フールの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

ルイージの小説 黒髪の少女

 

 

彼の拳を掌ではじき、こめかみに向かって足を振り上げる。

彼は背中が地面に着きそうなくらいのけぞり、

蹴りをかわすとともに体が戻る反動を利用しわたしの腹部に両手をめり込ませた。

 

まずわたしの肋骨がきしみ、次に内臓が悲鳴を上げ、痛みは背中を突き抜けた。

 

何本もの樹木をなぎ倒しながらわたしは後ろに吹っ飛んだ。

 

 

 

仲間も友達も家族も、もう諦めた。

後戻りはできない。

 

 

寂しい・・・。

 

すごく、寂しい。

 

 

 

わたしを受け止め、へしおれた木を背に左足を一度引いて力を溜める。

そして向かってきた彼に突き出した。

 

拳と蹴りが衝突する。

 

衝撃が周囲に拡散し、放射線状に地面にひびが入った。

足が砕け散らないのが不思議だった。

 

わたしは空中を舞い、何とか着地。

一方彼は地面を板チョコのように割りながら不時着した。

 

間をおかずに彼に追撃を試みる。

 

肩の後ろまで右腕を引き、彼に向って跳ぶ。

彼も炎を纏った腕をわたしに向けてきた。

 

拳を突き出せば奥にある幹に後が付く。

拳を受け止めれば拡散したエネルギーが地面を裂く。

 

一撃一撃が必殺。

 

わたしの体は足を、拳を交えるごとに削れていった。

 

 

 

体が溶けるほどのこの想い。

わたしにはもう、あなたしかいない。

 

 

・・・でも、つらい・・・よ。

 

 

 

彼の足がわたしの頭にぶつかった。

恐ろしいほどの打撃だった。

首が吹っ飛ぶかと思った。

それでもわたしは前を向き、後頭部を狙って蹴りを出す。

かわされたのを確認してからそのままの流れで足払い、

跳び回し蹴りへと技をつなげた。

そのいずれも彼は軽やかにかわし足の下をくぐり、

お返しと言わんばかりに肘を突き出した。

 

わたしは熱いものを吹きだし、地面に伏せる。

 

 

 

『君を傷つけるものから僕が守る。』

 

 

 

これがあなたの言う『守る』ということなの?

わたしを何から守っているの?

彼の言うわたしを『傷つけるもの』とは何なの?

わたしを傷つけているのはあなた自身だというのに。

 

 

今までの思い出は嘘だったの?

あの笑いは偽りだったの?

全部全部、わたしの夢?

 

一人牢獄で見ていた儚い夢?

 

・・・教えて・・・。

 

 

 

両手に滴る血。

 

気管が角笛のようにヒュー、ヒューと唸っている。

 

わたしの白い身体には無数の黒い痣が浮かび、

舞い散る木片や岩によって無数の切り傷を成し、

白いドレスは血の色で醜く染まった。

 

 

 

なんでこんなことをしなくちゃけないの?

なんでわたしは彼と一緒にいちゃだめなの?

 

わたしは彼のこといじめたくない。

なのに・・・。

 

 

 

折れそうになっている闘志をふるい立たせ、彼と格闘戦を演じる。

線香花火のように腕から血しぶきが舞う。

手の表皮がすりむけていく。

殴り合いながらすさまじい速度で天地を駆ける。

 

上に森が見えた。

 

わたしは彼のあごを狙い、腕を動かす。

彼はそれをいとも簡単に見切り、

炎を纏った手で逆にわたしのあごを狙ってきた。

防御が間に合わず、反射的に左手で下顎を庇う。

恐ろしい音を立てて左手があらぬ方向に曲がった。

 

 

 

寂しいよ・・・。

苦しいよ・・・。

痛いよ・・・。

 

 

お願い。

 

わたしを撫でて。

いつもそうしてくれたように。

 

あなたになでられるとすごく幸せだった。

春風の吹く、お花畑にいるみたいだった。

苦しいこと、いやなこと、何もかも忘れられた。

 

ずっとずっと、愛でてほしかった。

 

 

 

右足で反撃を狙うも彼の左脇にすっぽり包まれ、

そのまま稲妻が走る右手によって神経を焼き切られた。

「あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」

あまりの苦痛に悲鳴を上げる。

翼をばたつかせ無理にでも彼の支配から逃れようとした。

足の何かがむけてずるりと解放された。

 

右足の感覚がなくなった。

 

口にはもはや血の味しかせず、

口元にあふれ出てくるのを感じる。

 

 

 

わたしの希望によって、わたしが壊れていく。

 

 

それでも、あなたはわたしの希望。

 

 

 

左足を地面に差し込み固定し、次の一撃を打つ。

右手が彼の頬に吸い寄せられる。

彼の拳もわたしの頬を捉えていた。

 

わたしたちは磁石が反発するがごとく一気に宙に放り投げられた。

それに合わせ、竜巻に巻き上げられるように樹木が砕け散っていく。

 

背中に強い風を感じながらわたしは羽根のように空を散歩する。

 

一瞬真っ暗になった。

次の瞬間には翼を広げ、地面に落下するのを防ぐ。

 

みんなの思いを背負った彼は残酷なほど綺麗な顔をしていた。

 

 

わたしは手に力を入れる。

 

握りこぶしを作り、彼に想いを伝えようとする。

 

 

しかし、何も起こらない。

 

 

何事かと右腕に目を移したときに見えたのはただの虚空。

あるべきはずのものがなく、

代わりに血の涙が地面に向かって滴り落ちていた。

左手は力なく垂れて動かない。

 

次に足を動かそうとした。

足は赤黒く染まり、すでに機能を停止していた。

 

翼は古ぼけた扇子のように穴だらけになっていた。

 

 

目の前に彼の手の平が見える。

バチバチと唸る稲妻の音は終焉への導火線に聞こえた。

 

 

 

さようなら。

わたしの愛する人。

 

 

 

目の前が真っ白に包まれ

 

涙すら焼け散り

 

そして

 

 

 

全てが無になった。

 

 

 

 

 

・・・声が・・・聞こえる・・・。

 

 

 

 

 

『僕が守ってやる!』

 

『僕が君の・・・居場所になってやる!』

 

 

 

 

 

 

・・・う・・・そ・・・つ・・・き・・・