。」
「・・・!嬉しい!!」
彼女は大いに喜んでくれた。
私の予想の範疇を越えて。
私は喜びかたに一抹の不安を覚えた。
なんだ?この、やるせない、哀しい気持ちは。
「またね♪」
「また会おう」
私は彼女に背を向けた。
また、会おう。
いや、会うべきだ。
私の頼りにならない勘が珍しく働いた。
とりあえず、この場を去ろう。
頭を整理した方がよさそうだ。
彼女と出会えたおかげで今日は十分すぎるほど充実した。
背後をちらりと振りかえる。
少女はもういなかった。
私は周囲に誰もいないことを確かめ、決められた旋律を口ずさんだ。
さあ、飛ぼう。
どこまでも。