フールの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

ルイージの小説 24 後編 第五章 激闘の宝石

いつものテーブルで彼女・・・ルビーと向き合う。

ルビーが先に口を開いた。

「あなたは、本を読む?」

いきなりこんなことを聞かれた。

質問の意図がわからない。

とりあえず答える。

「ああ、読むけど・・・。」

僕の答えに対し小さく頷き、ルビーは妙なことを語りだした。

 

「恋愛小説において大切なのは過程。

愛し合うものたちが引き裂かれるまで、

あるいは結ばれるまでの過程を読者は楽しむの。

大切なのは結果ではなく、道のり。

その後二人がどう愛し合うかなんて登場人物の勝手よ。

どう出会うのか。

どうやって壁を乗り越えようとするのか。

あるいは恋のライバルにどう立ち向かうのか。

それとも逃げるのか。

どうやって告白するのか。

そういった恋が成就、あるいは破綻するまでの過程、

それにページのほとんどを使うの。」

 

へ~と感心しながら

僕は話を聞いていた。

僕はあまり恋愛小説を読まないから詳しいことはわからない。

でも、確かにそういう恋愛ドラマなんかは、

告白したところで終わりになったりする。

その営みが描かれることは少ない。

書かれたとしてもほんの一瞬だ。

 

「だから、もし、スピネルを愛するのであれば

過程を重んじなさい。

どんな愛の形であれ・・・ね。」

「僕はそんな・・・」

僕は一応反対してみる。

無駄だとわかっていても。

 

「見ていたよ。

プロミネンスと戦っているところ。」

なっ。

僕が驚くのを見て、ルビーはイタズラっぽく笑った。

ルイージの戦い方を見ていれば誰でもわかるよ。

自分の体よりスピネルの体。

何においてもスピネルが優先。

まるで・・・大切な宝石を守るように。」

 

恋する乙女がラブストーリーを語るときのように、

彼女はときめいていた。

僕はそんなルビーから目をそらす。

 

 

無理だった。

 

 

彼女の瞳がそれを許さなかった。

「認めたくないの?何で?」

彼女はテーブルに乗り出し、僕に迫ってきた。

「認めたくないも何も、僕とスピネルは単なる友達だよ。

それ以上でも、それ以下でもない。」

 

僕の言葉に対しルビーは首をかしげた。

 

「友達?・・・そう、友達・・・。ふ~ん。」

彼女は納得したように何度も頷いた。

「まあ、いいよ。

ルイージがスピネルをどう思っているのか。

それを確認したかったの。」

あの誘導はすべて僕の本心を探るためのものか。

 

でも、

 

「なぜ?」

 

アハハハッと彼女は声を上げた。

「そうだ、話して無かったね。

わたし、スピネルのおかあさんなの。

娘を預けている人がどんな人なのか、実際に会って知りたいのは当然でしょ。」

 

やっぱり、スピネルの母親か。

 

「実際に僕に会った感想は?」

 

彼女は微笑みながら答えた。

「わたしの夫と張り合えるくらい素直で愚直で不器用で優しい人ね。

娘を任せられる人だってわかった。」

 

どうやら褒められているらしかった。

 

「あなたのわたしに対しての第一印象は?」

「摩訶不思議、純粋無垢。」

僕は嘘も何もつかず、素直に答えた。

 

僕の答えに彼女は

「ホンットーに素直な人ね。」

とコメントをくれた。

 

「さて、なんとなくルイージのこともわかったし、

お話しましょ!」

 

 

心はまるで少女。

スピネルよりも無邪気。

これで母親?

正直、精神年齢はスピネルよりも低そうだ。

 

「お話しするって言っても何について?」

ルビーは即答した。

「スピネルについて、何か変わった思い出とか、ない?」

 

まるでサーカスか何かをどきどきしながら待っている、子供のようだった。

そんな彼女に、僕はひたすらスピネルとの思い出を語った。

まあ、勿論全部話したわけではない。

スピネルの親とはいえ、

どこまで伝えていいかわからないので、話せることは

ごくごく一部だった。

それでも小一時間は話したような気もするが。

その間、ルビーはまるで夢物語を聞いているかのように、

時々フフフッと笑いをこぼしながら、楽しそうに聞いていた。

僕も思い出を語っているとき始めは顔をこわばらせていたが、

話していくうちに頬が緩みいつしか満面の笑みを浮かべていた。

 

「ありがとう。ルイージ

話してくれて本当にありがとう。」

僕が話し終えたときルビーは僕に拍手をしてくれた。

「普段わたしには見せないスピネルの一面が聞けてよかった。」

ウフフ、と笑い彼女は続けた。

 

「わたしたちは忙しくてしばらくスピネルに会えない・・・

・・・悔しいけど・・・ね。」

ルビーは顔を曇らせた。

 

その顔はスピネルそのものだった。

深刻な悩みを語るときのスピネルに。

 

「そう・・・ですか。」

僕は彼女になんと声をかけようか迷った。

僕がようやく言葉を見つけ口を動かそうとした瞬間、

彼女は僕の頬に両手を伸ばし軽く触れた。

僕は逃れようとしたがルビーから発せられる不思議な雰囲気に、

止められてしまった。

彼女はさらに、僕の耳元に彼女の唇を近づけた。

彼女の静かな呼吸音が聞こえる。

彼女の温かみのある細く優しい手のぬくもり。

僕の顔は高潮し息が止まり、手足が緊張で震えた。

 

 

 

スピネルを・・・

 

 

・・・よ・・・ろ・・・し・・・く・・・。

 

 

 

恐らく、

 

人生で聞いた中で一番甘く、

 

鎖のように重い一言だった。

 

 

言葉を言い終えるとルビーは僕を解放し、

元のようにイスにすわり、

何事もなかったかのように僕と向かい合った。

 

「浮気の可能性はなし、と。」

 

ぼそっと彼女が口から言葉を漏らした。

 

「貴重な時間をありがとう。

楽しかった。」

ルビーは太陽のような微笑を僕にくれた。

僕はまださっきの感覚が忘れられずおどおどしていた。

言葉を発しようにも声が出ない。

 

「可愛い人。

フッ・・・フッ・・・フッ。」

 

僕が慌てる様を楽しげに見つめる彼女。

僕は完全にもてあそばれていた。

 

「スピネルに嫉妬されちゃうから、わたしはお暇させてもらうわ。」

この家から出ようとドアノブに手をかけたルビーに、

僕は声をかけた。

 

「あの!」

 

その声にルビーは僕に振り返る。

目と目が合い僕はまた紅い瞳に釘付けになったが、

どうにか意識を振り絞り僕は彼女に言葉を投げる。

 

「なぜ、スピネルはこの世界に飛ばされたんだ?」

 

彼女は輝かしい微笑とともに

「みんな、信じていたから。」

と静かに告げた。

そしてドアノブをひねり闇の中へと消えていった。

 

 

僕には誰が何を信じていたのかはわからなかった。

しかし、スピネルの脱出にはセキリュウや、

ルビーの夫さんが関わっていることがわかった。

 

セキリュウと会ったとき、彼は時間がない、と言っていた。

恐らく救出作戦の決行の直前だったのだろう。

 

それにしても、なぜセキリュウは僕の心を試すようなことをしたのか。

 

仮に、あの時点で僕がスピネルをかくまう役に抜擢されていたとしたら、

理由はわからなくもない。

でもなぜ僕?

僕がスピネルを預かる保障はどこにも無かったのに。

まあ、結果的に今スピネルは幸せそうに眠っている。

 

 

僕もだんだん眠くなってきた。

 

夢の中で眠くなるというのも変だけど。

 

僕は寝巻きに着替えベッドの中へ・・・。

 

 

 

ルイージの小説

To Be Continued