フールの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

ルイージの小説 32 第七章 宝石がために鐘はなる

道中は鐘の音の影響でお化けたちで溢れかえっていた。

 

わたしたちはゴロツキタウンとウスグラ村を経由し、

オドロン寺院にたどり着いた。

 

 

混乱の中心にある寺院は、正直寺院というより廃墟という名がふさわしい建物だ。

塗装ははげているしところどころ穴があいている。

そして黒い霧が寺院の煙突から上から噴き出していた。

夜のような漆黒の中窓は紫色にあやしく輝き、見る者をぞっとさせた。

 

魔法で懐中電灯ほどの明かりを作り出しているもののひどく頼りない。

敵に気づかれないためとはいえ、

それでも首をかしげるくらい心もとなかった。

 

セキリュウは元々竜族であるから眼は人間に比べると異様に発達している。

山に穴をあけてそこに住む竜族たちは

必然的に暗い所にいる事が多くなるので視力は高い。

一方わたしと彼は魔法で無理やり眼を良くしている。

それでも暗いものは暗い。

この暗闇の発生源だけあって、より一層暗い。

 

そして寒い。

 

セキリュウがそうだ、と言ってポケットの中から何かを取りだした。

「プレゼントだ。受け取れ。」

 

彼に手渡されたもの。

それは

「二対の牙か。これをどう使えば?」

 

セキリュウの牙。

 

同じ人の牙を持つ人であれば、魔法で通信ができる。

とても強いつながりを持っているから、通信妨害は通じない。

そして、所有者以外は使うことが出来ない。

 

「スピネルとルイージで一つずつ持て。

両者が望むのであればいつでも話が出来る。

・・・一つ100万コインはする貴重品だ。

大切に扱え。」

無くしたら彼の家計はおそらく・・・壊滅。

彼は久方ぶりの笑みをもらし、

「ありがとう。」

と言葉を添えた。

 

必ずありがとうを欠かさない彼。

わたしの世界では何かしてもらっても何も言わず立ち去ってしまう人がかなりいる。

見習ってほしい。

 

「さあ、行こう。スピネル。

もう、僕たちがやるしか無いんだ。」

 

大丈夫かな?

不安な気持ちを無理やり理性で押さえつける。

わたしたちが失敗すればこの世界は暗闇に包まれたままだ。

 

 

わたしに恐ろしいほどの『使命』という名の重圧がのしかかってきた。

 

 

 

「・・・吹き抜けね。」

広間の左右に暗黒色の柱に立ち並び、その上に通路が通っている。

ただし、所々通路は途切れていた。

手すりも申し訳程度しか残っていない。

地面にはゴシックホラーを彷彿とさせる藍色のカーペット。

数メートル先に左右に扉がある。

更に奥には半円形に上り階段が四段あり、

星を模した石像があった。

二階の通路に添うように左右対称に張られたステンドグラスには

布お化けの姿がおどろおどろしく書かれていた。

 

「趣味の悪い寺院だ。」

彼の言うとおりね。

「・・・ルイージ、早くシロスケを倒してここから出よ。」

「私としてもあまり長居はしたくないな。」

 

だが、現実はそうはいかなかった。

左右の扉の前をテレサがふさぎ、

仕方なく奥の星型の石像を調べたら落とし穴に落とされ、

地下室を歩き回った挙句、

道端に落ちている箱を開けてみたら、

数百のテレサが飛び出してきたり、

一階に戻ったら左右の扉をふさぐテレサが消え去っていたので中に入ると

鍵の付いた扉やスイッチや怪しい宝箱が転がっていたり、

わたしはこんなに手の込んだ仕掛けを作るとはよほど暇なのかな、と

考えさせられるほど寺院の中を歩きまわされた。

 

・・・テレサと遊べたのはちょっと嬉しかった。

 

ちなみに彼はテレサに心を砕かれ顔色がテレサ並みに白くなっていた。

セキリュウは全く動じず平生通り悠々とわたしの隣を歩いている。

 

二階ラウンジを抜け鍵のかかった扉を開けると、

螺旋階段が現れた。

 

「ようやく、この寺院の主と対面できるな。」

セキリュウが揚々と言うのに対し、

「もうテレサはこりごりだよ。」

緑の冒険家はうなだれた。

「積極的なアプローチをされていたからな。」

「・・・ルイージの後ろに憑いていたの、黙ってたくせに。」

セキリュウは豪快に笑うと、

「スピネルも面白がっていたじゃないか。」

と、わたしに笑顔を向けた。

 

間隣に今にも死にそうな緑の背後霊がいるのに。

 

「もう・・・止めてくれ。」

ルイージは力なくそういうとしゃがみ込んでいじけてしまった。

「あ~、悪かった、悪かった。」

謝る態度に見えない。

セキリュウはあまりにも軽すぎる謝罪をした後、

急に真顔になり声色を変えた。

 

「行くぞ。

この先、何が待ち受けているかは分からん。

ルイージ、立て。

お遊びは、ここまでだ!」

 

酷な要求ね。

 

彼は言われるがまま立ち上がった。

眼に生気が戻っている。

「ああ。行こう。

スピネル、セキリュウ。」

 

立ち直りが早い。

本気になったんだ。

彼を先頭にわたし、セキリュウの順番で螺旋階段を上る。

 

そして、わたしの息が上がる頃、ようやく階段を登りきった。

 

 

「もう、後戻りは出来ない。」

 

彼は扉のノブに手を触れ、そう言った。

「いいや、後戻りするための道は私が確保する。

後ろは任せろ。

お前たちは前だけを見ていればいい。

私が背後を死守する。」

わたしも決意を述べる。

「・・・二人がいればわたし、どんなことがあっても前に進める!」

彼は今までにないほど輝いていた。

幾年もの時を経て錆びついた剣が一気に輝きを取り戻したかの様に。

笑顔が眩しい。

「楽しいな。

何年振りだろう、この感覚。未知の世界。

わくわくする。

セキリュウ、スピネル、覚悟はいいかい?」

 

わたしたちは大きく頷く。

 

わたしたちが勝てば日の光が大地を照らし、

みんなが元に戻る。

みんなを救うという重圧も、今では心地よかった。

 

「真の冒険の始まりだ!」

 

 

鐘の音がわたしたちを鼓舞するかの様に響き渡った。

 

 

 

ルイージの小説

To Be Continued