ルイージの小説 ピュアハート
わたしは彼の≪サンダーハンド≫を、手をつなぐかのように受け止めた。
雷の手
≪ヌイ トリトルア≫
セキリュウを感電させた強力な電流が彼の体内で暴れまわった。
叫び声をあげる彼。
あと少し・・・。あと少し。もう少し!!
高鳴る想いを抑える。
動悸で心臓がはちきれそうだ。
とうとう彼は地面をなめることとなった。
地に顔を伏せた彼に手をかざす。
さあ、わかりあいましょ。
全てを・・・ね。
だが、突然謎の光が彼を包んだ。
魔法がその光によって阻まれ発動できない。
「・・・っ?!」
これは、何?
うっとおしい!
目ざわり!
消えろ!
苦し紛れにはなった≪ジェヘナン イグニス≫も謎の輝きによって消されてしまった。
忌わしい!
耳に何か雑音が入った。
木の揺れる音でも、彼の声でもない。
大勢の人の声。
これは祈りの声?
彼が勝つと信じて疑わない人々の光。
希望に満ちた想い。
彼を包む光は八つの『純粋な心』となり、彼に力を与えた。
勇気を、希望を、願いを。
彼に与えた。
瀕死だった彼は癒しの光に全てを取り戻し、立ち上がった。
全部うまくいっていたのに、邪魔された。
彼と一緒に慣れるところだったのに。
誰に?
この世界に。
・・・そんな世界!
消えてしまえぇ!!
想いを爆発させる寸前に心の中でもう一人の私が言った。
それで本当にみんなに勝てるの?
純粋に力を求めた者、闇そのものともいえる存在、
圧倒的な力差があるにもかかわらず彼は全て打倒してきた。
みんながいたから。
どんなに強大でも一つの力には限界がある。
彼は一人で戦っているのではない。
何千、何万という人々と共に闘っているのだ。
常識的に考えて勝てないのは当然なのだ。
わたしは考えた。
わたしが彼に想いを伝えるには、わたしが勝つためにはどうすればよいのか。
わたしにとって・・・
どんな力でも消せないモノ。
この世界の誰にも負けないモノ。
親友の命よりも重いモノ。
それは!!
わたしは立ち上がった彼の瞳を見つめた。
確固たる決意を眼光に宿していた。
彼には全てを背負う覚悟がある。
彼は静かにルーニャのそばに歩み寄り、彼女の体を持ち上げた。
そしてゆっくりと折れた巨大樹に寄りかからせた。
彼は想いを断ち切るようにわたしのほうを向いた。
「・・・君には驚かされっぱなしだ!」
≪鉄斬光≫
≪ファイアージャンプパンチ≫
地面と空がぐるぐる回転している。
連続で逆上がりをしている気分だ。
地面がどんどん離れていった。
背中に力を入れ、何とか体の回転を止める。
その時、背中に着いた軽いものが自分の目に入った。
赤黒い翼・・・。
彼が地上から大きくジャンプし、追撃を狙ってきた。
右腕が光り輝いている。
わたしは手をかざそうとした彼に対し右足を垂直に振り上げ、
そして思いっきり振りおろす。
ちょうど跳んできた彼の頭上に足がめり込んだ。
撃墜された配管工は森の中に落下した。
わたしは翼をはばたかせ彼の後を追った。
森。彼と散歩をしたのを再び思い出した。
キノコ狩り、楽しかったね。