フールの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

ルイージの小説 16 前編 第三章 幸福の宝石

 

「・・・今日・・・書くことが沢山あるね。」

スピネルはまだ上機嫌だった。

 

日記を書く僕とスピネル。

一瞬静かになった。

最近、僕の日記はほとんどスピネルに関しての記録になっていた。

一日中行動を共にしているのだ。

そうなっても仕方が無い。

僕は日記を書き終えた。

 

 

まだ隣から紙にペンを滑らせる音が聞こえる。

邪魔するのも悪いので静かにその音を聞く。

カリカリ・・・と心地よい音が響く。

例のごとく光源はカンテラだけだった。

ぼんやりとしたオレンジの明かりと、

ペンを走らせる心地よい音が僕を夢へと誘った。

 

 

 

『たのしそうだねぇ、スピネル。

この調子でもっと彼女をハッピーにするんだ。

がんばってよ、ルイルイ君。』

 

 

 

「・・・ルイージ、こんなところで寝ちゃダメ。」

あれ、うたた寝しちゃった?

「起こしてくれてありがとう、スピネル。

ちゃんと地面で寝るよ。」

「・・・へ?」

「ごめん、聞こえなかった?」

スピネルは頭を斜めに傾けた。

「・・・地面で寝るって・・・どういう意味?」

 

 

あ・・・しまった。

 

・・・。

 

重たい空気が辺りを包んだ。

「・・・ルイージ、今までどこで寝ていたの?

・・・もしかして、床で・・・?」

スピネルが哀しみと驚愕の表情で、僕を見つめた。

 

どうしよう。

 

ばれた。

 

僕は取り繕いの方法を模索したが、見つからなかった。

僕は思わず顔を伏せる。

「・・・ルイージ、そんなことしていたら・・・カゼを引いちゃう。」

「うん。」

まさか、スピネルに説教されるとは。

「顔を上げて。」

僕は彼女の指示に従った。

とはいえ、スピネルよりも僕のほうが背は高いので、

多少は頭を下げている。

スピネルは不器用にニコッと笑うと

「・・・それがルイージなりの優しさ?」

と言葉を添えた。

僕は静かに頷く。

 

「僕のことは気にしないで。

何も考えなくていい。

気遣う必要も無い。」

 

僕はあでやかな黒髪の奥にある、

見えない瞳をとらえようとした。

次に、顔全体を見た。

彼女の顔はきれいな暁色に染め上げられ、

なぜか、さびしげに見えた。

 

「・・・わたしはルイージのこと・・・

どうでもよくない。

ルイージはわたしの希望・・・。」

 

 

この言葉に後悔したのは何度目だろうか。

 

 

向き合っているスピネルに

僕はそのことを伝えようとした。

 

だが、声が出なかった。

言い出せなかった。

 

言いたいことを言えず苦しげに僕はうなった。

そんな僕の様子を見て、

スピネルは自らの両手の手のひらで彼女の顔を隠した。

僕の目にスピネルの両手の甲が映る。

 

「・・・家族の安否も友達が今どうしているのかも何もわからない。

そんな状況でわたしはこの世界に放たれた。

・・・わたしは・・・死にたいと・・・思っていた。

でも・・・」

 

少女は黒髪のカーテンを少しずつ裂いていった。

 

「・・・ルイージが私を支えてくれたから、

一緒にいてくれたから、わたしは今ここにいる。」

 

僕はスピネルの腕を掴んだ。

つややかな黒髪がかすかに揺れ、動きを止めた。

 

「違う!

スピネルが今ここにいるのはスピネル自身が選んだからだ。

別に助けたのが誰であろうとスピネルはきっと生きていた。

僕は関係ない。

今のスピネルがいるのはスピネル自身の力だ!」

 

思わぬ反論を受け、ぼーと僕を見つめる彼女の手を、

黒髪から離し体の両脇に戻してあげた。

スピネルの眼は全く見えなかった。

 

 

「・・・『誰でもよかった』なんて、わたしが言うと思う?」

 

「思う。」

 

・・・。

 

・・・。

 

「・・・ルイージじゃなきゃ、わたし、心を開かなかった。

ルイージは何時間も必死にわたしに呼びかけて、

心の扉を開けようとしてくれた。

その優しさにわたしは心を射抜かれた。

眠りもしないで赤の他人に尽くことは・・・誰にでも出来ることなの?」

 

スピネルに言われてようやく僕の異常性に気づいた。

不眠不休で見ず知らずの人を看病するなんておかしい。

 

「僕みたいなへんな人でないと出来ないな。」

やっぱりね、と言いたげな顔で彼女は哀しく笑った。

 

彼女の顔を照らす暁色の光によって

それはいっそう強調された。

 

スピネルは一呼吸間をおいて僕が想像もしなかったことを口にした。

 

 

 

ルイージの小説

To Be Continued