フールの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

ルイージの小説 40 第八章

彼は『それ』が閉じ込められている氷柱へ駆けた。

そして柱の前にたどり着くと両手を腰まで引き

そして・・・

 

 

・・・?

 

 

彼は腰に手を引いたまま止まってしまった。

 

「どうしたの!早く!」

 

わたしが急かしても彼は動かなかった。

敵に何かされたのか?

わたしは彼を助けに氷柱へ飛んだ。

そして彼の横に着地。

彼の横顔を見た。

 

わたしは素直に驚いた。

 

苦悩に満ち、眉間にしわを寄せ、目を見開き、全身を震わせ、

止めを刺すかどうか迷っていた。

あまりにも凄惨な顔つきだった。

 

ルイージ?」

わたしの声を聞き全身を強張らせてから彼がこちらを向いた。

一種の恐怖のようなものが彼の顔にこびりついていた。

 

彼は何と戦っているのだろうか。

目の前にいる『それ』以外の、

もっと恐ろしいものと彼は戦っているような気がした。

 

「ス・ピ・ネ・ル。」

彼はわたしの名前をゆっくりと口から漏らした。

暫く驚愕の顔のまま彼は固まった。

そしていきなり意を決したように硬い表情になり、

わたしにこう言い放った。

 

「ぼくは君を信じるよ。」

 

≪コネクション スピリトゥス≫

彼の声を聞いた直後、

わたしの目の前が急に暗転した。

 

 

 

ここはどこ?

 

何も無い。

 

真っ暗。

 

自分の体すら見えない。

 

完全な闇。

 

何が起こったのか理解できないままわたしは叫んだ。

「誰か、いませんか?」

誰も返事をしてくれない。

 

どうしよう。

何があったのだろう。

 

とりあえず、深呼吸を試みる。

数を重ねるうちに頭に血が回り冷静になってきた。

 

瞬間移動系の魔法でどこかへ飛ばされたのか。

幻術とか何かを受けた?

それとも単に目と耳を塞がれただけ?

とりあえず脱出を試みた方がよさそうだ。

 

一歩踏み出してみる。

大丈夫、地面はちゃんとある。

壁もない。

 

もう一歩踏み出したところで一気に景色が変わった。

 

 

 

見覚えある場所だ。

なんで、ここに飛ばされたのだろう。

 

わたしたちの家が目の前に立っていた。

玄関の扉が眼前に存在している。

ただ、いつもと違うのはすさまじい大雨だということ。

雲によって太陽が隠され、昼のはずなのに夜みたいに暗い。

 

扉が開いた。

 

中から出てきたのは

ルイージ!」

扉から出てきた彼はわたしを無視し、直進してきた。

 

ぶつかる!

 

「何を考えて・・・?」

 

彼がわたしをすり抜けた。

彼は今、わたしの後ろを歩いていた。

映像?幻覚?

他に当てもないので彼に付いていくことにした。

 

 

しばらく山道を進むと街道に出た。

申し訳程度に街灯が灯っていたがそれでも暗い。

彼以外、誰も人はいない。

隙間なく雨音が響き渡る。

 

そんななか時々轟音とともに雷が光を発している。

 

よく見ればわたしの体を雨がすり抜けていた。

始めに気づくべきだった。

自分かこの世界のどちらかがあるいは両方とも幻影なのだ。

そんな自分の不注意を思いながら彼の奇行を分析していく。

 

 

そう、おかしいのだ。

 

 

散歩にしてはあまりにも重い足取りで

一歩一歩何かを踏みしめるように歩いていた。

 

下を向きポケットに手を入れてそして何より傘を持っていなかった。

 

ひときわ大きな爆音がわたしの鼓膜を刺激した。

近くに落ちたわね。

 

彼は幽霊のようにおぼつかない足取りで街路からはずれ、

音のしたほうへ引き寄せられていった。

 

森の中へ入り視界はさらに悪くなる。

 

街灯もない暗闇の中を彼は進んでいく。

 

哀愁が漂うその背中を見つめながらわたしは彼の後を追った。

 

 

やがて開けた場所に出た。

 

立ち止まった彼の隣で辺り様子を見る。

 

そこには一本の老木があった。

太い幹は雷の衝撃を受けて

引き裂かれ、焼かれ、ただれていた。

 

なんだろう。

幹の下に生白い何かが転がっていた。

 

「・・・っあ・・・!」

 

そのものを見たとき眼球はガラス玉のようにその動きを止めた。

口はだらんと開けっ放しになり、

驚きは全身を貫いた。

 

体を丸め、身には何もまとっていない。

まるで、犬のように。

 

アレは何?

認めたくなかった。

こんなの違う!

 

わたしはどうにか顔を回し彼の顔を覗いた。

助けを求めた。

彼に。

 

 

でも、彼もわたしとあまり変わらなかった。

目の前のものを必死に否定しているようだった。

 

わたしはものすごい嫌悪感に駆られながらも

呪いをかけられたように打ち捨てられているモノを見た。

 

 

彼は一歩、また一歩と砂漠で水を求める亡者のごとく歩み始めた。

止めようとしても彼の体をわたしの手がすり抜ける。

 

彼はとうとう捨てられているモノの目の前にたどり着いた。

一方わたしは足をせわしなく震えさせたまま動けなかった。

 

 

彼は立ったまままず髪を見た。

雨に濡れて艶やかに光るその髪を。

 

そして次に顔を見た。

髪のカーテンに隠れている見えない瞳と目を合わせ、

頬っぺたをまるで絵画でも鑑賞しているかのように隅々まで確かめた後、

首に目をやり、

そして止まった。

 

凍りついた。

見てしまったのだ。

全身に刻まれた傷を。

痛々しい、あまりにも忌々しいそれを見て彼は固まってしまったのだ。

 

 

そのまま消して短くない時間が去ったあと

彼はようやく人間らしい感情を取り戻したのだろう。

 

「あ・・・ああっ。」

 

天を仰ぐように泣き崩れた。

 

彼は地に膝を着いた。

そして彼の顔が倒れているモノの顔に引き寄せられる。

 

その後の彼は早かった。

 

呼吸音を聞き取ったのだろう。

 

彼は彼だった。

すぐさま幼い体を背負い、

立ち上がり、

家へ向かって走り出した。

 

 

 

 

彼は、背負った。

彼は、帰った。

雨は、止まない。

 

 

 

ルイージの小説

To Be Continued