フールの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

ルイージの小説 20 前編 第五章 激闘の宝石

第五章 激闘の宝石

 

「猫の手」で待っていたのは、カウンター奥のイスに頭を垂れて

出来の悪い人形のように全身脱力して、ぶつぶつ何かを口ずさみながら座っている、

ルーニャだった。

 

その異様な雰囲気に僕とスピネルはたじろいだ。

「・・・・・・お帰りにゃさい。」

 

こちらを見ないで「猫の手」の猫耳社長は挨拶した。

その声は鉛のように重かった。

「何かあったの?」

僕はとりあえず聞いてみることにした。

そっとしておきたかったが、

ルーニャがこのままだとこの会社そのものが機能停止してしまう。

「アタシ、だめにゃ。

社長として失格にゃ・・・。」

 

ルーニャがこれだけ落ち込むということは、

何かよっぽどのことがあったということだ。

ちょっとやそっとじゃ彼女は落ち込まない。

むしろ笑い飛ばすタイプだ。

 

「・・・・・・クリスチーヌ、ポコピー、おプク、ノコタロウ・・・」

社員の名前をルーニャはつぶやいた。

耳を澄ましてようやく聞こえるくらい小さな声だ。

 

 

「・・・・・・全員、病院送りにされたにゃ。」

 

 

僕たちは驚愕した。

今ルーニャが名前を挙げた四人は、

かつて兄さんとともに各地を冒険し数々の敵との戦いに勝利し、

世界の平和を守った実力者だ。

ちょっとやそっとのことで、

病院送りになるような人たちじゃない。

「何があったの?」

軽くルーニャに問いかける。

彼女は沈黙を返した。

 

しばらく待ってから

「何があったの?」

と、一度聞きなおした。

ルーニャは重い口を開いた。

 

「キノコ王国からの依頼。

活動時期でないのにドッスンボルケーノが突然、

火山活動が活発になった。

原因を究明して欲しい。

キノコタウン本部からポコピー、おプク、

ゴロツキタウン支部からノコタロウ、クリスチーヌ、

計四名を派遣。

 

最深部にて

原因と思われる巨大ファイアーパックンの亜種と遭遇。

不意打ちを受ける。

敵は強く善戦するも敗北。

辛くも生き延び近辺の病院で治療中。

命に別状なし。

なお、パックンとの意思の疎通は不可。」

 

ルーニャは事実だけを淡々と語った。

冷静さを失ってもなお、

端的で分かりやすい物言いは変わらなかった。

 

「・・・そいつを倒せばいい。

そういうこと?」

スピネルが口を開く。

ルーニャは肯定も否定もしなかった。

そのルーニャの行動に僕は多少の憤りを感じた。

「ルーニャ。

冷静にならないともっと多くの仲間が危険な目にあうぞ!」

ルーニャは僕の言葉にハッと顔を上げた。

 

 

目は赤く、頬に涙の跡がうっすら輝いていた。

「・・・そうにゃ。

異常事態のときこそアタシがしっかりしなきゃダメにゃ。」

何度も自分を鼓舞するように頷いた後、

ようやくいつもの調子を取り戻した。

 

さすがルーニャ。

立ち直りが早い。

 

 

彼女は笑顔になると

改めて僕たちに挨拶した。

 

「待っていたにゃ。

スピネル、ルイージ。」

 

僕たちもそれに答える。

 

「ただいま、ルーニャ。」

「・・・ただいま。」

 

そしていつも通り

ミーティングが始まった。

 

 

「さっきも説明したけど、

噴火の時期でもないのにドッスンボルケーノの火山活動が活発になって、

今にも噴火しそうにゃ。

原因は恐らく最深部にいるファイアーパックンの亜種。

その見かけからプロミネンスと呼んでいるにゃ。」

 

プロミネンスは太陽の周りで時々噴出す火柱のようなものだ。

ちなみに正体はガス。

 

「プロミネンスは

高い攻撃力と防御力を併せ持ち、

最高クラスの強さを誇っているにゃん。

他には無い特殊な能力もあってルイージとスピネルに頼むほか無いにゃ。

詳しくはクリスチーヌたちの報告書をよく読んで欲しいにゃん。」

 

僕はスピネルを見た。

スピネルは僕と目が合うと、了解の意味の頷きを返してくれた。

 

「わかった。引き受ける。」

 

今回ばかりはスピネルに頼るほかなさそうだ。

危険な目に遭わせたく無かったが、

僕が行くといったらスピネルも絶対についてくる。

 

スピネルは僕の最大の弱み

―かつて兄さんを失った僕がどんな気持ちで生きていたか―

を握っている。

だから、どの道断れない。

道はひとつしかない。

僕とスピネルでプロミネンスを倒し無事に帰ってきて、

ルーニャに『ただいま。』と告げるのだ。

たとえどんなにプロミネンスが強かろうが。

 

「危なくなったらすぐに逃げるにゃ。

倒すことよりも生き残ることを最優先にするのにゃん!」

ルーニャの警告に対し、

意外にもスピネルが僕よりも先に答えた。

「・・・私たちは必ず帰る。

何があっても。」

 

 

僕たちはルーニャの見送りを受けながら出発した。

 

 

 

ルイージの小説

To Be Continued