風上 転 合作小説
転
「あ・・・あなたは何をしているの?」
そう返してきた少女の声は少々上ずっていた。
知らない人にいきなり話しかけられたのだ。無理もない。
「久方ぶりの休暇をもらってね。散歩をしていたんだ。
まあ、夏の暑さにすぐばててしまったけれど。」
一応若いといわれる年齢ではある。正直、情けない。
私の声を聞いた少女は少し嬉しそうに答えた。
「風が吹いてほしくない?」
「まあ、な。」
頭が暑さでもうろうとする中、彼女の質問の真意に見向きもせずにおぼろげに答えた。
しかし、少女は私の頭にかかる靄を文字通り吹き飛ばした。
「わかった♪風さん呼ぶね♪」
・・・あれ、風って意図的に呼べるものだったか?
気圧や気流の変動で起こる自然現象だったはず。
そんなことができるのは大昔の神様か、大型扇風機だけなハズだ。
ブワッッ・・・!!
風・・・というよりも暴風である。
スズメが逆方向に空を飛んでいたなら間違いなく押し戻される程の風だ。
思わず手で顔を庇った。
「・・・弱められるのであれば、弱めてくれないかなっ!」
・・・フワッ。
どうなるかと思った。こんなことは科学雑誌に一言も書いてなかった。
―魔法なんて存在しない―
―事象を細分化していけば化学ですべてを証明できる―
彼女はそんな考えを一発で見事に打ち砕いてくれた。
どうしようか?
私は幼い瞳を凝視した。
いたずらをした後のくすぐったい笑みが少女の口元に現れていた。
人が理解を越えた物事を信じなくてはならなくなったとき
畏敬の念を示すか?
それとも無視か?
どちらもつまらん。
「風とは一体どんな『人』なのだ?」
未知の発見に好奇心はつきものだ。
少なくとも私は、な。
Next Magさん