フールの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

ルイージの小説 20 後編 第五章 激闘の宝石

ドッスンボルケーノは典型的な活火山だ。

年に一回大きな噴火がある。

内部は空洞になっておりドッスンたちの住処になっている。

とはいえ人前にはほとんど姿を現さない。

 

なお普通の人が火山内に踏み込むと、火山ガスと高熱に脅かされ非常に危険だ。

僕は『アツサヲガード』、『ドクヲガード』の

二つのバッジの効果で防ぐ。

一方スピネルは結界を張ってしのぐらしい。

 

 

今僕たちは山道を登っているところだ。

見渡す限りの灰色。

山は下から上まですべて無機質な岩で形作られていた。

栄養が少ないためか木は生えていない。

 

歩いてきた道を振り返ると、キノコタウンが遠くに小さく見える。

それくらい山肌は清涼としていた。

 

時々地震が起こり、ガスが地表から噴出す。

それらの音を除くとあたりは不気味なほど静かだった。

生き物たちはどこかへ避難してしまったらしい。

ネズミ一匹見当たらない。

 

 

「・・・静かね。」

スピネルが僕に声をかけてきた。

「僕たちのほかには誰もいないみたいだ。」

声がむなしく響く。

「・・・そういえば・・・ルイージ・・・。」

「なんだい。」

 

スピネルは重々しく口を開いた。

 

とうとう、あのことについて聞いてきた。

「・・・マリオとルイージ・・・あなた自身について教えて。」

 

僕が意図的に避けてきた話題。

僕が話すことを拒んだ話題。

今話すときが来た。

 

スピネルのお陰で僕は自分を赦すことができた。

 

だからもう、恐れはしない。

 

「マリオはキノピロが言ったとおり僕の兄さんだ。

世界を何度も救い、みんなに笑顔と勇気をくれた。

強さ、優しさ、勇気、

そういったものをすべて兼ね備えていた。」

スピネルは何も言わず聞いていた。

「兄さんはクッパを始めとするさまざまな強敵と戦って、

打ち勝ち、平和を守っていた。

 

始め僕は兄さんの活躍を手紙で読んでいただけだった。

兄さんの足手まといになるんじゃないか、

迷惑をかけるんじゃないか、

顔に泥を塗ってしまうんじゃないか。

そんな思いから、僕は進んでお留守番役を買って出た。

 

でもそのうち兄さんが『一緒に』って、

僕をあっちこっちに連れまわした。

冒険では足手まといになることも多かったけど、

楽しかった。

すごく楽しかった。」

 

語っているうちに目じりが熱くなってきた。

 

「冒険だけじゃなくってスポーツに仕事、

ゲームにパーティ。

いろんなことを二人で楽しんだ。

いつも二人だった。」

 

深呼吸をして溢れんばかりの感情を抑える。

 

 

 

「でも、いなくなった。」

 

 

 

スピネルが無言で俯いた。

 

「あまりにも辛くて悲しくて。

それから三年、僕は死んだように生きてきた。

そんな時、スピネルがやってきたんだ。」

 

スピネルが体をビクッとさせた。

 

「僕はスピネルに『生きる希望になってやる』って言ったよね。」

 

彼女は無言で頷く。

 

「僕はそういわなきゃダメだったんだ。

誰かが僕を絶対的に必要としている、

そう思わなきゃ生きていられなかった。

生きる理由を作るために、僕は無意識にスピネルにあの言葉を放った。

スピネルのためじゃない、自分のために。

昨日の夜にわかった。」

 

「・・・。」

 

「何が『希望になる』だ。

希望が欲しかったのは自分自身なのに。」

 

僕の頬は涙で溢れていた。

 

「でも、そのお陰で今ここに僕がいる。

スピネルがいる。」

 

僕はスピネルに微笑みかける。

 

スピネルも僕に微笑み返してくれた。

 

「スピネルと接してわかった。

兄さんは僕に悲しんで欲しくない。

僕が思い出にすがって立ち止まって欲しくもない。

仮に僕が死んでしまっても、スピネルには元気でいて欲しい。

過去にすがって後ろばかり気にして前を見ない、

そんな風にはなって欲しくない。

僕が死んでしまったことを嘆くのではなく、

むしろその出来事を活かして、もっと楽しい人生をおくって欲しい。

 

 

思い出に笑い、

 

今の出来事に笑い、

 

明日を楽しみにしてまた笑う。

 

 

そうなって欲しい。

 

 

兄さんも、そう思っているはず。」

 

彼女はこれに対して一言だけ言葉を添えた。

「・・・わたしが死んでも前を向いていられる?」

「うん。」

もう迷わない。

人のために生きる。

その思いが、その人に届かなくても。

兄さんに教えてもらった。

涙をぬぐい、前を見る。

 

 

 

いつの間にか僕たちは山頂に着いた。

 

 

 

火口はキノコ城が丸々入ってしまいそうなくらい大きかった。

その火口から下を見下ろす。

すごい熱気だ。

僕は水筒の水を飲んだ。

そして改めて下を見る。

 

火口の外側から螺旋状に道が伸びている。

最下層を見ようとすると目がくらくらした。

深すぎて溶岩の赤いともし火がろうそくのように小さく見える。

かつて兄さんと一緒に来たときと変わりなかった。

 

 

「・・・今度は下るの?」

スピネルが僕に、間接的に疲労を訴えてきた。

かれこれ数時間歩きっぱなしだ。

休憩を挟んだとはいえ、少女にはあまりにも酷だ。

それに、スピネルにはこの戦いにおいて重要な役割がある。

 

「・・・僕が背負う。」

そういって僕はスピネルに背中を向けかがんだ。

「さっどうぞ。」

背中にいるスピネルの表情は伺いしれなかった。

「・・・お言葉に甘えて。」

っと、スピネルが背中に乗った。

遠慮しないことから、本当に歩き疲れていることがわかった。

 

・・・?

あまりの軽さに驚く。

 

顔を回してみると、カーバンクルの姿でスピネルは僕の背中に乗っていた。

「・・・この姿なら軽いし、小さい。

魔法でへばりつけるからルイージの両手も空く。」

浮いているよりもへばりつく方が魔力を使わないらしい。

豆知識がひとつ増えた。

 

さて、そろそろ行くか。

 

僕は足に喝を入れ、火口を下っていった。

 

 

火口の中は予想以上に熱かったが、

すぐに暑さは消えた。

スピネルが魔法で暑さを和らげてくれたのだ。

「・・・涼しくなった?」

僕は首を後ろに回してスピネルに微笑んだ。

「ありがとう、スピネル。」

 

再び前を向き、歩く。

時々道が途切れているところはジャンプで飛び越える。

そして道が無いところは登山用の道具を使い、頑張って降りる。

スピネルはその間震えたり、小さな悲鳴をあげたりしていた。

ちなみに僕は体力だけは並外れて自信があったので、

休憩を挟まず一気に下っていった。

 

 

このまま全てが順調に行くといいんだけど。

僕たちは行く末を案じながら

 

ひたすら下へと下っていった。

 

 

 

ルイージの小説

To Be Continued