フールの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

ルイージの小説 34 第七章 宝石がために鐘はなる

 

 

「またセキリュウ、出かけるの?」

 

「すまない。

ちょっと見ておきたいものがあってな。

いつも通り夕方までには帰る。」

 

「お土産話、またきかせてね。」

 

 

 

「スピネル。」

わたしを呼ぶ彼の声。

 

 

そうだ、敵の本拠地のど真ん中で眠ってたんだ。

 

「もっとゆっくり眠らせてあげてあげたいんだが。」

申し訳なさそうにする赤毛の男にわたしは微笑み

「大丈夫、疲れはとれたよ。」

と言葉を返す。

 

ルイージ、先に休んでくれないか?

スピネルにちょっとした用事があるのでな。」

「恩に着るよ。セキリュウ。」

彼は眠り始めた。

 

旅に慣れているだけあって横になってから数分としない間に寝息を立て始めた。

 

セキリュウがわたしを見つめた。

そういえばこうして面と向かって二人きりで話すのは久しぶりだった。

 

暫く二人で意味のない、けれども楽しい雑談を繰り返した後、

セキリュウがふと、切り出した。

 

「ちょっと手足を見せてくれないか。」

セキリュウは一瞬苦虫を噛みしめたような顔をした。

そして、苦しげに言葉を発した。

「傷の治り具合が見たい。」

わたしは静かにうなずいた。

 

セキリュウはわたしの肢体をまるで赤子をあやすような優しい手つきで扱った。

この光景は彼にはとても見せられない。

セキリュウは一通りわたしの体を眺めた後、

傷について質問し評価を下した。

「完治まで後数日だ。

この世界のキノコは傷に対して素晴らしい効果がある。

ルイージは恐らく選りすぐりの食材を日々の食事に入れていたのだろう。

高等魔法で受けた傷がこの速度で治るのは異例だ。

まあ私達の世界では、だが。」

 

わたしは静かに眠っている彼を見つめた。

見えない所でも私に対する気遣いを決して忘れない。

その優しさにわたしは感謝した。

 

心から。

 

言葉ではなく背中で語る。

わたしたちの世界も彼のような人ばかりだったらいいのに。

 

 

わたしの空想を遮ったのはセキリュウの質問だった。

「スピネル、二者択一の質問だ。」

タキシードを着た男は重々しく言い放った。

「元いた世界に帰りたいか?」

 

 

 

・・・。

 

 

 

・・・。

 

 

 

この世界に来てからもうすでに一か月以上経っている。

 

この世界は

温かく、

楽しく、

美しく、

優しい。

 

わたしのいた世界とはまるで違う。

わたしは比較的裕福な家庭に生まれ、学校に行き、友達と遊び、暮らしていた。

 

その一方でいつもどこかで殺し合いが起き、

テロが起き、

誰かが飢えで、

病気で、

差別で苦しむ。

 

世の中には地獄以下の場所で暮らしている人が沢山いる。

そんな世界。

 

高い建物が立ち並び、どんどん自然が破壊されていく。

そんな世界。

 

金がなければ何もできない。

そんな世界。

 

果たして、あの世界に帰るのが得策と言えるだろうか。

 

この世界はわたしのいた世界に比べると天国。

 

そう言って差し支えないほど幸せに満ち溢れている。

この世界に住んで気が向いた時に向こうの世界に行く、

それでもいいかもしれない。

 

「答えない、か。まあいい。

ルイージ、一応、時間だ。

まだ夢の中を冒険していたいか?」

彼は一瞬で体を起こし目覚めた。

額に大粒の汗が浮かんでいる。

「・・・大丈夫?悪夢でも見たの?」

彼は首を振り

「いいや、何を見たのかも覚えていない。

ただ、なんか、嫌な感じだった。」

セキリュウが笑った。

「こんな場所で安眠できる方が凄いと思うが。

では、次は私が悪夢を見るとしよう。」

 

セキリュウは眠りに落ちた。

そういえば二人はわたしの眠っている間何を話していたのだろう。

 

「君たちの世界の話さ。スピネルは?」

「・・・わたしの体の傷の事。あと数日で治るって。」

ルイージはニコッとわらって、

「本当に!よかった。

もしかしたら治らないかもしれないって、心配だったから。」

わたしも彼の笑みに応える。

「・・・全部ルイージの看病のお陰。

・・・食事にまで気を使って、本当にありがとう。」

彼は照れ臭そうに帽子を深くかぶりなおして

「どういたしまして。」

と、優しい声でわたしにささやいた。

 

「・・・わたしたち、友達じゃなくて、親友って言ってもいいと思う。」

フフッとわたしは微笑んだ。

「親友、か。確かにいい響きだね。」

二人で笑い合う。

ひとしきり笑い合った後、

セキリュウの存在に気付き二人揃って口を押さえた。

彼は帽子の中から缶コーヒーを取りだし、蓋をあける。

 

「・・・そういえば、わたしを森の中で見つけた時・・・。」

彼はコーヒーを口につけた。

気になっていたこと。

あの時、彼が言うにはわたしは・・・。

「・・・わたしの体、どこまで・・・見たの?」

 

ゴハッ。

 

彼はコーヒーを噴出した。

「・・・大丈夫?」

彼は右手でハンカチを手に取り、

左手の手のひらをわたしに向けた。

暫く待った後、気まずい雰囲気のなか、彼が口を開いた。

「・・・少しだけ。」

わたしは小さくため息をついた。

セキリュウにすら見られてないのに。

 

まあ、失った物以上に彼からもらった物は多いから・・・いいの?

 

「・・・そう・・・そう・・・。

・・・非常事態だったから・・・ね。

許してあげる。

・・・次はないけど。」

彼はわたしの表情を見て恐れおののいた。

「ごっごめんなさい!!」

 

むくりとセキリュウが動いた。

「青年誌に出てくるような会話は止めろ。

興奮して眠れん!」

「・・・ごめん。」

 

謝る。

 

ルイージ、この戦いが終わったら続きを頼む。」

 

 

 

そしてあきれた。

 

 

 

ルイージの小説

To Be Continued